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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
10章 好敵手になろう
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16話 10階層ボス攻略戦(後編)

作戦が決まり、全員が配置に着く。今回、あいつを惹き付けるのは俺じゃない。作戦を話しているときに、クウとポロンが立候補したのだ。


「わたし、戦いじゃ役に立たない。だけど、わたしも猛炎の拳の一員。どんなことでもいい、役に立ちたい」


「わんっ!」


「ポロンも、そう言ってる。今回の作戦で、わたしたちにできるのは囮になる事。だから、その役目はわたしたちが引き受ける」


入ってまだ日も浅いけど、クウも立派に猛炎の拳の一員だ。その目を見れば、どれくらいの覚悟で立候補したのか容易に想像がつく。危ない事はクウにも解っているんだ。だけど、それでも自分たちが役に立つ方法がそれしかないと思っての立候補。俺達には、それを拒絶する理由が無かった。


「クウ、ポロン。危ないと思ったら迷わず逃げろ。その判断は、お前たちに任せる。アサギやカメリア、俺が準備をする時間を稼いでくれ」


「まかせて」


「わんっ!」


クウたちは、戦闘以外で十分に役に立っている。俺やカメリアなんか、戦闘時にしか出番がないって言うのに……少しでも俺達の役に立ちたい。そんな思いがひしひしと伝わって来た。


「行くよ、ポロン」


「うぉん!」


独りと一匹が、いきなりトップスピードで石蠍に襲い掛かる。左右から緩急をつけて、クウとポロンが繰り返し攻撃を加える。ダメージは無い。だけど、顔の周りを飛び回られて石蠍もイライラしているのか、クウたちへの攻撃が段々雑になって来た。俺は、そのタイミングで『隠密』を使って気配を消す。カメリアは、いつでも飛び出せるように腰だめに構えている。アサギは、魔法の詠唱の真っ最中。まさに猛炎の拳の全てを賭けた戦いだ。失敗した時の事なんか、考えない。俺達は、絶対に成功する。


俺は石蠍から隠れるように配置について、両拳に魔力を集めて循環させる。『剛拳』恐らく、これだけじゃ決定打にはならないだろう。だけど、俺1人じゃ無理でも、仲間の力を借りれば……それは石を穿つ一刺しになる。


アサギの魔力が高まって来た。そろそろ魔法の準備が整いそうだ。石蠍を見れば、相変わらず左右からバラバラに攻撃してくる、クウとポロンに翻弄されている。クウたちも深追いが危険な事は解っている。だから、ヒット&アウェイで攻撃を受けないように立ち回っていた。


「頼むぜ、2人とも。あまり、無茶な事はしてくれるなよ……」


クウは両手に短剣を持って、独楽のようにクルクルと連撃を繰り出している。それが、例えダメージにならなくても注意を惹き付けるには十分だ。そして……。


「がぁっ!」


石蠍の注意がクウに向いた瞬間、今度は死角からポロンが爪や牙を使って攻撃を加える。こっちもダメージにはなっていないけど、1人と1匹の連携は目を見張るものがある。多分、あの渦中に俺がいたら今頃コテンパンにされていたと思う。あの硬い防御力があるからこそ、石蠍は未だに動けているだけだ。


クウたちの戦闘を見ていると、いつの間にか両拳の魔力の循環も終わっていた。後は、合図とともに剛拳を繰り出すだけだ。アサギを見ると、あちらも準備が終わったようで、俺の方に視線を向けて来ていた。


「……」


俺は静かに頷いて、作戦開始の合図を送る。アサギは、クウたちの攻撃のタイミングを見計らって、ちょうど狭間になるタイミングで魔法を発動した。


「ウォータースプラッシュ!」


アサギが考えた作戦、そのトリガーはさっきと同じウォータースプラッシュ。ただし、今度は上からではなく下から……石蠍の足元から上に、間欠泉の様に水が噴き出して、石蠍を宙に打ち上げる。クウとポロンは、見計らっていたのか範囲からいつの間にか離れていた。


「カメリア!」


「おう!」


カメリアも、真・鬼神の朱槍に魔力を流して準備をしていた。そして、宙に打ち上げられて身動きが取れない石蠍目掛けて、一気に跳躍する。


「鬼心雷纏!」


槍の穂先が、青白い稲光を纏う。そして、空中で石蠍の喉元に向けて一気に突き立てた。


「うおぉぉぉーーー!!!」


その怪力で、空中にいる石蠍諸共、朱槍を地面に叩きつけた。


「ギュアァギィガァァァーーー!?」


今まで聞いたこともないような悲鳴をあげて、石蠍が身体を暴れさせる。だけど、雷のせいで感電しているのか、思うように身体が動かせないようだ。更に、朱槍を持ったまま力任せにカメリアが上から抑えつけているので、石蠍は自分の弱点である腹を曝け出してしまっていた。


「ホクトくん!」


「おう、これが止めだ!」


俺も、カメリアと同時に行動を開始していた。隠密で気配を消して、相手の死角から接近。跳躍スキルで一気に天井までジャンプ、天井に両足を付けて更に跳躍スキルで加速。カメリアの朱槍目掛けて、一気に落下する。落下速度も攻撃力に加えて、両拳を頭上で組み合わせて、一気に朱槍の石突きに叩きつけた。


「剛拳!」


重力もプラスした俺の一撃は、朱槍を石蠍の喉の奥深くまで突き刺すことに成功した。


「ギャギャギャァァァーーー……」


断末魔の悲鳴を上げる石蠍。喉に深々と突き刺さった槍は、そう簡単には取れない。それに、すでにその力も無くなっているようだ。カメリアは、最後まで槍を離さず石蠍を地面に縫い止め続けていた。


「カメリア、終わったぜ」


「…………ああ」


余程力一杯握っていたんだろう。カメリアは、自分の力では握りを解くことができないみたいだ。俺が、その指をひとつひとつ解して、ようやっと槍から手が離れた。見れば、掌が真っ赤に染まっている。強く握り過ぎたせいで、槍の装飾部分が肌を突き破ってカメリアの掌を傷つけてしまったみたいだ。


「大丈夫か?」


「ああ、こんなのツバつけときゃ治る」


そう言いながら、掌をペロペロと舐め始めた。本当に大丈夫なのか?黴菌が入って後で辛い思いをしても知らないぞ。


「ホクトくん、カメリアお疲れさま。それに、クウとポロンもね。あなたたちが囮を十全にこなしてくれたから、石蠍の反撃を受けることなく倒すことができたわ。ありがとう」


「お礼を言われる事じゃない。わたしたちは、わたしたちにできる事をしただけ」


いつものように、表情の乏しい顔でクウが言う。だけど気のせいか、いつもよりも喋り方が早い。ひょっとしたら、興奮を抑えきれていないんじゃ……。


「わんわん!わんっ!」


「うわっ、解ったわかった。ポロンもお疲れさん。お前が居てくれて助かったよ」


「ひゃん!」


余程うれしいのか、興奮して俺に飛びかかって来るポロン。気持ちは解るので、抱き留めて背中を撫でてやる。ポロンは、俺の肩に顔を載せてご満悦の表情で目を閉じた。


「それにしても、カメリアはよく雷なんて発想になったな。お前、雷を浴びると身体が動かなくなることを知ってたのか?」


「昔、村の爺さんが雷に打たれたことがあった。その時、爺さんはしばらく動けなくなったって話を思い出してな。今のアタイなら、雷を纏う事くらい簡単だと思って挑戦してみたんだ。結果は大成功!次からも、この技は使えるな」


カメリアも、興奮冷めやらぬ状態で技のテストがしたいと、息巻いている。とりあえず、今は止めとけ。周りに迷惑だ。


そうこうしていると、石蠍の身体が塔に吸収される。ドロップ品は、嬉しそうにポロンが回収している。後で俺の所に持ってくるだろう。


「見事だった。私たちの時とは違うが、それ以上の成果だろう。しかし、よく倒せたな……」


壁際にいたサラたちが、俺達に近づいて来た。見れば2人とも、若干顔が青く見える。俺達が失敗して居たら、2人だけで石蠍と対峙しなきゃいけないと思えば、青くもなるか。


「何とか倒せたな。今回は、俺達の新装備がボスと相性良かったから何とかなったけど、次のボスもレアな奴がいるとなると、気軽にボスに挑戦できなくなるな」


「そんな不運、滅多におきないさ」


どうだろう。俺達のパーティは、そういう悪運を持ってそうな気もする。次のボスで何がきても良いように、準備だけは怠らないようにしよう。さて、そろそろ次の階層に行って今日は終わりにするか。そう思って提案しようとしたら、サラが俺に話しかけてきた。


「あのストーンスコーピオンを倒したホクトに頼みがある。ソウルと戦って、そして……勝ってくれ」


また面倒な事になりそうな予感がした。

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