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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
2章 強くなろう
32/240

16話 ゴブリン討伐

追記:文末の・・・を……に変更しました。

森に分け入って、しばらく進んだ場所で俺たちは集合していた。


「ここより、30分ほど進んだ場所にゴブリンたちの集落がある。

 現在時刻は昼を少し過ぎた頃だ。これからしばらく待機した後に、ゴブリンの集落に対して夜襲をかける」


それが今回のゴブリン集落殲滅作戦の全容だった。


「集落を襲撃するにあたって、それぞれ班分けを行う。まず、Cランク冒険者。

 お前たちは4つのグループに分かれて東西南北それぞれの場所から潜入してもらう」


今回の討伐任務に参加しているCランクは全部で16名。それを4つに分けるわけだから、1チーム4人のパーティになる。


「パーティ分けはお前たちに任せるが、あまり偏らない編成にするように。

 次にDランクの冒険者。お前たちには、まず2つのグループに分かれてもらう。1つはCランク冒険者パーティを補佐することになる」


Dランク冒険者は全部で42名いる。2つに分けると、それぞれ21名になる。


「21名を更に4つに分けて、Cランクパーティの補佐をしてもらう。Dランク冒険者の班分けに関しては、こちらで行う。異議はなしだ」


「おいおい、ちょっと待ってくれよ。こんなところまで来て、襲撃班に入れなかったら報酬が減るじゃねえかよ!」


「気持ちは分からんでもないが、お前たちの力量では襲撃班は任せられない。いやなら、ここで待機していてもらうがどうする?」


まだ文句があるようだけど、ここまで来て作戦に参加できなければ、そもそも報酬が出るかすら怪しくなる。仕方なく同意するDランク冒険者たち。


「説明に戻るぞ。残りの21名は集落の外周を見張る役目を負ってもらう。我々はここにいるゴブリンを殲滅しに来たのだ、1匹すら逃すことなくすべて殺す。ゴブリンは少数でも残すと後が厄介だからな」


小説などでお馴染みのゴブリン。こっちの世界のゴブリンも繁殖力が高い生物である。それこそ、ネズミ算式に増えるやつらを打ち漏らすわけにはいかない。


「Dランクの残り21名とEランク22名で集落を見張り、逃れてきたゴブリンを確実に殺してもらう」


Cランク4人+Dランク5人のパーティが3つとCランク4人とDランク6人のパーティが1つで集落に強襲する。残りのDランク21人とEランク22人で集落の周りを見張る。総勢80人のチーム分けが終わった。当然俺は見張りだ。


「ホクトくん、絶対に無理したらダメよ?」


「俺の心配より、自分の心配をしろよ。アサギは集落強襲班なんだから。ゴブリンたちは女を優先的に狙うらしいじゃないか」


「あら、心配してくれてるの?」


「当たり前だ」


「大丈夫、私1人だったらどうなるか分からないけど今回は他にもいるからね」


「おう、アサギさんのことは俺たちに任せておけって!」


そう、アサギとソウルは顔馴染みと言うこともあり同じチームになった。当然サラとエリスも一緒だ。


「みんな気を付けてな」


「任せてくれ、アサギもエリスも私が守ると約束しよう」


「……あれ、俺入ってなくない?」


「……任せてくれ」


「言い直せよ、サラ!」


ソウルたちは、こんな状況下なのに余裕がありそうだ。まあ、こいつらがいればアサギも心配するような事にはならないだろう。ただ、他の強襲班から外れたDランク冒険者たちがどのような行動を取るのかが心配だった。……あいつら、絶対納得してなかったもんな。





辺りが暗くなり、作戦開始の時間が近づいてきた。2時間ほど前にダッジさんの命令で斥候役の冒険者たちが集落の状況を調べに向かった。


「そろそろ、作戦開始かな?」


アサギがダッジさんの方を見ながら言った。そちらに視線を向けると、どうやら斥候役の冒険者たちが戻ってきたようだ。


「よし、これより作戦を開始する。現在ゴブリンの集落は見張り数匹を残し眠りについていると報告があった。各自持ち場についてくれ。それと、そんな馬鹿はいないと思うが、夜襲を行うのだから当然灯りは付けるなよ」


一瞬ダッジさんが俺の方を見た。俺そのレベルで心配されてんの!?その視線に気づいたアサギやエリス達が苦笑いしている。俺の隣で「おお……」とか言ってるソウルの方を心配しろよ!


「よし、では健闘を祈る」


その一言で各々持ち場に移動する。俺もアサギたちに軽く手を振ってから移動を開始した。俺の持ち場は北側の見張りだ。音を立てないように静かに移動する。足元にはさっきまで寝ていたポロンが寄り添っている。


「緊張するな、ポロン。他の人たちと合同で何かをしたことなんて無かったしな」


「わん」


しばらく歩いて所定の位置に到着した。左右を見ると、少し離れたところにそれぞれDランク冒険者のパーティがいる。薄暗い中、目を凝らして見るとその顔に見覚えがあった。……あいつは、確かダッジさんが作戦の説明をしているときに報酬の話しで食って掛かってたやつだ。まさか、俺の隣がそいつらになるなんて……これは何か起こりそうな予感。


しばらくしたら、集落の方から轟音が聞こえてきた。作戦が始まったんだろう。今のは魔法使いたちによる広範囲殲滅魔法だろう。森の中に閃光が瞬いている。


「始まったな」


俺はいつゴブリンたちが逃げてきてもいいように、辺りを注意する。

すると……


「やっぱ、ここでただ立っているだけなんて我慢できねぇぜ。俺たちも集落に殴りこもうぜ」


不穏なやり取りが風に乗って聞こえてくる。まさか、あいつら今更になって作戦を無視する気か!?


「だな。こんなところにいても美味しいところは全部強襲班のやつらに持っていかれちまう」


どうやら右隣さんはやる気になったようだ。おいおい、勘弁してくれよ。あんたらいなくなったら俺だけじゃカバーしきれないよ?右の隣人はバカだった……これは左隣に期待するしかない。すると、左隣の方からも微かな声が聞こえてきた。


「あいつらやる気みたいだぞ。俺らも今行かないと出遅れるぞ」


「なら、あいつらが動き出す前に行っちまうか?」


マジですか……左の隣人もバカでした。これ、絶対俺独りじゃ無理だわ。やがて、左にいたDランク冒険者のパーティが集落に向かって走り出した。


「あ、あいつら抜け駆けしやがった……」


続いて、そんな声が右から聞こえ俺の周りから誰もいなくなった……。


「なあポロン、みんな俺の事バカだバカだって言うけどさ……あいつらの方がよっぽどバカじゃないか!俺あそこまで酷くないぞ」


「クゥアァァ~」


ポロンが欠伸をしていた……。





あれから、どれくらい経ったのだろうか?今のところ集落から逃げてくるゴブリンはいない。だけど集落からは未だに襲撃の音が聞こえるから、作戦はまだ継続中なのだろう。


「ただし、俺の左隣と右隣に大きな穴があるから、世闇に紛れてたら見つけられないけどな……」


誰もいない中、独り言を呟いてみる。集落の喧騒はまだ止まない。俺もいい加減飽きだして欠伸を噛み殺していると……集落の方から数人がこちらに移動してくるのが見えた。


「……仲間か?」


暗くてよく見えない。シルエットは人間に見えるけど、ゴブリンだって可能性もある。果たして……


「最悪のパターンじゃねえかよ!」


集落から向かってきたのはゴブリンの集団だった。およそ10匹。しかも1匹だけ他のゴブリンよりも大きい。


「……まさか上位種とか言わないよね?」


誰にともなく呟く。これ、俺独りじゃどうにもならないぞ。


「ポロン、よく聞け。今からお前に指令を与える」


ポロンはゴブリンたちを威嚇していたが、俺の声に耳がピクピクしている。あれは、ちゃんと聞いている合図だ。


「俺があいつらをできるだけ足止めするから、お前は助っ人を呼んできてくれ。

 集落に行けば多分アサギかソウルがいる。お前ならあいつらに捕まらずに集落に入れるだろうから、大丈夫だろう……」


俺の言った内容を理解したポロンは、威嚇を止めて俺の方を見る。俺はと言えば、視線はゴブリンたちに向けたままもう一度言う。


「頼むよポロン。今はお前だけが頼りだ」


しばらく黙っていたポロンは、意を決すると集落に向けて走り出した。それに釣られて2匹のゴブリンがポロンに向かっていくが、速度が違い過ぎる。大丈夫だろう。


「ポロンのお蔭で2匹減った。まだ運はこっちの味方だ」


ゴブリンたちが俺の前方で立ち止まった。大きい個体が前に出る。


「オ、マエ……ソコ、ドク。ソウ、ス……レバ、オ、マエ……コロサ、ナイ」


「喋った……ゴブリンって喋れんのかよ?」


「オレ、ゴブリ、ン……タチ、ノ……オウ」


「王?お前が、あの集落の親玉って訳か……。親玉が、子分見捨てて真っ先に逃げるなんて所詮ゴブリン、下劣だな」


「ウ、ウル……サイ!オレ……イキ、ノ……コル。オウ……コ、ク……マタ、ツク……レル」


「ハン!おい、お前ら!お前らの王は、お前らのことなんて何も考えてないぞ。

 自分が生き残る事しか考えないような奴に従ってていいのか?」


ゴブリンを煽って、時間稼ぎをしてみる。


「ダ、ダマ……レ!オ、オマ……エラ、ア、アイツ……ヲ……コロセ」


言われたゴブリンたちは、俺に向かって走り出した。ダメだ、あの王は話せるけど、所詮ただのゴブリンには話が通じない。覚悟を決めるか……。


とにかく数を減らさないと……俺は向かってくるゴブリンの1匹に狙いを定めて駆け出す。足に魔力を流して一気に加速!


「おらぁ!」


急加速した俺に驚いたゴブリン目がけて膝蹴りを顔に見舞う。鼻骨が折れ、紫色の血飛沫をまき散らしながら倒れる……まず1匹。しかし、地面に着地した俺に2匹が同時に攻撃してきた。


「わ、ちょっ……グッ!」


2匹の攻撃は避けれたけど、その後ろから来ていたゴブリンの槍を肩に受けてしまった。皮の鎧が弾いてくれたけど、危なかった。


「あと、6匹……お前は来ないのか?」


後ろで踏ん反り返っている親玉に聞いてみた。来られても困るけど、一応聞いておきたい。


「フン!オマ、エ……ノアイテ、オレ……フ、ヨウ」


つまり下っ端に丸投げってことか。いつまで、そうしてくれるか分からないけど、とりあえずあいつが出てくる前に倒せるだけ倒そう。


左のゴブリンが剣を振るう。それを前へ踏み出して躱し反撃……する間もなく右から槍が突き出された。躱すのはわけない……これは、下手に離れずに、この混戦を利用するか。


「とりあえず、お前邪魔!」


槍持ちのゴブリンに近づいて膝の内側に蹴りを入れる。バランスを崩したそいつはいったん放置して、後ろから剣を振るってくるゴブリンに向き直る。上段から剣を振り下ろすそれを軽く横に流してやる。無防備になった顔面に右ストレートを叩き込む。両サイドから剣を突き刺してくるゴブリンたちから後ろに半歩下がる。お互いに突き出した剣にお互いが突き刺さる。こいつら、敵味方関係ないな……まあ、楽でいいけど。


「左、次に右!」


左のゴブリンの顔に肘を叩きつけ、右のゴブリンの顎を打ち砕く。


「そして、お前だ槍野郎!」


バランスを立て直した直後の槍持ちゴブリンの懐に入り込んで鳩尾を肘で打ち抜く。槍が手を離れて地面に膝から崩れ落ちる。


「ハァ……ハァ……何匹倒した?」


周りを確認すると3匹のゴブリンが倒れている。まだ半分かよ……。


「どうした?次は来ないのか?」


「……クソッ!オ……マエ、タ……チ。イッセ……イニ、カ、カレ」


残り3匹のゴブリンが一斉に俺に群がってくる。少し休ませろよ、インターバルが少な過ぎるって……。


さっきの同士討ちを気にしたのか、射線上からズレた位置をキープしつつゴブリンたちが攻撃してくる。こうなると厄介だな、ダメージ覚悟で1匹ずつ倒していくしかない。


「イッッタイ……けど、我慢!」


防具で覆われていない箇所を剣で斬りつけられ、血が滲んでくる。でも3匹同時だと気にしている暇もなく次々攻撃される。今回は盾持ちがいるから、ちょっと厄介だな。


「まずは、その盾を壊す!」


盾に向かって拳を振るうと、盾持ちのゴブリンはしっかりとガードする。でも、俺の攻撃はこれで終わりじゃない!


「吹っ飛べ!」


前ので味をしめた盾ごと魔力で吹っ飛ばす攻撃。魔力を消費するけど、この際仕方ない。打ち上げられたゴブリンは地面に落ちると首があらぬ方向を向いて動かなくなった。


「さて、あと2匹……。まだ、出てこないのか?」


親玉への挑発も忘れない。ここまで来たら、あいつが出てくる前に2匹のゴブリンを魔力を通した攻撃で沈めてしまいたい。


「ほら、さっさと来いよゴブリンども!」


残り2匹を挑発して釣り出そうとしてみたけど、あいつらビビってんのか近づいてこない。なら、今のうちに……加速!


「!!!」


いきなり目の前に現れた俺に驚いて、持っていた剣を突き出したゴブリン。けど見え見えなんだよね……剣をギリギリで躱して魔力を流した拳で顔面を殴りつける。


パンッ!


頭が吹っ飛んで、その場に崩れ落ちるゴブリンを無視して残りの1匹に蹴りを入れる。腕でガードされたけど、気にせず前に出る。バランスを崩した足を払って倒れたところにサッカーボールキック。当然足に魔力を流していたから頭が吹っ飛んでいった。


「……ハァ、ハァ。……はい、これで全滅」


キッツ~。何とか全員倒せたけど、かなりキツイ。


「キ……サマ!ゼッ、タ……イ、コロス」


体力を結構消耗したけど、1対1ならそれなりに戦えると思う。改めて親玉ゴブリンを観察してみる。他のゴブリンたちと違って、骨格がしっかりしている。筋肉も盛り上がるほどに付いている。これは、ただ殴ったり蹴ったりじゃダメージが通らなそうだ。


魔力を通した攻撃、後何発くらい打てるだろう?それでも前に出るしか俺の生きる道は無い!


「……加速!」


魔力を足に込めてのブースト加速。一気に親玉の間合いに踏み込んで全力の右ストレートを見舞った。


「食らえっ!!」


バンッ!


鈍い音と手に伝わる感触。当たった場所を見てみると、肌に若干の痕が残って入るけど、これは効いていないんじゃなかろうか?


「フンッ!ヨワ…イ、ナ……ニンゲン」


打ち終わりの硬直に合わせて、親玉が丸太のような腕を振り払った。


ゴキィィ!


「ギ…ギャァァ!」


左腕が折れた!いたい、超痛い。やばいやばいヤバイ。咄嗟に距離を取ろうと後ろにジャンプ……する寸前、何かに足を掴まれた。


「へ?」


足元には殺したと思っていたゴブリンが……俺の足を両腕で掴んでいた。


「嘘だろ……殺したはずじゃ」


「ヨク……ヤ、ッタ」


親玉が俺を蹴り上げる……掴んでいたゴブリンごと。強い衝撃の後の浮遊感、そして地面に叩きつけられた。


「ガハッ……グ、グゥゥ……」


まずい、今の2発ですでに満身創痍だ……。左腕は変な方向を向いてて動かせない。蹴られた衝撃で腹の中が痛い、内臓にもダメージがありそうだ。なんとか立ち上がってみたけど……これは勝ち目がなくないか?


「ペッ……お前、同じゴブリンだろ。お前の為に体を張ったゴブリンを、どうして俺と一緒に攻撃した!」


「オレ……ノ、タメ……ニ、シヌ。アイ、ツ……ラニ、ト…ッテ、エイヨ」


「ふざけんな!お前みたいに、周り全部ゴミ扱いで王様ぶるやつが

 一番ムカつくんだよ!」


「デモ、ケ……ッカ、オマエ……シヌ。オレ……マチ、ガ……ッテナイ」


確かにその通りだけど、こんなムカつく奴に殺されるなんて我慢できない。とはいえ、自分からじゃもう一歩も動けそうにない。この状態からの逆転勝利は、どうやったらできる?何ができる?


「……あるじゃないか。どうせ死ぬなら」


「ナニ、ヲ……カンガ、エテ……ルカ、シ……ラナ、イガ。

 オマエ……モウ、スグ……シヌ」


「やれるもんなら、やってみろ。このゴミ野郎!」


立ってるだけでもやっと、右腕がかろうじて動くだけ。こんな状態からの逆転をするためには、やっぱり必殺技だろ。1回も成功したことないけど、残りの全魔力を右拳に集める。


「……失敗したときのことなんか考えない」


親玉ゴブリンがゆっくり歩いてくる。もう俺が動けないのが分かっているから、焦る必要もない。イヤな笑いを顔に張り付かせながら。


「シネ」


腹を殴りつけられた。こいつ、嬲り殺しにする気か?集めた力が逃げていく。


「ドウ……シタ?モ、ウ……オ、ワリ……カ?」


倒れた俺を容赦なく踏みつける。あかん、これ死ぬわ……。頭を掴まれて同じ視線の高さまで上げられる。


「クックックッ!……イ、セイ……ガヨカ、ッタ……ノハ、サ……イショ、ダケ……ダ、ッタナ」


朦朧とする意識、霞む視界。ここまでか……右手を伸ばす。


「ン?」


右手が何かに触れた……俺はゆっくり笑う。


「……お前が死ね」


魔力を一気に流し込む。いつものように拳からではなく、拳の触れる先に向かって。最後の一滴まで魔力を絞り出して手を離す。


「ナ……ナン、ダコレ、ハ!?キ、サマ……ナニ、ヲ……シタ!?」


「……俺の勝ちだ」


霞む視界の中、驚愕する親玉に向かって俺は宣言した。


「ウゥグォォォォ~~!!!」


ドパンッ!!!


上半身を吹っ飛ばされた親玉。衝撃で吹っ飛ばされた俺。


「……ああ、やっと成功した」


その一言を最後に、俺は意識を手放した。

2章も次で終わりになります。

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