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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
1章 冒険者になろう
13/240

13話 拳闘士の装備

武器屋を武具屋に変更しました。


追記:文末の・・・を……に変更しました。

「さて、この後どうしようか?」


冒険者ギルドの玄関を出て開口一番アサギが口にした言葉である。


「どうしようって、この後何するんだよ」


俺としては、この後宿にでも行ってとっとと寝たいところだ。その場合アサギはどうするつもりなんだろう?


「ホクトくん、この後の予定はある?」


「予定も何も、あとは宿取って寝るだけじゃないのか?」


「それでもいいんだけど、ちょっと買い物しない?」


「俺金持ってないぞ」


「そんなことは言われなくても知ってるよ」


そうですよね、町に入るときもアサギに借りたんだし……。


「アサギは宿とかどうするんだ?」


「私?私はいつも泊まっている定宿があるから、そこに帰るよ」


そうだよな、アサギはこの町に長くいるんだろうから宿は決まってるんだろうな。でもそうなると、アサギとはここでお別れって事になる。


「そうか、じゃあここで別れよう。色々ありがとうな。町に入ったときの手数料は依頼料入ったら必ず返すよ」


実際こっちの世界に来てから、かなりの時間をアサギと過ごした。別れるのは寂しいけど、こればかりは仕方ないよな。


「え、ちょ、ちょっと、どういうこと!?」


「俺は金持ってないし、どこか暖かい場所で野宿でもするよ。それに俺のランクが低いうちはアサギと一緒に行動する訳にもいかないって言ってたろ?だから、ここでお別れってことだよ」


「もうっ!なんでそうなるの!?」


「え?」


アサギが怒っている意味がわからない……。


「右も左もわからないホクトくんを私が放置するなんて、本気で思ってるの!?」


ヤバイ、マジで怒ってる……激おこだ。俺としては当たり前のことを言ったつもりだったのに、アサギの逆鱗に触れたようだ。


「じゃあ、どうするんだよ」


「ホクトくんがちゃんと依頼料で生活できるようになるまで、私が面倒を見ます」


「いや、それは甘え過ぎだろ。俺としても男のプライドがあるから、ヒモ生活は抵抗あるぞ」


「ヒモじゃないよ!ちゃんと冒険者ギルドの依頼をこなして、私が立て替えた代金を返してくれればヒモにはならないよ」


確かにそのとおりだ……そのとおりなんだが……。


「なあ、なんでそこまでしてくれるんだ?確かに森で助けてもらったし、身の上話も聞かせたけど。俺としては、この町まで送ってくれたことで十分返せないほどの恩を感じてるんだけど……。これ以上されたら、いつになったら恩を返せるのかわからないよ」


言いながら声が小さくなる。かなり情けないことを言っている自覚はある。でも、これ以上アサギに迷惑をかけたら、本当に合わせる顔がなくなる。そんな俺を見ていたアサギが笑った……柔らかい包み込むような笑顔だ。


「いいんだよ、今のホクトくんが何もできないのはしようがないよ。だって、この世界の事何も知らないんだから。でも、そんなホクトくんが将来成長して何倍も、何十倍もの恩を私に返してくれるって信じてるから。これはね、先行投資。ホクトくんは絶対将来すごい男の子になる!」


「なんだよ、それ。なんでお前に言い切れるんだよ」


ヤバイ、泣きそうだ……。アサギは、そんなにも俺のことを買ってくれてたのか。普段はポワポワしてるくせに、こんな時だけお姉さんぶるなんて卑怯だ。


「私は、私の男を見る目を信じてる!」


「台無しだよ、お前……」


自然に笑いが漏れた。多分……俺は一生アサギに頭が上がらない気がする。


「……あの、そういうことは玄関の前でやられても……。

 どこか別の場所でおふたりでやってください」


声の方に顔を向けると、ノルンさんが冷ややかな目で俺たちを見ていた。





「まずは武具屋ね。ホクトくんの装備を整えよう」


元気一杯のアサギが俺を先導する。俺の方はというと、さっきの冒険者ギルド前でのやり取りが尾を引いてテンションは下降気味だ。


「もう、いつまで落ち込んでるの?そろそろ元気出そうよ」


「アサギは元気いいな?」


「そりゃあ、ホクトくんとお買い物だからね!」


俺がしばらくアサギの厄介になることを決めたからか、アサギは終始上機嫌だ。口以上にものを言う耳と尻尾は全力全開のお祭り騒ぎだ。そこまで喜ばれるのは、こちらとしても嬉しくない訳がない。そんなアサギを見ていたら、ウジウジしている自分が馬鹿らしくなって笑えてきた。


「お、今笑ったね。そうそう、ホクトくんはいつでも笑顔でいないと。

 知能2なんだから、色々悩んだって意味ないよ」


「うるせえよ、知能2って言うな!」


「ぷぷぷ、ホクトくんは知能2のおバカな子~」


「歌うな!」


そんな馬鹿なやり取りをしていると、アサギが一軒の店の前で足を止めた。看板に書いてある文字は読めないけど、剣と盾が描かれた看板を見るに、ここが武具屋なんだろう。


「ここか?」


「そうです、私お薦めの武具屋さんです」


自信満々に中に入るアサギ。続いて中に入る。


「おじさん、いる?」


アサギは奥に向かって呼びかけている。そんな軽いやり取りを見ていると、奥から海坊主が現れた。


「……おう、お前。今海坊主って思ったろ」


俺は全力で首を左右に振る。……なんでわかったんだ?


「嬢ちゃんの連れか?」


「そうよ、彼の名前はホクトくん」


俺の代わりに自己紹介してくれたが、さっきのこともある。ここは丁寧にいこう。


「ホクト・ミシマです。今日冒険者になりました。右も左も分からない若輩者ですが、今後ともよろしくお願いします」


一生懸命頭に敬語を思い出しながら、自己紹介をしてみる。


「何言ってんの?ホクトくん。似合わないよ?」


うるさいよ、ちょっと黙ってろアサギ。


「……」


おっさんから無言の圧力を感じる。ダメだったか?やっぱり俺の知能2の頭では無理があったか?


「……この店の店主、ゴドーだ」


室内の灯りに照らされた神々しい頭と威圧感バリバリの強面の顔。怒っているようにしか見えないんだけど。


「ホクトくん、おじさんはこう見えて優しい人だから大丈夫」


「こう見えては余計だ」


よかった、怒ってはいないみたいだ。


「それで、今日はどっちの要件だ?嬢ちゃんか?坊主か?」


「ホクトくんの装備を整えようと思ってきたの」


おっさんの視線が俺に向けられる。改めて見ると、でかいなおっさん。190cmくらいあるんじゃないか?肩幅も広いし武具屋の店主になるために生まれてきたような風貌だ。


「坊主、お前の職業は?」


「あ、はい。拳闘士です」


「……拳闘士?また随分珍しい職業だな」


「やっぱり少ないですか?拳闘士って」


「ああ。俺の知る限り、お前さん以外だと1人しか知らないな」


「そうですか。拳闘士ってどんな装備になるんですか?」


「ちょっと待ってろ。色々見繕ってやる」


そう言っておっさんは奥へ消えていった。会話していただけなのにドッと疲れた。無駄に威圧感出し過ぎなんだよ。


「ちょっと見た目怖いけどね、本当は優しい人なのよ」


「どのあたりから、そう判断したんだよ」


「お店の裏手でね、野良猫に毎日餌をあげてるの」


秘密だよとばかりに指を口の前に持っていくアサギ。何その不良が猫に餌をあげてたようなギャップ萌。そんなサイドストーリー知りたくなかったよ。


「俺ちょっと店の中見てくるよ」


そう言って俺はアサギから離れた。アサギはアサギで見たい物があったらしく、すぐに見えなくなった。せっかく異世界の武具屋に来たんだから、色々な物を見て回りたい。


「ここは……剣がいっぱいだな。へぇ、色々な種類の剣があるな」


店の一角に近づくと大小様々な剣が置かれているコーナーだった。俺も男なわけで、剣に憧れはある。自分の職業的に剣を持てないのは残念で仕方がない。


「これは、俺の持ってるショートソードよりも長いな。うーん……書いてある字が読めない。なんだろう、ショートソードよりも長いってことはロングソードってやつか?」


「それは止めておいた方がいいぞ」


ああでもない、こうでもないと独りブツブツ呟いていたら誰かに声をかけられた。


「え?」


顔を上げて声の主を見上げる。俺とタメくらいか。金髪の男が立って俺を見ていた。身長も俺と同じくらい、いやちょっと高いなチクショウ。


「ん?どうした?」


不思議そうに俺を見ている。ややくすんだ金髪、顔は……俺よりはいい男だ。身体も引き締まってて、何かやってるやつの身体つきだ。


「これ、何かまずいのか?」


「この店のも物だから、まずいって言うほどでもないんだけどな。

 ただ、お前が持つには不釣り合いだと思っただけだ」


特に悪気があって言ってるわけではなさそうだ。どちらかと言うと、俺を心配している節がある。


「別に買うつもりで見てたわけじゃないんだ。普段剣なんてあまり見ないから、ちょっと興味が湧いただけだ」


「そうか……」


どこかホッとしたような表情だな。


「俺はホクト。ホクト・ミシマだ」


「え、ああ。俺はソウル。ソウル・スタントだ」


お互い自己紹介をしていると


「ああ、ここにいた。ホクトくんおじさんが呼んでるよ」


「わかった。じゃあな、ソウル」


俺が別れの挨拶をすると、二カッと何とも言えない笑顔でソウルは答えた。


「おう、またなホクト」


そうして俺とソウルは別れた。





「すいません、お待たせしました」


おっさんの元に戻ってみれば、カウンターには様々な武器や防具が並んでいた。


「それが拳闘士の装備ですか?」


「いや、専用ってわけじゃねえ。ただ、今うちにあるのがこれくらいしかない」


改めてカウンターの上を見てみると、武器と呼べるようなものは置いてなかった。


「まず前提条件だが、拳闘士は武器を持って戦うことができねえ。せいぜいが拳を守るナックルだけだ」


そう言って差し出してきたのは、不良が持ってそうな物だった。指の形に穴が4つ空いていて、恐らくそこに指を通して握るんだろう。


「それとガントレットが一体化したものを使うことになる」


ガントレットって籠手のことだよな。


「ガントレットにも色々あるんだが、今のお前にはこのあたりの皮のものがいいだろう」


俺はおっさんからガントレットを受け取る。触ってみると結構硬いな。皮っていうからもっと柔らかいものを想像してた。


「次に胴体だが、これも皮だな。うちのは裏に鉄板が入ってるから防御力もそれなりにある。寸法を取って調整すれば、すぐにでも使えるぞ」


俺はアサギを見た。アサギも俺を見て頷いてくれた。


「お願いします」


「わかった。最後に足回りたが、膝下あたりまであるグリーブがいいだろう。拳闘士ってことは、受けるよりも避ける戦い方だろうから軽めのやつを選んだ」


「わかりました。おっさんの言うとおりのもので調整をお願いします」


「ゴドーだ。次におっさんなんて呼んだら身体と防具を縫い付けるぞ」


こえぇ・・。このおっさん冗談が通じないな。


「おじさん、どれくらいでできる?」


「そうだな……溜まってる仕事もねえし、1時間後くらいに取りに来てくれ」


「わかった。代金はそのときでいい?」


「ああ、構わんよ」


おっさんに手を振るアサギに腕を捕まれて、俺も外に出る。

その時にはソウルの姿も店内には無かった。

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