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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
2章 強くなろう
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13話 異変

追記:文末の・・・を……に変更しました。

レッド・コメット道場を卒業して1週間が過ぎた。あの後も森に入り、一角兎を狩り続けているけど先生には一度も会えていない。これは俺のことを先生が認めてくれて、森で狩りをする許可をくれたものと思っている……まあ、あくまで俺の主観での話だけどね。


「よし、これで5匹目だ。今日の狩りはここまでにしよう」


先生の道場を卒業してからは、毎日5匹まで一角兎を狩ることにしている。これは乱獲しないようにってこともあるんだけど、先生の御同輩を無闇に殺し過ぎないようにする自分への戒めとしている。まあ、5匹狩れれば生活するには十分なんで問題は無い。


「ポロン、帰ろうか」


「ワン!」


ポロンと一緒に町に戻る。最近は狩る速度が上がったことで、森にいる時間が短くなった。そろそろ、他の討伐も受けたいんだけど未だにダッジさんからの合格はもらえてない。





「ノルンさん、これ今日の分です」


「おかえりなさいホクトさん。手続きしますね」


ノルンさんとのやり取りも恒例になりつつある。あの冒険者(名前忘れた)に絡まれて決闘をして以来、俺にちょっかいをかけてくる輩はいない。一応冒険者の端くれとして認めてもらったって事でいいのかな?


「おめでとうございます、ホクトさん。本日の報酬で、登録時に発生した手数料のツケが完済しました」


「え、マジで!?良かった~。1つでも借金返済する箇所が減ってくれれば楽になるよ」


「私が言うのもあれですけど、そんなにお金に苦労してるんですか?」


「ああ、いや。今はそうでもないです。後はアサギへの借金だけなんで、こっちは少しづつ返していきますよ」


一角兎の討伐依頼をこなせるようになってから、手元に残るお金も増えてきている。これなら、アサギに借金を返していっても暮らしていけるだろう。





午後からは、今までどおりダッジさんとの訓練に充てられる。こちらでも若干の変化が起こっていた。


「甘いぞホクト!攻撃の動作に入るまでに、まだ隙が大きい」


「はい!」


言われて直そうとはしてるんだけど、なかなかに難しい。それでも以前みたいに防戦一方にはならなくなってきた。魔力を右足に流して強化、一気に踏み込む。


「シッ!」


短い呼吸とともに左足で踏み込む。狙いはダッジさんの脇腹。思いっきり肘を叩き込む。


「うおぉ!」


紙一重で躱されたけど、始めてダッジさんの態勢を崩せた。ここから畳みかける。足を使って居場所を変えながら、ダッジさんへ攻撃を加えていく。右ストレートがダッジさんの腕にガードされた。


「お、おしかった……」


「ふう、一瞬ヒヤッとしたぜ」


「でも、ダッジさんガードしましたね。確か、拳闘士は最後の最後までガードしないんでしたよね?」


ニヤニヤしながらダッジさんに問いかけてみる。


「今の流れはよかったな。だが、戦闘が終わってないのに余裕をかますのはよくない……な!」


目の前のダッジさんが消えて、背中に当たる拳の感触。


「あっ……」


そこで俺の意識はブラックアウトした。





「お前は、どうも詰めが甘いな。さっきのもガードされたことに喜んでどうするよ?」


「いや、ガードとはいえ初めてダッジさんの身体に当てられたんで、思わず嬉しくなっちゃって……」


戦闘が終わってダッジさんと普通に会話をしているが、俺は地面に這いつくばった姿勢のままだったりする。さっきの戦闘の最後で、ダッジさんの浸透を食らったせいで身体が動かないのだ。


「だが、戦闘中の魔力の使い方は上手くなったな」


「ああ、あれ!あれは、レッド・コメット先生の動きを見て試してたらできたんですよ!」


「……なんだその先生って。お前魔物のことを先生って呼んでんのか?」


「はい!先生には色々なことを教わりましたから。瞬間的に軌道を変える方法とか、止まった状態からの異常な加速とか……」


「そうか……。しかし、なんだな……魔物を先生と呼び慕うお前に訓練を付けているっていうのは、こう……複雑な心境だな」


「……あれ?ひょっとして、ダッジさんレッド・コメット先生に嫉妬してたりします?」


プププッ……人間が魔物に嫉妬って。


「そ、そんなわけあるか!!ほら、もう動けるだろ。とっとと帰れ!!」


「うーっす。ありがとうございました!」


良い歳したおっさんが照れてやんの。まあ、これ以上茶化すと本気で動けなくなるまで訓練させられそうだから、この辺で終わりにしておこう。俺はダッジさんに挨拶をしてギルドを出た。





翌日、相も変わらず森に来て一角兎を狩っていた。


「やばいな、森に入って1時間足らずで5匹狩ってしまった。

 ……これは本格的に何か考えないと、時間を無駄にしてしまう気がする」


新しく手に入れたスキル『気配感知』のお蔭か、一角兎の居場所を見つけるのが明らかに早くなってきている。最近ではポロンに頼らずに、自分で気配を探して見つけてるからな……。


一角兎に対して下処理をおこない、カバンに詰めていると、遠くから何かの音が聞こえた気がした。


「……今、何か聞こえたか?」


顔を上げて周りに意識を集中する。すると、ポロンが視線を向けて唸っているのが見えた。


「ウゥゥゥゥ……」


俺はポロンの傍まで行って、ポロンの視線の先に意識を集中させた。


…………カキンッ、キン……


「聞こえた!……これは、剣戟の音?」


誰かが森の中で戦っているのか?普段は獲物の取り合いになるのが嫌で、人のいる方には近づかないようにしてたけど……なんだろう、嫌な予感がする。


「ポロン、誰かが戦ってるみたいだ。そこに向かうから誘導してくれ」


「ワンッ!」


一声鳴いて走り出すポロンを追いかける。なんなんだ、この胸の中がモヤッとする感じ……何か悪いことが起こるような。これが、虫の知らせってやつか?

ポロンを見失わないように注意しながら森の中を走り続けると、ハッキリとした戦闘音が聞こえるようになってきた。間違いない、誰かが何かと戦ってる。


「何事もなくて、ゴメンで済めばいいけど……」


森の木々がまばらになってきた。向うの方が明るい分状況が見える。


「1人、2人……4人の人間、格好からすると同業者か。やばいな、すでに1人倒れて動かないのがいる」


状況から緊急性を感じた俺は、走る速度を上げた。


「相手はゴブリンが1……2,3……4匹」


対する冒険者の方は、1人が地面に横たわっている。ここからじゃ判別付かないけど、死んでいないことを願おう。その傍に1人、倒れた人を庇うように座っている。この時点で戦力が半減してる。


「今戦えるのは、前に出ている2人か。どっちも剣士系に見えるな……さて、この時点で割り込みって線は消して良さそうだ」


すでに戦線が崩壊して、戦っている2人も防戦一方だ。この状況で割って入っても文句を言われることは無いだろう。そう思った俺は、狙いを1匹のゴブリンに定めて、足に魔力を送る。1歩2歩……3歩で全速力。


「……ぉぉぉぉおおおお、助太刀する!!!」


叫びながら狙っていたゴブリンに飛び蹴りを見舞う。首に直撃を受けたゴブリンはそのまま吹っ飛んでいった。足に感じた感触から、骨が折れて即死だろう。


突然の乱入者に冒険者たちもゴブリンも一瞬動きを止める。ゴブリンは無視して、俺は冒険者たちに叫んだ。


「間違いだったら許してくれ!やばそうだったから、割って入ったけど、助太刀は必要か?」


「あ、ああ!助かる!」


ゴブリンと戦っていた1人が、俺が人間だと気付いたのか声を張り上げる。改めて状況を確認してみる。倒れている人は魔法使いのようなローブを着て倒れている。見た限り血は出ているように見えない……詳しい事は解らないけど、多分すぐに死ぬようなことは無いと思う。その横にいる、シスター?みたいな修道服に見えるな、あれは回復系の職種かな?女の子だ。彼女に怪我は見当たらないから、そっちも大丈夫そうだ。


「2人とも、俺がしばらく引きつけるから回復してもらってくれ!」


前でゴブリンと戦っている剣士風の2人に声をかける。すると、返答がシスターから聞こえてきた。


「すいません、もう魔力が切れて……回復魔法が使えません!」


なんてこったい……。


「回復薬とかは?」


「こんなところで、ゴブリンと戦うとは思ってなかったから、ほとんど持ってきてなかったんだ。それも、さっき使ってしまった」


最初に俺に声をかけてきた男が答える。準備不足を今更言っても仕方ない。そもそも、俺は回復薬すら持ってきてない……自慢にもならないけどね。


「じゃあ、戦力を割り振ろう。俺はまだ元気だから、2匹を引き受ける。そっちが1匹を倒している間踏ん張るから、できるだけ早く加勢に来てほしい」


「こっちは、それで構わないけど……。大丈夫なのか?」


お互いの戦力が分からない以上、現状では一番可能性があると思う。


「前にゴブリンを1対1でなら、倒したことがある。2匹以上は初めてだけど、しばらく持ちこたえるくらいはできるさ」


「……わかった。君の厚意に甘えよう」


「決まったな、よし行くぞ!!!」


俺が真ん中と右のゴブリンを受け持とうと、間に入って注意を惹きつつ残りの1匹と引き離しにかかる。驚いたゴブリンたちは、慌てて俺の方に向かってきた。よし、これで2匹と1匹に分断できた。


「えっと、槍持ちが1と、盾持ちが1か……。初めて戦う装備だな」


槍持ちの方が射程が長い分、脅威と考えて意識を槍持ち側に向ける。視界の端では2人がかりでゴブリン1匹を相手に戦いを始めたようだ。こっちも始めようか。まずは槍持ちを倒すことを考えて、突っ込む。俺の突進に反応して槍を前に突き出してくる。


「先生と比べたら、動きが全部丸見えだな!」


槍をギリギリ右に躱して、間合いの内側に入る。そのまま左拳を叩きつけようとしたところで、突然視界に剣が入ってきた。


「うぉ!!」


寸でのところで剣を躱すが、あとから槍が襲ってくる。剣と槍、違う間合いの武器に同時に襲われて成す術なく後退する。


「やり難いな……そもそも、2匹同時って状況も初めてだったけど、片側だけに意識を向けてたらやられるな……」


ゴブリン2匹も、自分たちの有利を理解しているのか深追いしてこない。あくまで2匹で同時に攻撃を仕掛けてくるつもりのようだ。


「今の俺なら、一撃入れば1匹は倒せるだろうけど、その間にもう1匹に攻撃される未来しか見えない……。でも、俺には突っ込むしかできない!」


馬鹿と笑いたければ笑え!それでも、俺にはこのやり方しかない!槍持ちのゴブリンに突っ込む。さっきと同じだ。槍を躱し、横からくる剣を避ける。足を止めたらやられるから、引っ切り無しに立ち位置を変えて躱しまくる。

お前らが予想よりも遅くて助かった……。しばらく避けていると、槍持ちが疲れてきたのか振るわれる槍の速度が遅くなった。


「チャンス!」


突き出された槍の穂先を少しだけ押して軌道を変える。流れた軌道に疲れたゴブリンはバランスを崩す、ここでまず1匹倒す!槍持ちに懐に飛び込もうと軸足に重心を移した瞬間、横から盾が迫ってきた。


「盾!?」


軸足に重心を移したことで、咄嗟の回避ができない。俺は頭を両腕でガードすることしかできないまま、盾の突進をもろに食らった。


「いってぇ……。盾って、そんな使い方があんのかよ」


ダメージ自体はあんまりない。ゴブリンが持っているのが、ただの木の板なのが幸いした。ただ、距離を離されたせいで仕切り直しになってしまった。結構時間が経ったような気もするけど、あちらさんはまだ加勢に来てくれないか?チラッと二人の冒険者の方を見てみたが、まだしばらくかかりそうだ。


「今のは途中までは悪くなかった。最後の盾の突進を何とか出来れば……」


視線を別の場所に移していたことを隙と見て取ったのか、今度はゴブリンたちの方から攻撃してきた。ここまで決定打が無いのに、同じことを繰り返すのは所詮ゴブリンって事か……あ、俺も同じか。あいつらも頭悪いんだな。


槍を避け、剣を躱し、たまにこっちから攻撃する。そんな攻防がしばらく続くとやっぱり槍持ちは体力が無いのか、穂先がブレ始める。穂先を押して流し、バランスの崩れたゴブリンの懐に飛び込もうとする。すかさず盾が向かってくる。


「でも、今回は違うんだな……今回の目標はお前だよ!」


向かってくる盾に、魔力を流した拳を叩きつける。ショートアッパー気味に入った拳から魔力が一気に膨れ上がる。


「吹っ飛べ!」


木の盾事ゴブリンを吹っ飛ばす。拳を叩きつけた木の盾は木端微塵に弾け飛んだ。


「よし!次は……お前だ!」


槍持ちのゴブリンに視線を向け、突っ込む。2匹だったから苦戦したけど、1匹なら今の俺の敵ではない。バカのひとつ覚えの突きを躱しつつ、上から叩き落とす。


「!!??」


疲れの見える槍持ちゴブリンでは、握力が弱くなってて手元から滑り落ちる。更に一歩前へ踏み込み脇腹に右フック。


「ゲギョッ!」


蹲った脳天に肘を叩き込む。嫌な音と共に動かなくなる槍持ちゴブリン。


「……まず、1匹」


吹っ飛ばした盾持ちゴブリンに視線を向けると、あちらも衝撃で動けなくなっているようだ。近づいていって、倒れている頭を踵で踏み抜く。


グシャッ!


「よし、俺の方は終わった……あっちは……っと」


見ると2人の冒険者たちもゴブリンを倒し終わったようだ。よかった、とりあえず何とかなったな……。


「そっちも終わったみたいだな」


「ああ、なんとかね。君が来てくれなかったらと思うとゾッとするよ」


恐らくパーティのリーダーなんだろうな、気さくに話しかけてくる男と握手する。


「改めてお礼を言わせてくれ。君が助けに来てくれなければ、俺たちは全滅していただろう、メンバーを代表してお礼を言う。ありがとう」


「俺はホクト。見てのとおり独り者で、メンバーはいn……」


「ワンワンッ!」


自分を忘れるなとばかりに吠えてくるポロン。


「1人と1匹のパーティだ、パーティ名は無いけどな」


笑いながらポロンを抱き上げる。頭を撫でてやると、機嫌が良くなったのでホッとする。


「僕は『烈火の牙』リーダー、アレク。他のみんなも同じパーティのメンバーだ」


「俺はキール、よろしく」


アレクと2人最後まで戦っていた片割れがキールか。


「あ、ああの……私はエミルと申します!ささきほどは、助けけていただだだ……」


噛みまくりで最後まで挨拶ができなかったドジッ子がエミルと……ちょっと、涙目になってて可愛い。


「今は気を失っているけど、あの子がミランダ。これで烈火の牙全員だ」


「よろしく。こっちは、俺の相棒でポロンだ」


俺に抱きかかえられながら「ワン!」と元気よく挨拶する。よしよし、挨拶は大事だからな。いい子だ。


「積もる話もあると思うけど、とりあえず町に戻らないか?

 そっちの倒れてる子も心配だし……」


「そう言ってもらえると、こちらとしても助かる」


気を失っているミランダは、アレクとキールで木の枝を使って運ぶようだ。こうしてゴブリンと戦闘を終えた、俺と烈火の牙の面々はリーザスの町に戻る事しにした。

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