Der Leitton
ババアの合図で侍女がスタンドマイクっぽいのを持ってきた。
「こちらが測定器になります。順番に声をだしてください。音の高さはこの音に合わせてください」
いいながら手元の小さい機械のボタンを押してサンプルらしき音を出させた。
「一度測定を済ませれば、心の中でこの音を思い出してくだされば頭の中に浮かぶようになります」
そういうもんなのね。あんなんサンプル聞かないでも思い起こせるわ。当たり前だがステータスは浮かばなかった。
順番に測定が始まってわいのわいのしてたが、塁の番で大きく盛り上がった。
名 ルイ・カガ
体 150709
魔 148102
加護 5
童
おっと。前々の講義でも教わってたから私が説明します。
この世界にはHPやMPがありません。HP1のままで戦えるのはア○ンの使徒の兄弟子だけです。
あの人は使徒やめてますよね。
体も魔も一般人はだいたい20位だそうよ。クラスメイトたちの平均はこれまでであれば70000位だったからすごいんだけど一騎当千ってほどじゃなくて萎えぽよ。いちいちお約束を外してきて本当にムカつく。
加護は0から5までなのでマックスらしいのだが、ここは10とか出して左手から波動を抑えられない感じとかやれよ。ちなみにだれそれの加護とかが出ないのは、名前がわからんのと加護は複数もらえないからあまり必要ないんだと。
ちなみに同士だった。彼女を大事にしてるって感じなの?どうでもいいや。
童はあるとステータスにマイナス補正があるらしいよ。
「驚きました。これは真の勇者様と言ったところでしょうか」
ババアが言うが絶対違うと思う。もっとステータスはっちゃけたほうが面白いと思うよ。
なんかいろいろ騒ぎになってるけどどうでもいいんだよ。はやく幼なじみ2の測定やってくれない?
時はきた。
ヒジリは堂々として音を聞き直してるがあれはちょっと肩に力はいりすぎ。
深く息を吸う。体の重心が多少上がった。あいつ昔教えたこと忘れてんな。相当緊張してると思う。
綺麗な声だな、と思う。でも今はテンパってて喉で声だしててある意味微笑ましいよ。
ピッチの方は流石に合わせてきたな。音の高さだけは及第点ってところで手打ちかな。
名 ヒジリ・キルヘントナート
体 12000
魔 999999999
加護
まあ、こんなもんやな。加護にレベルがないのは0じゃない。加護がない人はそもそも空欄です。
ババアも流石に驚く。周りも驚く。
「これはこれは。聖女といったところでしょうか」
おっと意見が珍しく合った。まぁいいや。
ヒジリが笑ってこっちを見てるから俺も笑い返す。
言葉はいらんのだ。
かしこも笑ってる。あ、あれは悪いこと考えてるほうの笑顔だ。
出席番号順、すなわち苗字順でやってるから次はモブたち(あくまで俺の主観)だけど
はやくはやくー。
時はきた。パートツー。
相変わらずクールビューティーは感情が読みづらい。
深く息を吸う。期待して聞くと流石に俺もその発想は心の中で吹いてしまった。
尺八のそれである。メリやカリと呼ばれる音程調節っぽい感じでシャクリ上げたあとに、正確な音程で長ーーーーーく歌う。よく息が続くもんだな。
これまで音程が一定じゃない人でも魔が高い人はいたので、あいつは声も揺らしていた。
俺もビブラートはかけようと思っていた。ただかけるだけならビブラートであったが、まさか音の入りをポルタメント(シャクリ)するとは。
なので彼女のそれはもうビブラートではないと思う。尺八のユリだ。
同姓からラブレターもらう女の子の声が、ユリユリしてる……
まさか日常までここまでの前フリだとは。恐ろしい子……
素晴らしい。発想がぶっ飛んでる。俺が管理者なら彼女を魔王にする。さてどうでるかな。
名 カシコ・タンゲ
体 15000
魔 1
加護
流石にキレた。ババアを睨む。
「さすが勇者様。魔力が低いですが体力は流石ですね。魔王と戦うのは大変でしょうからこの世界に住むのなら娼婦と言ったところでしょうか」
その時、世界が震えた。
ーーーーーー創造神が記す。
この世界は一夫一妻制である。離婚や再婚は許されているが、忌避されている。
一人でできるのなら構わないが、相手がいるのが常のことであるから相手も社会からつま弾かれてしまうのだ。
ちなみに未亡人などは名誉職である。国から支給金も出るので貴族のような立場である。
結婚を望むのなら女性は純潔であることが望ましい。しかし、男性は童だとステータスにマイナスがつくのだ。その意味でも違う意味でも娼婦は必要になる。娼婦は結婚を許されているが、望まれないため、国に庇護されている。とてつもない審査があるので名誉技術職なのだ。結婚や子どもを望まなくて忌避感がない女性には、憧れの職業でもある。金銭面の待遇は上位貴族なみ。当たり前のように、利用する男性も敬意をはらう。
ちなみに、勇喜もかしこも聖も娼婦に偏見は持っていない。むしろこの国でないところで働いている娼婦にこの国以上に敬意を抱いている。このことも講義で教わっている。
だが、かしこはどう考えても娼婦になることを望んではいない。この国だろうがどこであろうが。
触れてはいけないところがある。人であろうが神であろうが猿であろうが。創造神は無機物にすら触れてはいけないところがあると思っている。それに王妃は触れたのだ。しかもあからさまに理解してだ。王妃の存在がなんであろうともやってはいけないことをしてしまったのである。楽しくなりそうだ、と創造神はここで筆を一旦置くーーーーーーー