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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
1章 冒険者になろう
4/240

4話 目が覚めたら

ここからしばらく、この世界についての話になります。


追記:文末の・・・を……に変更しました。

パチ……パチ……


耳に微かな音が聞こえる。夢と現実の間のような心地よい感覚。


(あれ、朝か?俺何やってたんだっけ……)


意識が徐々に覚醒していく……瞼を薄く開いてみても朝日の強い光は感じない。


「あれ、起きた?」


どこかで聞いたような女性の声に、瞼を完全に開いて辺りを見回してみる。

恐らく森なのだろう。暗闇にうっすらと木々が見える。

視線を巡らせると、焚き木の灯りが目に入ってきた。さっきの音はどうやら火花が弾けた音だったようだ。焚き木のすぐ傍に女性が座って料理の準備をしていた。


「あなたは……」


「覚えてないの?『絶対死んだりしないで下さいよ!』なんて言っておいて。

 私感動しちゃったんだけどなぁ……」


こちらを責めるような視線を向ける女性。でも、頭の上にある獣の耳はピコピコと小刻みに動いている。あれって何かを我慢してるのか?


「ねえ、聞いてる?私怒ってるんだよ!」


「え、ああ、はい……聞いてます。

 すいませんでした」


女性に向けて頭を下げると、お気に召したのか笑顔を向けてくれた。


「よし。でも大変だったね、ゴブリンに襲われるなんて。

 私も迂闊だったわ、この辺りのは粗方倒したと思ってたから」


こともなげに言ってのける。


「え?粗方倒した?」


「そうよ。今回のギルドからの依頼は、この森でゴブリンに襲われる被害が多くなったから討伐することだったの。だから……あなたを襲ったゴブリンは、私が仕留め損ねた1匹だったみたいね」


「ギルド?……仕留め損ねた?

 それって……つまり、俺が襲われたのは……」


「アハハハ……まあ運が悪かったと思って、ね?

 謝るから、ゴメンね」


あざとい……あざといけど、目の前で手を合わせて上目遣い。美人がやると破壊力が抜群だ。


「いいです。どっちにしろ、あなたに会わなければイノシシにやられてたでしょうし……」


「イノシシ?ああ、ジャイアント・ボアね」


「でも、俺はいったい……。確かゴブリンをやっつけて……

 その後……あれ?どうしたっけ?」


「私が見つけたときは、ゴブリンの死体のそばで倒れていたわ。

 てっきり死んじゃったかとおもって近づいたら、息があったからここまで連れてきたのよ」


そうか、この人が運んでくれたのか。


「改めて、ありがとうございました。

 助けてくれたことも、ここまで運んでくれたことも。

 俺は三嶋北斗です」


「私はアサギ・ムラクモ。アサギでいいわ。

 ねえあなたのことはミシマって呼べばいいかしら?それともホクト?」


「え、ああ。姓が三嶋で、名が北斗です。北斗と呼んでください」


「ホクトくんね。

 よし、自己紹介も終わったことだしご飯にしようか。

 お姉さん、こう見えても料理が得意なのよ!」


そう言われてはじめて気づいた。今日は試合前にご飯を食べてから何も食べていない。気付いた途端に自己主張し始めた腹から盛大な音が鳴り響いた。


グググゥゥゥゥ~~~


「わ、スゴい音。そっかそっか、そんなに私の料理が楽しみなのね。

 はい、遠慮なく食べなさい」


すっげぇ恥ずかしい。でもアサギさんも笑ってくれてるからいいか。彼女が手渡してくれた椀と串に刺さった肉を受け取る。


「この串に刺さってるのは?」


「私が倒したジャイアント・ボアの肉よ。滅多に取れないけど、すごく美味しいから食べてみて」


串に刺さった肉を見てみる。肉から肉汁が滴って、めちゃくちゃ美味しそうだ。


「いただきます」


一声かけてから齧り付く。途端に口の中に肉の味が溢れ出した。


「う、美味い!思ったよりも獣臭くないし、脂がのっててめちゃくちゃ美味い」

「そうでしょう!ジャイアント・ボアって、どの部位でも美味しいんだけど

 あばら骨のあたりの肉が絶品なのよ!」


そういってアサギさんも串に齧り付いて豪快に食べている。結構ワイルドな人だな。見ているうちに串に刺さった肉をペロリと平らげて、2本目に手を出した。やばい、これは俺の分が無くなる。そう思って食べるペースを上げる。


「そっちのスープも飲んでみて。持ち合わせが少ないから、近くで薬草とキノコを採ってきて煮込んだだけだけど、悪くないとおもうわ」


そう言われて食べかけの串から肉を急いで外して咀嚼する。口の中の肉を喉に流し込んでから、改めてスープを口にした。


「これも美味い!肉の脂が口の中に残ってたけど、全部洗い流してくれる」


「でしょう。お姉さん料理は得意なのよ」


胸を張りだして渾身のドヤ顔を見せるアサギさん。年上のお姉さんだけど、ちょっとお茶目で可愛い人だな。でも、まあ……確かに出される料理は全部美味い。


「これだけ美味しい料理が作れるんなら、こんな危険な仕事なんてしないで町でお店を出した方が良いんじゃないですか?」


「うーん、料理は好きなんだけどね。仕事にしたいかと言われると違う気がするの。料理は、あくまで趣味で仕事とは別なのよ」


おお、なんか仕事のできるOLみたいだ……OLに知り合いなんていないけど。


「さ、まだまだあるからいっぱい食べて。自分の作った料理をいっぱい食べてくれる男の人って、見ていて飽きないわ」


そういって俺の食べてる姿をまじまじと見つめるアサギさん。ちょっと恥ずかしいから止めてほしい。極力そっちを見ないように黙々と料理を口に運んだ。

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