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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
2章 強くなろう
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11話 強敵

追記:文末の・・・を……に変更しました。

あの恐ろしき課題達成記念の祝いから3日が経った。思い出したくもない……いや、思い出せない。俺はなぜ食堂の床で寝ていたのか、なぜあの日から女将さんが俺の顔を見るたびにド突いてくるのか……恐ろしい。


「ワンワン!」


今、俺とポロンの1人と1匹で一角兎を狩りに森に来ていた。


「お前は元気だな、ポロン」


「アン!」


もちろん、とでも言うように一鳴きして周りを駆け回る。ほんと、元気だね君。

あの祝いの日の翌日から、ダッジさんの魔力錬成の訓練は始まった。


「いいか、ホクト。まずは体内の魔力を感じるところから始める。

 目を瞑って、体内の魔力を感じてみろ」


「いきなり、魔力って言われても……どれのことか解んないです」


そもそも、地球人である俺に魔力があるのかって心配があったけど、これについてはステータスを信じるしかない。ダッジさんに言われたとおり、目を瞑ってみた。


「そのままじっとしていろ」


気配でダッジさんが近づいてくるのがわかる。ダッジさんは、そのまま俺の近くに来て肩に手を触れた。


「いいか、これからオレの魔力をお前に流す。それを感じてみろ」


言った傍から肩に温かいものを感じた。その温かいものは肩から入って身体の中を駆け巡る。


「これは!?……これが魔力なんですか?」


「何か感じたか?」


「何か温かいものが身体の中を通っていきます」


「そう、それが魔力だ」


そう言ってダッジさんは肩から手を放した。同時に身体に流れていた温かいものも止まる。


「あ……」


「次に、お前の体内で今と同じ温かい流れを見つけてみろ」


言われるままに、体内に意識を集中して流れを探す。どれくらいの時間が経ったのか、ダッジさんが声をかけてきた。


「今日の練習は、ここまでにしよう」


俺は目を開けて立ち上がった。


「どうだった?何か感じたか?」


「いえ……まったく」


「そう簡単にはいかないさ。これからも毎日欠かさず練習するんだぞ」


「……わかりました」


その日から俺は、暇な時間を見つけては目を瞑り体内の魔力の流れを感じる練習をするようになった。





「とは言っても、難しいんだよな……。何かの拍子に見つけられるかもしれないけど、今はその気配すらないし」


「アン?」


先行していたポロンが、俺の呟きを聞いて首を傾げた。こいつは本当に人間臭い仕草が得意な奴だ。


「なんでもない!」


頭をグリグリ撫でてやると、尻尾をブンブン振り回して嬉しそうに目を細めた。


「さて、こっちはこっちで真面目にやらないとな。なんせ、生活がかかってるからな」


一角兎の討伐は、あの日を境に劇的に変化していた。一度コツを掴んだからか、翌日からの討伐も面白いように上手くいくようになった。


「ワンッ」


ポロンが小さな声で鳴いた。あれは、近くに獲物がいるときの合図だ。ポロンが音を立てないようにゆっくり進んで行く。俺もポロンの後を進んで行く。


「……いた」


視線の先に茶色い毛玉が動いているのが見えた。


「ポロンは向う側に回れ。俺と挟み撃ちにして、あいつの逃げ場をなくす」


「ワンッ」


ポロンは本当に賢い。最近ではアサギから俺より知能が高いと褒められていた。そこまでは無いだろうと思いつつ、俺の言うことを理解しているコイツの頭は本当に俺よりも高い気がしてくる。


ポロンの準備が整うのを待ってから、繁みを飛び出す。


「キュイィィ!」


突然現れた俺に驚き、反対方向に逃げようとする一角兎。しかし逃げる先からポロンが飛び出して、またこっちに戻ってきた。


「はい、いらっしゃい!」


俺に向かって突進してくる一角兎を、余裕を持って躱しつつ角に一撃を加える。


「キュゥゥゥ~~」


弱点を叩かれた一角兎は、その場で動かなくなる。動かない一角兎の胴体に足をかけて、首を一気に縊り殺す。残酷なようだが、これが一番素材にダメージを与えない倒し方なので割り切っている。


「よし、今日5匹目だ。ポロンもご苦労さん」


「ワンワン!」


ポロンも褒められて嬉しいのか、俺の足に体を擦り付けてくる。


「よしよし!お前が仲間になってから、狩りの効率が良くなった。これからもよろしくな、相棒!」


「ワン!」


簡単な血抜きをしてから、一角兎をカバンにしまう。さて、次の獲物を探しに行くか。しかし、立ち上がった俺の頬に何かがぶつかる。


「イテッ、なんだ?」


頬に手を当てると、薄っすらと血が滲んでいた。遅れてポロンも辺りを警戒し始める。


「……ウゥゥゥ~」


「何かに攻撃されたのか?……まったく気配がしなかったけど」


周りに注意を払うが、それらしい気配はしない。……逃げたか?


「ポロン、どこにいるか分かるか?」


ポロンに聞いてみるが返事はない。と言うことは、ポロンでも感知できない何かがこの辺りにいるってことだ。参ったな、ポロンでも分からないものを俺が見つけることは難しいぞ。


「……」


動けない緊張感の中、しばらく様子を見ていたが、これ以上襲ってくる気配はない。そう思って警戒を解いた瞬間!


ガサガサ……


「後ろか!」


振り返って、相手の攻撃に備えようとした。しかしそれ以上に相手の方が速かった。


ガキィィ~!


何とか籠手で受けたけど、結構な衝撃に腕が痺れた。


「なんだ!?何に襲われたんだ?」


攻撃を受けたというのに、相手の姿が見えなかった。なんて速い奴なんだ。


「ポロン、相手の居場所がわかるか?」


「クゥ~ン……」


ポロンでも分からないのか……。この森に入って1週間以上経つけど、今までこんなやつに出会ったことはない。


ガサガサ……


「右!」


右へ振り返りつつ、頭を両腕でガードする。ダッジさんにガードは最後の手だと言われたけど、正直あの勢いの攻撃を頭に食らったら、死ぬ確率が高い。


一瞬、赤い影のようなものが見えた……気がする。


「クソッ、どこに行った?

 ポロン、赤い色が見えた。やつは赤い何かだ!」


ポロンに注意を促して、自分も辺りを警戒する。赤色なんて色は森の中では、なかなかお目にかかれない。そんな強烈な色をしているのに、見つからないあいつは、どんな魔物なのか……。


辺りを注意深く見てみる……すると、視界の隅に赤い何かが映った。


「そこだ!!」


視界に入った赤い何かに向けて攻撃する。


ピチュッ


「え?」


しかし、攻撃した先に会ったのは……野イチゴ!?


「クソッ、間違った!」


「クゥゥ~ン……」


ポロンが前脚で目を覆った……ゴメンね、バカな飼い主で。


ガサガサ……


「しまっ!?」


後ろから背中に強い衝撃を受ける。身体に一瞬の浮遊感を感じけど、たたらを踏んで堪える。しかし、その時には既に相手の姿は消えていた。


「ああ~、ムカつく!!隠れてないで出てきやがれ!」


頭に血が上って、手当たり次第に周りのものを殴りつける。すると、目の前の繁みが音を鳴らした。


「チャンス!そこかっ!」


繁みに向かって攻撃をするが、手ごたえがない……あれ?


「グワッ!」


足元から何かが突撃して腹に直撃した。


「いってぇ……」


蹲りそうになるのを何とか堪えつつ立ち上がる。すると……


ガサガサ……


ガサガサ……


相手の行動が大胆になってきた。確かに何かが飛び回ってるのは薄っすらと見える。だけど、速過ぎてそれがなんなのかは全く分からない。しばらく相手が飛び回る音だけが響いていた。


「このままじゃ、埒があかないな。ポロン、次に俺が攻撃されたら

 その隙に相手を攻撃しろ」


「ワン」


了承の小さい鳴き声で相棒が返す。よし、このまま何もできないまま終われない。俺たちも一矢報いてやる。


ガサガサ……


ガサガサ……


縦横無尽に飛び回る、そいつに意識を集中する。同時に鷹の目を使って少しでも相手の行動を呼んでやろうと身構える。しばらく膠着状態が続いた後、突然音が止む。……来るか?


ガサ……


音のした方に出鱈目に攻撃する。当然当たるはずもなく、俺は攻撃の隙を突かれて脇腹にカウンターを食らった。


「ぐぅ……」


ダメージで身動きが取れなくなったが、それでいい。後は相棒に任せた。


「ワンワン!」


俺の脇腹を攻撃した何かに向かって、ポロンが突進する。


「キュゥゥゥ~!!」


「え?」


しかしポロンの攻撃をヒラリと躱した何かが遠くに着地する。初めて俺たちの前に姿を現したそれは……。


「……赤い、一角兎?」


そう、角の生えた赤い一角兎だった。俺たちを睨んでいた赤い一角兎だったけど、そのうち目の前から消えた。


「……いなくなったか?」


いなくなっても、しばらく警戒を解かずにいた俺たちだったけど、大分経ってからもう大丈夫だろうと警戒を解いた。


「ポロン、大丈夫か?」


「ワン!……クゥ~ン……」


自分は大丈夫と一声鳴いたポロンだったが、俺のボロボロの姿を見て縋り付いてきた。


「大丈夫だ、これくらい何てことない」


縋り付いてきたポロンの身体を撫で回しながら、さっきの赤い一角兎について考える。


「あれは、一角兎……なのか?赤かったのは、特別な個体とか?

 ああ、わかんねぇ!とりあえず、町に戻って調べてみるか」


俺とポロンはリーザスの町に向かって歩き出した。この時の俺は、これから先勃発する赤い一角兎との死闘のことなど想像もしていなかった……。

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