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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
1章 冒険者になろう
2/240

2話 強くなりたい

サブタイトルを変更しました

追記:文末の・・・を……に変更しました。

「キミは戦えるの?身なりからして戦闘経験があるようには見えないんだけど」


「……ないです。でも何か力になりたくて」


「キミの気持ちは嬉しいけど、本当に私のことを思ってくれるのなら

 今は言うとおりにしてほしいわ」


 俺のちっぽけな見栄なんてお見通しだ。女性を残して自分だけ逃げだすなんて……ちくしょう、悔しくて涙が出てきそうだ。

でも、確かに彼女の方が魔物とやらとも上手く戦えるんだろう。俺がいるだけで彼女の身が危険に晒されるんだ。


「わかりました。あなたの指示に従います」


 ウダウダするのは止めだ。

 今は2人とも無事に生き延びることに全力を尽くそう。


「ありがとう。あなたが手伝ってくれるって言ってくれたことは嬉しいわ」


 そう言って俺に笑いかけてくれた。

そのとき、初めて彼女は俺の方をちゃんと向いてお礼の言葉を言った。

未だに悔しい気持ちも無くはないけど、あんな顔をされたら……。


「俺は、その洞穴に行きます。あなたも気をつけて」


「大丈夫よ、私は慣れてるから」


 笑顔だった彼女は少し厳しい表情をしてジャイアント・ボアに向き直った。しかしあいつも律儀だな。俺たちのやり取り中も攻撃してこないなんて。

さて、俺も行きますか。


「絶対死んだりしないで下さいよ!」


 俺は地面を踏みしめ走り出した。

これでも地区大会決勝まで行った高校でサードを守ってたんだ。足だってチームの中でも速い方だ。

最後に彼女が何かを言ってたけど、俺の耳に届く前に彼女の姿が見えなくなった。


「ここを生き抜いたら、絶対強くなってやる!」


 もう惨めな思いはしたくない。

今できなくても、いつかきっとできる。今までもそうやってきたし、これからもそうやって生きていく。

自分より強いやつ、上手いやつなん山のようにいた。それでも諦めずに練習を続ければいつか超えられる。

俺は天才じゃない。やれることなんてたかが知れてる。

それでも努力すれば結果は出る。

そう想っていなければ都立の高校が甲子園に行こうだなんて夢のまた夢だ。

震える足を無理やり前へ出しつつ、俺は暗い森を走り続けた。





 どれだけ走ったのか、時間の感覚が薄い。

立ち止まって振り返りたい、足を止めて息を整えたい。そうは思うんだけど後ろから何かが追ってくるような恐怖感に勝てず

荒い呼吸を繰り返しながら走るのを止められないでいた。


「はあぁ、はあぁ……洞穴ってのは、まだ着かないのか?」


 どこをどう走ってきたのかすら分からない森の中、すでに方向感覚なんて全くない。ただまっすぐと言われたからまっすぐ走っているに過ぎない。

いい加減洞穴が見えてきてほしい……このままじゃ遠くない未来に体力が尽きる。

ペースも何もない持久走に嫌気がさしてきたころ、突然何かに足を取られた。

気付いた時には少しの浮遊感と、背中への我慢できない衝撃。


「いっ……てぇー」


 倒れた状態で、身動きが取れないまま痛みに耐えていた。

 心臓の鼓動が耳のそばでガンガン鳴り響く。背中にも鈍い痛みが断続的に襲ってくる。

 一度止まってしまったからか、手足も言うことを聞いてくれる気配がない。

 目の前には覆いかぶさるような森の木々と青空。そうか、俺今仰向けに倒れているんだ。


「何かに足を引っかけたのか?」


 頭を横に向けても、あるのは見たこともない植物。

 どっちを向いても同じように見える。


「やばい、今のでどっちから走ってきたのか分からなくなった……」


 頭を動かして視線を脳天の方へ向けたとき、奇妙なものが目に入った。


「あれは……草をあんであるのか?

 いったい誰が……」


 眼に入ったものが理解できずにいると、横の繁みが揺れる音がした。

 瞬間的に横を向いて音の出所を見る。


「風……じゃなかったよな」


 風ではない不規則な音を確かに聞いた。音のした方を見続けているとまた


 ガサガサ……


「!? なにか……いる」


 言うことを聞かない身体に無理やり力を入れて立ち上がる。


 ドクン、ドクン


 さっきとは違う心臓の音を聞きながら、肌に感じる空気がさっきまでとは違う張り詰めたものに変わる。

緊張で身体が強張る中、なおも繁みを見続ける。間違いなく何かいる……繁みの擦れる音ははっきりと聞こえるようになった。

次第に近づいてくるなにか。繁みの揺れが大きくなり、目の前の繁みからそれが姿を現した。


「な、なんだお前は……」


「ゲギョッ!」


 そいつは俺の腰までしかないずんぐりした身体と緑色の肌、そして醜悪な顔には額から小さな角が生えていた。

そいつを俺は知っている……いや、会うのはもちろん初めてだけど、間違いない。


「まさか……ゴブリンとか言わないよな?」


「ゲゲギョッ!ゲギョ!」


 何が嬉しかったのか、そいつは笑っているように見えた。


「嘘だろ……なんで小説の中にいる化け物が、こんなところにいるんだよ!」


「ゲーギョ」


 ゴブリンは視線を俺の足元に移した。つられた俺も視線を下げると、そこには草をあんだものが目に入る。


「これ、お前が作ったのか?」


「ゲッギョ、ゲゲギョッ!」


 良く出来てるだろう、とでも言っているようなドヤ顔だ。クソッ、俺はゴブリンの仕掛けた罠にハマったのか。


「って言うか、ゴブリンって罠仕掛けるのかよ!

 お前らって知能低いんじゃないのか!?」


「ゲゲギョ、ギョギョギョ」


 すっげえバカにされた気がする。

引っかかったお前がバカだ的なことを言ってるよ絶対。

俺が悔しさに歯噛みしていると、ゴブリンが手に持つ木の棒をゆっくりと振り上げた。


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