地味男くんとギャル美ちゃん
「地味男さ、彼女とかできたことないの?」
幼馴染のギャル美がそんなことを唐突に尋ねてきた。
どのくらい唐突かというと、「今から君たちに殺し合いをしてもらいます」とか、
先生が教壇に立った瞬間に言い出すくらい唐突だった。
「ないよ。ないけど予定はあるよ?」
もちろんぼくにそんな経験は無い。
でも予定はある。だが、予定も未定。
「え、まじ?今年のバレンタインいくつもらったの?」
「去年の20倍くらいはもらったけど。」
「はぁ!?20倍!!やばっ!!」
その反応にぼくはドヤ顔を決める。どやー。
だが、それもつかの間。
ぼくの母親が話しに割り込んできた。
「そうね。0を何倍しても0だものね。」
即効ネタバレされた。
どのくらい即効かというと黒い忍者くらいの速攻だった。
そして母はぼくに追い討ちをかける。
ぼくは逃げようとしていたからダメージは2倍だ!
「しかもあんた、靴箱あけたらチョコどころか靴もなかったじゃない!」
期待して
靴箱あけたら
靴すらねぇ。
面白いけどシャレにならんわー と母は笑う。
笑ってんじゃねぇよ。バラしてんじゃねぇよ。五 七 五 ってんじゃねぇよ。
字余りしてんだよ!! やめてよ……。
「ま、まじか。地味男。どんまい。」
「グスン・・・」
やだ。ブレイキンハートしちゃう。
だって男の子だもん。
「な、泣くなよ地味男。今年は私がチョコあげるからさ。」
ギャル美に頭をなでなでされながら。
今日もぼくは学校へ向かう準備を始めたのだった……。