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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
6章 町を守ろう
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7話 グループ分け

目的の村までの旅は順調だった。俺たちの馬車には猛炎の拳の俺、アサギ、カメリアと烈火の牙のアレク、キール、エミル、ミランダ、そしてソロのCランク冒険者のカゲツグの8人が同乗している。カゲツグさんは無口なのか余り喋ろうとはしないけど、一度名前の響きが気になって声をかけたことがあった。


「俺の名前?そうか、この辺りでは珍しいのかもしれない。俺はこのダーレン大陸の北端にある集落の出身だ」


「北端って言うと……リーザスとは結構離れてるな」


「そうだな。南端に近いリーザスへは半年程度旅をして辿り着いた。俺の故郷の方ではそこまで珍しい名前でもないんだけどな」


そう言って黙ってしまったカゲツグさん。確かにアサギの名前も日本名とも思えるから、この世界で全くの異色と言う訳でも無いんだろう。


「アサギも北の方の生まれだったりするのか?」


「私?ううん、私はここからそんなに離れてないよ。暗闇の森を超えた先、大陸の東の方かな。リーザスまでは10日くらいの距離」


「そうか……」


必ずしも北に固まってる訳でも無いんだな。


「ホクト、あまり冒険者の過去を詮索するのは良くないぞ?禁止ではないが、マナー違反ではある」


俺がカゲツグさんと話していると、アレクが注意してきた。そうか、そんなつもりは無かったけど結果としてカゲツグさんの過去を詮索した形になってしまった。


「すいませんカゲツグさん」


「いや、構わない。それに敬語も不要だ。俺の事はカゲツグでいい」


「……わかった、カゲツグ。何にしろこの作戦中はよろしく」


「……ああ」


若干重苦しい空気になったけど、カゲツグとも打ち解けることができて良かった。喋るのが嫌いってわけじゃなくて、ただ無口なだけなのが感じられた。


「そう言えばホクト、今回の作戦はグループ単位でやるって言ってたけど、それってこの馬車の集まりでいいのか?」


静まり返ってしまった馬車内だったけど、どこにでも空気を読まない奴はいる。うちのカメリアもそんな1人だ。こういう場合は有難い存在だ。


「いや、どうだろう。向うに行ってから改めてグループ分けするんじゃないか?」


「そうだよね!馬車単位でグループ分けされちゃうと、私たちのグループで高ランクなのってカゲツグさんとアサギさんだけになっちゃうよ。私たちみんなDランクだし、ホクトさんたちの足手纏いになっちゃう……」


エミルがカメリアにのっかって話し始めた。確かにエミルの言う通り、今のグループ分けだとCランク冒険者の2人にかかる負荷が大きいな。だとしたら、やっぱり現地についてからグループ分けをするのか?どうせなら、ソウルたちと一緒になれたらいいな……試験以来ソウルと一緒に依頼を受けたことは無かったから、今のあいつの実力を目の前で見てみたい。


そう俺が思っていると、御者をしてくれていたギルドの人が声を張り上げた。


「目的地に着いたぞ!」


どうやら予定していた村に到着したようだ。さて、ここからが本番だ。





馬車を下りると、目の前には閑散とした村の風景が広がっていた。この村に住んでいた人たちは、すでにリーザスに避難を完了しているとは出発前にノルンさんから聞いていた。聞いてはいたけど……。


「本当に人っ子1人いないんだな……」


「当たり前でしょ、逆にいたら逃げ遅れたって事で大変なことになるよ」


アサギから至極真っ当なツッコミを受けて黙る。いや解ってたけどさ、もうちょっとフォローしてくれてもいいんじゃない?声に出した俺がバカみたいじゃん。


「バカな事言ってないで行こうぜ。ほら、あっちに集合するらしいし」


カメリアにまで冷めた目で見られた。そこまでのつもりで言ったんじゃないのに……これからは言動に注意しよう。


すでにカゲツグと烈火の牙の面々は集合場所へ歩き出していた。俺たちも慌ててそれを追う。


「どうやら全員無事に着いたようだな。これからしばらくの間、ここがお前たちのベースキャンプとなる。村の者たちには了承を得ているとは言え、無闇に建物の中の物に手を触れるなよ。基本的に、この広場にテントを張って生活してもらう」


すでにみんな解っていたことなんだろう、ダッジさんが言う事に突っかかってくるような人間はいなかった。でもそうか、てっきり宿屋みたいなところでベッドだけは借りれると思ってたけど、そんなことあるわけないな。俺1人だけ考えが甘かったみたいだ。


「なんだ、ベッドは使えると思ったのに……」


カメリア、お前もか……。


「それから、改めてグループを8つに分ける。今後行動は、そのグループ単位で行ってくれ。それと、今のうちに言っておくぞ。グループは均一の能力になるように分けてある。そのため、普段のパーティメンバーとは別の者と組むことになるだろうが、それについては諦めてくれ。よし、ではこれから呼ぶ面子で固まってくれ」


そうか、パーティ単位だと人数にも差が出るから一度パーティの枠組みを崩すのか。そうなると、普段やっていた連携とかも使えなくなるな。そこまで頭が回ってなかったぞ……大丈夫か?


「大丈夫よ、高レベルの冒険者たちは人数に限りがあるから分かれるでしょうけど、私たちが分かれることは無いと思うわ」


「そうなのか?逆に高レベルパーティは今まで通り纏まって、俺たちみたいな低レベルの冒険者を割り振った方が良いと思うけど……」


「それだと確かに強いパーティは良いんだけど、8グループ全体のバランスとしては上と下で随分な差ができちゃうと思うの。ダッジさんなら、そんなバランスの悪い組み合わせはしないんじゃないかな」


そんなもんか。まあ、俺はこういう事に慣れてないからアサギの言ってる事の方が正しいのかもしれない。そして、事実俺たちは分かれることなく同じグループになることができた。


「知ってる人もいるかもしれないけど、改めて自己紹介するわ。私は涼風の乙女のリーダー、アマンダ。職業は魔法剣士よ。これからしばらくの間、このグループのリーダーと言う事になるけどよろしく」


ギルドの会議室で見かけた涼風の乙女が俺たちと一緒にグループを組むことになった高レベル冒険者みたいだ。アマンダさんはアサギやカメリアと同じくらいの年齢に見える。スラッとしたプロポーションで、前にも思ったけどとても鋭い感じがする。カメリアよりは明るいけど、赤い髪を首の辺りで纏めている。


続いて涼風の乙女からもう1人参加の女性が自己紹介をしてくれた。


「私は涼風の乙女のアイラ。職業は神官です。怪我を負った時や、疲労した時は言ってください」


真っ白な神官服を身に纏った清楚な人だ。どこかのドジッ子シスターとは感じるオーラが違う。肩甲骨辺りまで伸ばされた黒髪が、より清楚さを引き出している。歳は俺よりも少し上20歳くらいかな。


「このグループでAランクなのは、私とアイラだけだ。では引き続き、そちらから自己紹介を頼む。


「はい、俺はホクト。職業は拳闘士です。Dランクですが前衛としてがんばります、よろしくお願いします!」


「私はアサギ、職業は魔法使いです。水と火の魔法が得意なので、広範囲魔法が必要な時は気兼ねなく言ってください」


「アタイはカメリア、職業は槍士だ。当たりには強いから、遠慮なく最前線へ送ってくれて良いぜ」


「君たちは猛炎の拳だったな。Cランクの魔法使いは……アサギだったな。期待しているぞ」


「わかりました。精一杯がんばります」


当然アサギは目を付けられるよな。それに最近では天狐を使役したことで、広範囲の殲滅力も以前より高くなっている。今回の魔物の群れにもアサギだったら大ダメージを与えてくれるだろう。


うちの面子の自己紹介が終わって、他の冒険者の自己紹介に移った。


「俺はカゲツグ、Cランク冒険者で職業は弓士だ。100メタ程度なら動いている的でも9割は当てられるだろう」


「そいつは凄い。それだけの腕があれば、今回のスタンピードでも戦力として十分だろう。期待しているぞ」


「ああ」


カゲツグって思った以上に実力者のようだ。アマンダさんも期待した目で見ている。さて、次の人は……。


「俺はターツ、ソロのCランクだ。職業は剣士、前衛の壁としての仕事は任せてくれ」


「そうだな。このグループではお前とカメリアに前衛の壁となってもらう事になるだろう。よろしく頼む」


「わかった」


見上げるような巨体のターツさん。身長なんて190cmくらいあるんじゃないか?背中に背負った巨大な剣は、某竜殺しみたいでカッコいい。身体中筋肉で覆われていて、どんな魔物の突進でも止めてくれそうな雰囲気がある。


アマンダさんは、カメリアとターツさんを前衛として使うみたいだ。俺が前衛に入っていなかったけど、どういう使い方をしてくれるのか。


「次は私ね。私はシッカ、Dランクパーティ『洞窟の住人』のリーダーよ。職業はシーフで、偵察が得意」


ちょっとボーイッシュな感じがするシッカさんは、Dランクのシーフ。今回の作戦には3人で参加しているようだ。バンダナで髪を纏めて動きやすくしているんだろう。装備も基本的に動きを阻害しない軽装の物のようだ。


「私はリネカ、Dランクパーティ『洞窟の住人』の一員です。職業は戦士、斧を使って戦います。よろしくお願いします」


次はシッカさんの仲間のリネカさん。シッカさんとリネカさんは顔も似ていて、恐らく姉妹かな?斧が得意と言っていたけど、確かにゴツい斧を背負っている。それを扱えるようにはとても見えないけど、意外と力持ちなのかな。


「僕はクーツ、Dランクパーティ『洞窟の住人』の一員です。職業は吟遊詩人(バード)、主に味方の能力を向上させる歌を得意としています。少しですが回復もできるので、必要な時は言ってください」


最後はシッカさん達の仲間のクーツさん。見た目は俺と同じ年くらいに見える。喋り方からも感じる優しい人オーラが出てる。吟遊詩人って初めて出会ったけど、やっぱり優男でモテそうだ。


それにしても、この『洞窟の住人』と言うパーティはみんな若く見える。シッカさんだけちょっと上に見えるけど、リネカさんもクーツさんも俺と変わらないんじゃないか?


「うむ、洞窟の住人のメンバーには色々とサポートに回ってもらう事になると思う。シッカには魔物たちの偵察や遊撃、リネカは疲労した前衛の補助、そしてクーツには味方の能力向上と回復を頼むと思う」


「わかったわ」


これで一通りの紹介が終わったかな。それにしても、俺だけ明確な使用方法を聞いていない。他の人たちは前衛や偵察など、明確な使い方を説明していたのに。


「あのアマンダさん」


「なんだ?」


「戦闘になったら、俺の役割は何になりますか?」


「そうだな……」


あれ、今になって考えてる感じがするぞ?俺も一応前衛なんだけどな。


「俺も前衛なんで、カメリアやターツさんと一緒に前で戦いますよ?」


「……」


何だろう……アマンダさんの視線は俺を戦力としてカウントしていないように見える。そう言えばダッジさんが言っていたっけ。拳闘士は、あまり人気のない職業だと。これって、もしかして……。


「ホクトと言ったな」


「はい」


「君は戦闘になったら、何もしなくていい。その代わりシッカの偵察の補助や、戦闘以外の時に他のメンバーができない事を代わりにやってくれないか?」


「!?」


一瞬アサギとカメリアの気配が変わった。ここで問題を起こすのはまずい、俺は2人に視線で落ち着くように促す。


「それは……俺は戦力外って事ですか?」


「有体に言えばそうなる。正直私では、君の有効的な使い方を思いつかないんだ。君にも悪いとは思うが、拳闘士と一緒に戦ったことが無いのでな」


少しだけホッとした。何か拳闘士と因縁があっての話ではなく、純粋に未知数だから分からないと言ってくれたので気が楽になった。それでもアサギとカメリアは睨んだような表情になってるけどな。


「なら、戦闘中は遊撃って事でいいですか?皆さんの邪魔はしないので」


「君がそれでいいと言うなら、私は構わない」


「ありがとうございます」


そう言って、この場は引き下がった。


「では短い間だが、これからみんなで頑張っていこう!」


「「「おう!」」」

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