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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
2章 強くなろう
33/240

17話 エピローグ

追記:文末の・・・を……に変更しました。

柔らかいものが顔に押し付けられる。プニプニっとした肌触り、なんか癖になりそう……意識が浮上してきてゆっくり目を開ける。


「……」


最初に目に飛び込んできたのはポロンの顔だった……というか、視界一杯にポロンの顔がある。


「ポロン?」


「ワン!」


やっと起きたの?って感じに前脚で俺の顔をテシテシ叩く。お返しに顔や体をワシャワシャと撫でまわした。しばらくモミクチャにしたあと、上半身を起こして周りを確認する。


「ここは……どこだ?」


テントの中と言うのはわかった。俺が寝かされた場所から少し離れたところに装備が置かれていた。誰かが外してくれたのか……。


「お前は、俺が起きるのを待っててくれたのか?」


「ワンワン!」


最後にひと撫でしてから外に出る。瞬間、一気に光量が増して目が痛くなった。目の上に手で(ひさし)を作って辺りを見回す。


「……ああ、俺たちゴブリンを倒しに来たんだっけ?」


「おお、やっと起きたか寝坊助!」


テントのすぐ傍に腰を下ろしていたソウルが、俺が起きたことに気付いて声をかけてきた。


「……俺、どれくらい寝てた?」


「3時間くらいか?大変だったんだぜ、お前生きてるのが不思議なほどの怪我だったから。慌てて上級回復魔法を使えるやつを探し回ったり、装備引っぺがしたりとなかなかの修羅場だったな」


「そうだったのか……。で、作戦の方は?」


「お前がホブゴブリンを倒してくれたおかげで、随分早く作戦が完了したってダッジのおっさんが喜んでたぜ」


そこまで言われて、ようやく自分が何故寝ていたのかを思い出した。


「そうだ!あのゴブリンどうなった?」


「わっ!?何だよ突然……」


「デカいゴブリンだよ。俺が見張ってたところに逃げてきた、確か王とか名乗ってたやつ……」


「ああ、そいつがホブゴブリンだよ。もっとも、上半身しかなかったから推定ホブゴブリンだな」


「ホブゴブリン?それが、あいつの種族名なのか?」


「ホブゴブリン、ゴブリンの上位個体だ。そんなもんまでいるとは、おっさんも思ってなかったみたいでな、腕の立つ奴を見繕って探していたら……」


「俺が倒してた……ってことか?」


「そのとおり!いやぁ、見物だったぜ。上半身がないホブゴブリンの近くにお前が倒れてたとk……」


「ホクトくん!!!」


ソウルの説明を遮って、聞き覚えのある声が響き渡った。


「……え?」


猛然とダッシュしてくるアサギ……らしきものがタックルしてきた。


「ゴフッ!!!」


100点満点のタックルをもろに食らって地面に倒される。俺の上に覆い被さってきたアサギに文句を言おうと思ったら……。


「……心配、したんだからね!」


俺の腹の上で泣きじゃくるアサギに、どうしていいのかわらかない俺。横に見えるソウルに助けを求めると、ニヤニヤ笑いながら立ち上がった。


「ホクト、その状況を招いたのはお前の失態だ。しっかり絞られろ……羨ましい」


最後に何かを言い残してソウルがどこかに行ってしまった。おいおい、俺が何をしたって言うんだ。


「なあ、アサギ。俺、お前を泣かせるような事したか?」


すると、泣きじゃくっていたアサギから殺気が漏れ出した。


「……ひょっとして、自分が何をしたのか……分かっていないのかな?」


コワイ!超コワイ!理由は分からない……けど、とにかく謝ろう。


「ご、ゴメン!俺が悪かったから……」


「ホクトくん、悪いことをしたの?」


「いや……身に覚えはない……んだけど」


アサギが右手を振り上げ、一気に俺の顔に叩きつけた。


バチィィ~ン!


「!?」


Cランク冒険者の本気の平手打ち。でも、痛いって事よりも驚いた。アサギが目から涙をポロポロ零しながら俺を叩く。


「一歩間違っていたら、ホクトくん死んでたんだよ!?ゴブリンだけでも手一杯なのに、ホブゴブリンまでいて……なんで、私たちを待たなかったの?」


「ポロンはアサギたちの所まで行けたのか?」


「きたよ……あんなに必死に吠えるポロンなんて初めて見たわ。

 それでホクトくんに何かあったんだって、慌てて向かったのに……」


「そうか、良かった……」


「良くない!」


バチィィ~ン!


また平手で叩かれた……逆の頬を。両頬が膨れてアンパ○マンみたいになってきた。


「あ、あはひ……ちょっほまっへ……」


「何言ってるかわかんないよ!」


そんなご無体な……こうなったのは誰のせいだよ。


「ポロンを追いかけたら、地面に血だらけのホクトくんが見えて……しんじゃったとおもって……うぇ~~ん!!!」


泣きたいのはこっちだよ……とはいえ、アサギをここまで心配させてしまった事は素直に謝りたい。


「……ほへんな、あはひ」


「……わかんないよ」


締まんないなぁ、俺。しばらくアサギが泣く声だけが、俺の耳に聞こえていた。何かで俺の気持ちを表現したくて、アサギの頭に手を伸ばした。


なでなで……


「あっ」


なでなで……


「ちょ、ちょっとホクトくん?」


なでなで……なでなで……


「あの、ちょ……恥ずかしいよ」


なでなで……なでなで……なでなでなでなで……


「これ以上は止めて~!変になっちゃう……」


ついでだ、ピンッと尖った耳をモミモミ……


「ひゃん!」


アサギが変な声を出した。お、ここか?ここがええのんか?


モミモミ……モミモミ……


「ひゃん、ホクトくん……ミミは……だめぇ~」


あ、これ以上はあかん。あまりの撫で心地に、俺も暴走していたようだ。


「ごめん……あ、普通に喋れた」


「……もう、ホクトくん。獣人の女の子のミミはデリケートなんだよ。

 そんな、無遠慮に撫でちゃダメ」


「もうしわけありませんでした!」


ちょっと拗ねたアサギ。どうやら、泣き止んでくれたらしい。


「ホクトくん、これだけは聞かせて。どうして逃げなかったの?

 周りの人たち、自分勝手にどこかに行っちゃったんでしょ?」


「……逃がしちゃいけない、逃げちゃいけないと思って」


「ああいう場合、逃げても良いんだよ?明らかに不利な状況ならギルドも分かってくれるし……」


「あいつらが逃げたら、またどこかで集落を作って……そうしたら、無抵抗な人が捕まって酷い事されて……それが、自分の身も守れない町の人たちだったらって考えたら……自然と体が動いてた」


「でも、それでホクトくんが死んじゃったら!……悲しむ人もいるんだよ。

 ……私だって……ホクトくんが死んじゃったって思ったら……」


「アサギ、そのくらいにしてやれ」


アサギの後ろからダッジさんが顔を出した。


「くくっ、良い面になったじゃないかホクト」


「そんなこと言いに来たんですか?」


おっさん空気読めよ!


「……ダッジさん」


「アサギ、ホクトだって男なんだよ。

 逃げたくても逃げられないときってのがあるんだ」


「それくらいは、分かってます!……分かってるつもりです」


「なら、そろそろホクトを解放してやれ。真昼間っから見せつけられるとな、ちと目の毒だ」


ニヤニヤしながらダッジさんがアサギに言う。だから、おっさんは空気読めよ!


「……へ?」


そこで、やっとアサギは今自分がどんな格好をしているのかに気付いた。俺にタックルをかましてからも、ずっと俺の腹の上だ。これは見方によると騎乗位ってやつだな……俺もさっきから感触の生々しさをずっと我慢してるんだ。ヘタに動くと俺も大変なことになってしまいそうで……。


「~~~~~~!!!!!」


アサギが顔を真っ赤にして、俺の上から飛び退いた。


「ひゅ~ひゅ~、見せつけてくれるねぇ!」


「ソウル、こういう時は茶化すな。

 ……アサギ、あまり気にするな。私は気にしないぞ」


「すごいわね。アサギとホクトって、そういう関係だったんだ。だったら、行きの馬車も気を使ってあげれば良かったわ、ごめんなさい」


サラとエリスが傷口をグリグリえぐってくる。もうやめてあげて!


「あ、アサギ……さん?」


「ほ、ほ……ホクトくんのバカ!!!」


今までで一番解せぬバカ呼ばわりである。





アサギが、俺の近くにいると羞恥心を刺激されるのかどっか行ったあと。


「で、ダッジさんは若者を冷やかしに来たんですか?」


「うるせぇよ、これくらいは甘んじて受け入れろ」


ほんと理不尽なおっさんである。


「で、今回の作戦は上手くいったんですか?」


「まあな、お前が早めにホブゴブリンを倒してくれたから、比較的被害は軽微で済んだ」


「被害……死傷者がでたんですか」


「まあ、さすがにな……今回の作戦で6人の冒険者が死んだ」


「えっ?」


ショックだった。人の生き死にがここまで身近だったことは、地球でもない。両親は健在だし、祖父母も元気だ。自分の周りで誰かが死んだことは無かった。


「俺の……知合いですか?」


「ん?……まぁ出発前に顔合わせはしてるんじゃないか?」


「アレク達烈火の牙のみんな?」


「あいつらは全員無事だ。ソウルたちも……まあ、そこにいるしな」


と言うことは自分にかかわりの深い人たちは無事だったか。こんなことで良かったと感じてしまうのは、死んだ人たちに申し訳ないとは思うけど正直ホッとした。


「おい、ダッジ!てめぇ、どういうことだよ!」


俺がこっそりと安堵している傍で、見た顔がダッジさんに食って掛かっていた。俺を置いて、自分勝手に持ち場を放棄した冒険者たちだ。


「……何がだ?」


あ、ダッジさんキレてる。こいつら、なんかしたのか?


「何がだじゃねぇ!どうして、俺たちに保証が無いんだよ。今回の戦闘で俺たちの仲間が死んだんだぞ!他の、メンバーが死んだ奴らには保証するって言ってたじゃねえぇよ!」


ああ、こいつの仲間が死んだうちの誰かなのか。自分勝手に振る舞って、死んだら保証しろってのは、ちょっと虫が良すぎる話だな。ぶっちゃけ自業自得だし。


「お前らの持ち場は集落から逃げ出すゴブリンどもの見張りだったはずだ。それが、なぜ集落の中で死んでるんだ?」


ああ、ダッジさん全部知ってるのか……それで、自分本位なこいつらにキレてるのか。


「そ、それは……逃げたゴブリンが集落に戻ったんだよ。それを、俺たちは追いかけて戦闘に……それで、あいつは死んじまったんだ」


「……ほう。お前らは作戦が始まると同時に、自分勝手にも持ち場を離れ、作戦の致命的と言える穴をこさえた上に、命令無視したテメェらの尻拭いもこっちにやらせようって魂胆なのか……」


「うっ……」


「全部解ってんだよ。お前らがしたことも、その結果ホクトが窮地に立たされたことも全部他のやつらから聞き取りで解ってんだ」


怒気を孕む声を抑えるようにダッジさんが1つ1つ説明していく。


「町に戻ったら、覚えてやがれ。これからもまともに冒険者ができると思うなよ」


「こえぇぇ~~。ダッジさん超こえぇな……」


「何言ってやがる、原因のくせして」


「え、俺?」


「あのおっさんが、あれだけキレてんのは、手塩にかけた弟子があいつらの無責任な行動のせいで死んでたかもしれない、ってことだろうが」


え、あんなにキレてんのは俺が危なかったからなのか。


「よし、町に戻るぞ!」


結局、あの冒険者たちは周りからも白い目で見られてすごすごと引っ込んだ。帰る準備を整えた俺たちは、馬車を置いてある野営した場所まで移動を開始した。……そのとき、俺の近くにアサギがいなかったのは余談である。





「やっと帰ってきた~!」


アサギが馬車を降りて伸びをした。1泊野営をしたら、アサギも普通に戻ってくれた。今回参加したメンバーは、一旦ギルドに集まり報酬を受けて解散となる。集まった数が数なので、訓練場に全員が集合した。


「みな、ご苦労だった。今回の作戦で、残念ながら帰らぬ者たちが出てしまったが、それでも作戦が成功したのは全員が十二分に働いてくれたからである。遠征の疲れもあるだろう、俺からの挨拶はこれくらいにして、報酬をみなに支払う」


待ってました!今回は、作戦に参加するだけで10,000ゼムが保証されている。それにプラスして作戦への貢献度でボーナスが発生することになっている。当初は見張りだけのつもりだったからボーナスは当てにしてなかったけど、ちょっとは色が付くんじゃないかな?


「まずはCランク冒険者から報酬を支払う」


もらった報酬に納得のいくもの、いかないものもいるようだ。それでもCランク冒険者は作戦の要だったこともあり、総じてボーナスが付いているようだ。アサギもホクホク顔である。


「次にDランク冒険者に報酬を支払う」


やっぱり目立つのはソウルたちのパーティ。あいつら冒険者を殺し回ってたゴブリンアサシンを倒したらしい。他にもゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジなど通常個体よりも強いゴブリンを相手に狩りまくったようだ。


「最後にEランク冒険者に報酬を支払う」


Eランク冒険者は、みんな集落の見張りなどで直接戦闘には係っていなかったが、中には逃げてきたゴブリンを倒したやつらもいるみたいだ。アレク達烈火の牙も、逃げてきたゴブリンを倒したようでボーナスをもらっていた。


「ホクト!お前で最後だ」


Eランク冒険者の最後に俺が呼ばれた。


「さてさて、どれくらいもらえるかな?」


期待を胸に前へ出ると、全員の視線が一斉に俺に向いた。


「……えっ?」


なんか居心地悪い……。


「ほう、やはりみんなコイツの報酬が気になるか?」


「ちょっとダッジさん。周りを煽んないでくださいよ」


「いいじゃないか、みんなにも聞いてもらおう」


や~め~て~!!


「ここにいるホクトは、集落北の見張りを任されていた。両サイドに配置した冒険者たちは、早々に自分の任務を放棄して集落に向かった。結果的に、こいつは独りで見張りをすることになった」


任務を放棄した冒険者たちに冷たい視線が浴びせられる。まさに針の(むしろ)状態。


「そこに手下を連れたホブゴブリンがやってくる。総勢8匹。それを、こいつは独りで全滅させた。血塗れになりながら、それでも俺から言われた任務を最後まで全うしたんだ!」


……あれ?ダッジさん、なんか涙声になってない?って、周りを見たら今回参加しなかった冒険者やギルド職員まで聞き入ってるよ!?


「ちょ、ちょっとダッジさん……恥ずかしいから、さっさと終わりにしようよ」


だがしかし、熱弁を振るうダッジさんには聞こえてない。


「俺は嬉しい!確かにホクトはオレの弟子であり、身内贔屓も入っているかもしれない!だが、それでも言わせてほしい!今回の作戦が成功したのは、ホクトが諦めずホブゴブリンを倒したからだと!」


オオォォォ~!!!ワァァァァ~~~!!


大歓声……やばい、恥ずか死ぬ。もうやめて、ホクトさんのHPはとっくに0よ。


「ホクト、お前の働きにギルドの精一杯の報酬を用意した」


手渡されたのは、他の人たちと同じ革袋。しかし、渡された瞬間のズシッとした重さはどういうことだ?中を覗き込んでみると……金貨が7枚、大銀貨が7枚、銀貨が8枚入っていた。


「……えっ!?」


思わず二度見した。え?どういうこと!?きんかが7まい、だいぎんかが7まい、ぎんかが8まい!?……あかん脳みそが溶けだした。77,800ゼム!?


「ダッジさん、これもらい過ぎじゃない!?」


「それだけじゃないぞ、ホクトよ!」


「……え?」


あ、ノルンさんも来た……どういうこと?


「今回の活躍で、ホクトさんはDランクへ昇格します!」


「……」


「やったよ、ホクトくん!パーティメンバーまで一歩前進したね~」


「あ~あ、追いつかれちまったな」


え、俺Dランクに上がれんの!?


「え、Dランクってそんな簡単に上がれましたっけ?」


「今回は特別です。あなたは、それだけのことをしたんですよ。

 胸を張ってください」


周りが「おめでとう!」「良かったな!」と祝いの言葉を述べてくれるが、俺としては達成感はあんまりない……確かにホブゴブリンは強かったけど、もう2日も前だし……なんかモヤッとする。


「お、おぉ~~……」


ワァァァ~~~!!!


こうして、俺はDランク冒険者なってしまった。



名前:ホクト・ミシマ

性別:男

年齢:17

レベル:8↑

職業:拳闘士(Lv3)↑

----------------------------------------

体力 :214     +16↑

精神力:134     +8↑

攻撃力:155(+5)  +15↑

防御力:161(+6)  +8↑

敏捷 :287(+3)  +13↑

知能 :2

魔力 :112     +2↑

運  :41

----------------------------------------

スキル:

ダーレン大陸共通言語(Lv2)

鷹の目(Lv8)、集中(Lv8)

気配感知(Lv1)、魔力制御(Lv3)↑


----------------------------------------

称号 :

初心者冒険者(体力に小補正)

----------------------------------------

装備 :

皮の籠手(攻撃力+5)

ショートソード(攻撃力+5)

皮鎧(防御力+6)

グリーブ(敏捷+3)

これにて2章は終了となります。

2章の感想や評価をいただけたら励みになります。


ここまでのご視聴ありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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