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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
9章 仲間を探そう
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12話 そして、○○へ……

願いの塔・3階

無事1階をクリアした俺達は、2階も7日かけて問題なくクリアした。2階は1階と打って変わって純粋な迷路のような構造のフロアだった。ここでもアサギがマッピングを行い、ポロンが敵の匂いを察知して、先制攻撃で相手に大ダメージを与える戦法が上手くいった。2階に出てくる魔物たちの情報は、1階の時と同じようにアサギが探索者ギルドの資料室で分布と出てくる魔物の種類、俺が冒険者ギルドの資料室で出てくる魔物の詳細な情報を得て挑んだ。このやり方は、今の所合っているみたいで、俺たちは一度も撤退することなく2階をクリアできた。


「さて、今日は3階層に挑戦ね。1階層、2階層と時間はかかったけど順調に来てるんじゃないかしら」


「出てくる魔物も、大したことねえしな」


「わんわん!」


「ここまでは順調だ。だけど、いつ願いの塔が牙を剥くか解らない。ここは気を引き締めて、慎重に攻略しよう。俺達は、俺達のペースで進んで行けばいいさ」


こんな事を言っているのには理由がある。数日前、俺達が飯を食ってると久々にソウルと出会った。あいつらも、最近はずっと願いの塔に挑戦してるみたいで、あんまり顔を合わせることが無くなっていた。


「ようホクト!しばらくぶりだな」


「それはこっちの台詞だ。お前らどこに行ってたんだ?」


「どこって、そりゃ願いの塔に決まってるだろ。お前らも入ってんだろ?今どこまで行った?あ、ちなみに俺達、今日10階を突破したぜ」


「「「………………」」」


あまりに突然、それも色々言いまくっていたソウルだったけど、俺達はそれどころじゃない。こいつ、今なんて言った?


「……え、お前ら10階層を突破したの?」


「え、ああ今日な。いやぁ、やっぱキツイわ願いの塔は。最初の浅い階層は良かったんだけどな、5階を超えた辺りから突然難易度が変わった。ありゃ、俺達を殺しに来てるな……」


「5階層……そこに、まずは壁があるのか」


俺達はまだ2階層だ。確かにここまで順調に来ていて、明日は3階層に挑戦する予定だ。ソウルの言う事を信じるなら、6階層まで行くと厳しくなるらしい。とは言え、そこはソウルだ。本当に厳しくなるのが6階層とは限らない。こいつの感覚に付き合っていると、自分がいつの間にか何でもできるヒーローになった気分になる事がある。だけど、ソウルはソウル。俺は俺。過信しないで、1つずつ攻略していった方がいいだろう。


「あ、お姉さん!俺、シェフの気まぐれセットね!」


「すいません、今日はセット無いんです」


「えっ!?そりゃ、気まぐれ過ぎんだろ!もうじゃあいいや、こいつと同じのちょうだい」


「かしこまりましたー」


横でヘラヘラ笑ってるソウル。こいつと、仲間たちは間違いなく強い。少なくとも、今の俺達よりも何倍も強いはずだ。そいつらが6階層で、気配が変わったと言うなら、そこからは次元が違う可能性がある。そこまでに、何とか願いの塔に慣れておきたい。


「……そう言えば、お前らって仲間を増やしたりした?」


「あん?……ああ、増やしたぞ。サラ、エリスに次ぐ第三の女だ」


「……また女かよ」


「あのなぁ、お前にだけは言われたくねえぞ。こんな美女を2人も侍らせやがって……ちっとも羨ましくねえ!」


めちゃくちゃ羨ましそうにソウルが言う。そうか、ソウルたちもパーティの補強をしたのか。つまり、それくらいしないと、この先進むのが難しくなるって事だ。


「今は別行動してるけどさ、今度紹介してやるよ」


「そうだな。お前たちとは、何だかんだと長い付き合いになりそうだ。今のうちに顔を合わせておくのも悪くなさそうだ」


そんな感じに、願いの塔の中の話をしつつ俺たちは食事を楽しんだ。ソウルが色々と気になる事を言っていた。6階層でダンジョン内の気配が変わった。10階層を突破した。そして、新しい仲間を入れた。ひょっとしたら、その仲間が入った事で5階層を突破して、新しいエリアに入ったのかもしれない。俺達も、新しい仲間について話し合って今日を迎えた。


「ソウルの言ってた新しい仲間って、どんな職業なんだろうな」


「次に会う時に会えんだろ?今考えても仕方ねえだろ」


カメリアは相変わらずだ。まあ、言ってる事は間違ってないんだけど……。


「そうね。多分トラップの解除ができる盗賊か、探索者じゃないかしら」


「探索者……そんな職業があるのか?それなら、俺達も探索者だろ」


でも、確かに冒険者ギルドに登録して、冒険者を名乗ってたけど、職業は別にあったな。そう言う意味なら、俺は探索者であり拳闘士である……って事か。アサギの言っている『探索者』って職業は、本当にあるみたいだ。


「少なくとも、ホクトくんの拳闘士よりも多いはずよ。盗賊と一緒で、ダンジョン内に仕掛けられてトラップの検知と解除ができる。まあ、これは盗賊も同じね。探索者と言うのは、基本的にダンジョンに潜るときに有効なスキルを多く持っている職種よ」


「トラップの発見と解除か、確かに今俺たちに最も足りてない部分だな。検知の方は、ポロンやアサギもできるけど、見つけたトラップを解除できないんだよな俺達。試験の時もその探索者がいれば、もっと楽に合格してたのかもしれないな」


盗賊って言うのは、日本で遊んでたゲームの中にも出てきた職業だ。これは人から物を盗む盗賊ではなく――聞けば、そう言うスキルを持っている奴もいるらしい――所謂シーフ、斥候や鍵開けなど小手先や素早さが売りの職業だったな。アサギに確認したら、だいたい俺の認識で合ってるみたいだ。


「願いの塔では、いつトラップの類が出てくるか解らないから、今のうちからギルドに依頼しておいた方が良さそうね」


「紹介?ギルドって、そんな事もしてくれんのか?」


「そうよ。パーティへの斡旋、脱退なんかはギルドの最もオーソドックスな仕事ね。これは探索者ギルドだけじゃなく、冒険者ギルドでもやっていた事よ。まあ、どっちも人の紹介には仲介料を取るけどね」


「何だ、金取るのか。なら何でギルドに依頼するんだ?仲介料を取られても良いほど、なにかメリットがあるのか?」


特にないなら、金が無駄になるギルドに頼むよりも、自分たちで探した方が良さそうだよな。小説の中とかだと、自分たちで募集広告作って掲示板に張ったりしてた。俺達も、それをやればタダでできそうだけど……。


「一番はギルドに登録している中から、私たちと同レベル帯で、同じようにパーティメンバーを探している人を見つけてくれることね。これを自分でやろうとすると、とんでもない労力よ。そもそも、パーティを探しているかから始めないといけないから……。その点、ギルドなら色々な人の相談にも乗ったりするから、簡単にマッチングできるわ」


話しだけ聞くと、よくテレビでやってた結婚斡旋所みたいだな。お見合いパーティの代わりに、パーティメンバーとのお見合いを斡旋してくれるって考えればいいのか。コンサルタントみたいな仕事だな。


「私たちが依頼するなら、同レベル帯の盗賊、もしくは探索者ね。ホクトくんは、どっちが良いと思う?」


「それぞれどう違うんだ?盗賊は、さっき聞いたからイメージはできてる。探索者って、トラップの検知と解除の他に何ができるんだ?」


「人によってまちまちだけど、基本的に前に出て戦うような職種じゃないわ。どちらかと言うと、戦闘時以外のときに重宝するスキルが多いみたい。魔物を倒した時のドロップ率が上がるとか、レアドロップの確率を上げるとかね。他にも、アイテムを使った時の効果が若干上がるみたい。市販のポーションとかに、スキルを発動すると効果が上がるらしいわ。探索者は、だいたいこんな感じかしら。だから、戦闘要員も欲しいなら盗賊の方が良いかもしれないわ」


盗賊か、素早さを活かした戦闘とか、斥候とか……どうも、俺達の誰かと能力が被るんだよな。保険で2人目がいれば安心だけど、その枠で取るなら別の機会の方が良いかもな。


「じゃあ、探索者の募集をかけるか。年齢、性別不問で」


「……いいの?性別不問にすると、多分女性が来るわ。そもそも探索者への成り手が、圧倒的に女性の方が多いのよ。男性なら、もっと別の職業に憧れるからね……。でもいいの?ソウルくんとの話で、散々相手のパーティメンバーの女性比率を笑ってたでしょ?」


「まあ、成るようにして、成るようになったって事だな。とにかく、その条件で依頼を出そう」


「解ったわ」


「アタイは、別にだれでもいいぞ」


初の3階層にビビりながら歩いていたけど、方針は決まったな。探索者が入れば、こんなに緊張しながら歩く必要もなくなるな。


「わんっ!」


いつもよりも鋭い鳴き声。ポロンが何かを見つけたようだ。


「どうしたポロン、トラップか?」


「わふぅ!」


本当にトラップを見つけたみたいだ。自信満々に一声鳴いて、視線は見つけたトラップに向けられている。


「よし、ポロンが見た方にトラップがある。迂回しながら移動を再開しよう」


今の俺達では、トラップの解除ができない。だから、見つけても試験の時と同じように逃げの一手だ。ただ、このやり方が願いの塔に通用するかは、実際やってみるしかない。


ポロンの指示の通りに迂回して、移動を再開する。すると、後ろのカメリアから


「あっ……」


何とも不吉な呟きが聞こえた。後ろを振り返ると、カメリアがダンジョンの壁に手を付いているところだった。しかし、その手を付いた部分に見慣れない魔法陣が描かれ、カメリアが何とも情けない表情でこっちを見ていた。


「クゥ~ン……」


あ、ポロンが諦めた。って事は、あれもトラップか……一体何が起こるのか。しばらく待っていると、突然辺りが白い光に包まれて……。





「ここは……」


「塔の外ね……」


「……おいカメリア」


「い、いや……ちょっとよろけちまってな。思わず壁に手を付いたんだけど、まさかそこにトラップが仕掛けられてるなんてな」


悪い悪いと、まるで反省の色がないカメリア。こうして俺達の3階層探索は、いきなり振り出しに戻されて始まった。

そして、ふりだしへ……

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