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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
9章 仲間を探そう
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13話 新たなメンバー募集中

開けて翌日。昨日は肉体的によりも、精神的に参っていた俺たちは、その日の探索を早々に終了して探索者ギルドに仲間募集の依頼を出しに行った。


「あら、おかえりなさい。その表情だと、何か失敗したみたいね」


俺達を見るなり、カウンターにいたカリンさんが苦笑いをした。多分、各々渋い顔をしていたんだと思う。カリンさんは、そんな顔をしてギルドに入ってくる探索者を、きっと今までにも沢山見てきたんだろう。俺達が何か言う前に苦笑いをしていたって事は、つまりそういう事だ。


「笑わないでくださいよ、こっちは精神的に参ってるんですから……」


「ごめんなさい。でも、失敗しても命があっただけ良いじゃない。1つの失敗で、パーティ全滅なんて話は、ここには有り触れてるから。それで、どうしたのかしら?」


「それが……」


代表して俺が、事の顛末を説明した。それを聞いていたカリンさんだったけど、なにか腑に落ちたのか納得した表情をした。


「ああ、あなたたちも洗礼を受けたのね」


「洗礼?」


「そう、願いの塔の洗礼。これ以上先に進むなら、この程度のトラップに嵌るな……と言わんばかりにトラップ、トラップ、トラップの連続なのよ3階層って。それで、あなたたちみたいにトラップを解除できる仲間がいないパーティは、3階層で足踏みしてしまうの。別に強引に突破しても良いんだけど、よほど運が良くないと突破は難しいわよ」


やっぱり、3階層はそういう場所なんだ。2階層までには、全くと言って良いほどトラップの類は無かった。それが3階層になって突然、思い出したかのようにトラップの連続地帯が待ち受けていた。俺達の場合、ポロンはちゃんと仕事を果たしていたのに、カメリアのお茶目のせいで振り出しに戻されたけど……。


「それで、あなたたちはどうするのかしら?」


カリンさんは、すでに答えを知っているかのように微笑を湛えている。この人には、今後も敵いそうにない。俺はアサギの方を見て、その先を促した。アサギは、俺の意図を汲んで一歩前に出る。ここからは、我がパーティの頭脳堪能に任せよう。


「もちろん、私たちも仲間を募集します。条件は私たちと同程度のレベル、できれば年齢も近い方がいいです。性別は問いませんが、あまり変な人はお断りします。ホクトくんは男ですが、私とカメリアは女なので、その辺りは考慮してもらえると助かります」


「はい、承りました。とりあえず、何人か心当たりがあるので、明日また来てください。上手くいけば、それまでに渡りを付けられると思います」


「あした……随分早いですね」


「私は、あなたたちが今どの階層にいるのか知っています。今日あたり3階層に挑戦することは何となく解ったので、予め何人かに声はかけてあります。もし、あなたたちが仲間を不要と言うようであれば、私の準備にかけた時間が無駄になるだけ。特に問題ありません」


問題ありません、カリンさんは本心からそれを言っているようだ。この人は凄い、関わっている探索者の現状と、今後出る問題をちゃんと把握して、相談される前にある程度までは準備をしてしまうんだ。こういう人をプロって言うんだろうな。ノルンさんとはタイプが違うけど、この人も仕事のできるOLみたいだ。


「明日は、何時頃にギルドに来ればいいですか?」


「そうね、その人の都合もあるだろうから、とりあえずいつも通りの時間に来てください。それまでに、その人が現れなかったら私の方から連絡を入れます。両者が揃ったら、面談と行きましょう」


「解りました。では、明日また伺います」


「はい、お疲れさまでした」


そして、俺達はそのまま宿に戻って自由行動とした。まだ陽は高かったから、俺はダッジさんに訓練を付けてもらった。アサギも、どこかへ行くと言って宿を出た。カメリアは、街の外に魔物を狩りに行った……ちょっとは委縮しろよと言いたいけど、カメリアも訓練を兼ねてるので、あまり強くは言えない。そして、ポロンは嬉しそうにハンナちゃんの所へ向かった。


そして今日、俺達はパーティに新たな人材を迎え入れるべくギルドへ乗り込んだのだった。





「おはようございます。予定通り、いつも通りの時間ですね」


「あまり早くても、遅くても悪いと思って……」


アサギがカリンさんと話し始める。こういう時のアサギの外面の良さには、色々と助けられている。カメリアは言わずもがな、俺もあまり初対面の人と話すのは得意じゃない。交渉事に関しては、アサギに任せっぱなしだ。


「すいません、実はまだ声をかけた人がいらしてません。これから呼び出しますので、あちらでお待ちいただけますか?」


カリンさんが食堂の方を指す。見れば、こんな朝早くの時間から、すでに酔っぱらって潰れてる探索者も見える。あれは、朝からってよりも昨夜からって感じだな。あまり酔っ払いの近くに行くのも何なので、少し離れたテーブルに腰かけた。そして、各々飲み物を注文する。俺は冷たいハーブティー、アサギは温かい紅茶、そしてカメリアはエール……っておい!


「おいカメリア、これから人と会うのに、どうしてお前は酒を頼んでるんだ?」


「ちょっとくらい良いじゃねえか。アタイたち鬼人族にとって、酒は水みたいなもんだ。みっともなく酔ったりなんかしねえよ」


悪びれもせず、そう答えるカメリア。まあいいか、どっちにしろ面談が始まったときにカメリアにできる事は何もない。最初から、そういった諸々を放棄してるからな、カメリアは……。


頼んだ飲み物が全員分来て、それぞれがチビチビと――カメリアは2杯目を注文した――飲んでいると、カリンさんが俺達のテーブルまで来てくれた。


「お待たせしました。声をかけた方が、もう間もなく到着します。あちらの、奥の会議室で面談を行っていただくので、移動をお願いします」


そう言って、俺達を誘導する。探索者ギルドにも、冒険者ギルドと同じような会議室があるみたいだ。カリンさんに付いて行くと、大会議室と書かれた部屋が1つ、中会議室と書かれた部屋が2つ、小会議室と書かれた部屋が5つあるみたいだ。その中の小会議室の1つにカリンさんが誘導する。カリンさんに続いて中に入ると、そこは冒険者ギルドで一番小さい会議室と、ほぼ同じ大きさだった。中にはテーブルが1つに椅子が四脚、部屋の端の方に予備の椅子が二脚あった。壁には黒板がかけられていて、それを使ってミーティングをすることもできるみたいだ。俺達は左側に俺、アサギ、カメリアの順で座る。カメリアは部屋の隅から、予備の椅子を持ってきて座った。


「それでは、少々お待ちください」


そう言って、カリンさんは部屋を出て行く。一度お茶を出しに戻って来たけど、すぐにまた部屋を出て行く。取り残された俺達は、どんな人が来るかを予想しながら時間を潰した。俺としては、頼りになる、リーダーを補佐してくれるような男の探索者がいいと言ったら、カメリアにホモ疑惑をかけられた……なんでやねん。


「私は女性が良いかな。話し易くて、色々と買い物なんかも一緒に行ってくれる、友達みたいに接することができる人だったら最高かも」


「アタイは別にどんな奴でも構わねえよ。ちゃんと自分の仕事を全うできる奴ならな……それもできねえような奴なら、入れる意味がねえから反対だ」


カリンさんは、何人かに声をかけてくれたって言ってたから、今回会う人がダメでもチャンスはまだありそうだ。それを踏まえて、ちゃんと自分たちに会う人を選ぼう。こういう事で妥協すると、絶対後でもめる羽目になりそうだ。


「どうせなら、カリンさんが声をかけた人全員と一度は会ってみたいわね。それで、どの人にするかを選考した方が良いと思うんだけど、どう?」


アサギからの指摘も最もだ。別に1人だけって訳でも無いし、会えるなら全員に会ってみるのも良いかもしれない。仲間にするしないは別にして、他の探索者と接点ができるのは悪い事じゃないと思う。


そうして、どれくらい時間が経っただろうか。カリンさんに出されたお茶が、綺麗さっぱり無くなった頃に部屋の外に気配を感じた。やっと待ち人が来たみたいだ。俺が扉の方を向いたから、アサギもカメリアも外に誰か来たことが解ったみたいだ。


「いよいよね……」


「良い人でありますように……」


何故か、扉に向かって拝んでしまった。これから一緒に願いの塔に潜るかもしれない人だ。長い時間を一緒に過ごすなら、良い人の方が良いに決まってる。願いを込めて、扉を拝んでいると……。


ガラガラ……


「お待たせしまs……なぜ、拝まれているのかしら?」


拝むのに必死で、カリンさんが入ってくる前に止めることができなかった。不思議なものを見る目で俺を見つめてくるカリンさん。俺も咄嗟に止められなかったので、ちょっと恥ずかしい……。


「……オホン、約束の方をお連れしました。どうぞ、お入りください」


そう言って、先に部屋に入って席に誘導するカリンさん。そして、その後ろから現れたのは……。


「あら、可愛い……」


「なんだ、ガキか?」


「……年下?上手く話ができるかな」


三人三様の反応をする、我ら猛炎の拳のメンバー。それを、随分冷めた目で見つめる待ち人の少女。面談に現れたのは、幼いとすら言えそうなほど小さな女の子だった。

カメリアから大分経ちましたが、新キャラの登場です。

詳細は次話で明らかに。

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