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1話 転生してみた


いくつもの大木が生えている森の中。初夏の暑さを和らげるような風が吹き、居心地のいい空間を作り出している。そこに登山靴に薄手の洋服を身にまといリュックサックを背負ったままのアキラが横たわっていた。


「ん……ふぁぁ…よく寝たぁ………あ゛?」


体を起こすとてっきり自室で寝ていると思い込んでいたアキラの目の前に見覚えのない景色が飛び込む。


「なんじゃここは?!てか俺どこで寝てたんだよ!」


あわてて立ち上がると周囲を見回して状況を確認する。

どうやらどこかの森のようだがこんなとこに来た覚えは無い上にまずここで爆睡?するまでの記憶もない。

ただなんとなくさっきも見たような見てないような……


「そうだ思い出したぞ、さっきまで山登りしてたんじゃん。それで確か落ちて転生だか何だかで飛ばされたんじゃなかったっけか?」


ふっと記憶がよみがえり、何があったかを思い出した。


「てことは俺の記憶が正しければ転生したんだよなぁ……でも着てる服は変わってないのはどういうことだ?」


自分そのものどころか服装、持ってたものまですべて変わっていない。

アキラの思ってた転生といえばそもそも人間じゃなくてもっと違う動物だったりというイメージだった……が、まさかの変化なしである。

これは転生じゃないんじゃ……


「まあなったもんはしょうがないからその話はもう止めとくか。そんなことよりもここどこだよ」


見た感じは日本、だがあの時"能力"と言っていたからここは異世界のはず。ならばどこかにあるはずの町まで行かないといつまでたってもこんなとこでフラフラさまよい続けることになる、さすがにそれは勘弁だ。


「取りあえず歩いてここから離れてみるかぁ…」


方向も全く分からないがどこかに人がいることを願い取りあえず真っすぐ歩き始めた。道という道が無いどころか獣道にもなれないような場所だが無理やり突っ切る。どうにか通れるのは誰かが通ったことがあるからなのだろう。


「そういえばその"能力"っていったい何なんだろう」


話し相手がいるわけでもなくボッチなので一人で疑問に思っていたことを考え始める。

落ちてるときに入り込んだあの空間、あそこで聞かれたものは全てこの世界に反映されていると考えれば俺は魔法使いかなんかになっている筈だが…


「うおおお……メラ!」


と手を振りかざしてて有名な某ゲームの魔法を打つそぶりをしてみるが…


「まあそりゃそうだよな…」


特に何も起きない。はたから見たらただの中二病患者である。

と言うことは転生したのはいいけどそんな夢みたいなことはできないってことか!?

いや待て待て待て…まだ分からないぞ。もしかしたら魔法陣やら呪文唱える必要があるんじゃないのか?なら今はできないだろうなぁ…

よし、これについては保留だ。この世界の住人なら何か知ってるだろう。

そう割り切って他のことを考えようとして…。


『ガサッ』


「んん?」


いまなんか向こうでなんか動く音しなかったか…?気のせい?


『ガサガサッ』


本当に向こうになんかいるぞ…

もしやこの世界来て初のニンゲンさんか!?やったぜこんな早く会えるとは思わなかったぞ!

音のするほうに近づき声をかける。


「すみませーん誰かいるんですかー?」


返事は帰返ってこない。

様子をうかがいながらそろりそろりと何かがいる場所へと近づいていく。さっきよりもひどい状態までぼうぼうに伸びきった下草を掻き分けながら進む。


「くっそどんだけ荒れ放題なんだよここ」


ようやく下草から出てくると体についた草やら植物の種のようなのをはたき落とす。


「ふう、全くひでえ場所だ。人を見つける前にここを抜けたいなぁ……んでさっきの音の主はどこだ…?」


辺りを見回すがさっきからと変わらない森しか目に映らな……ん?

左の方に黒い何か動いているのが見える。のそろのそりとこっちに向かって歩いているようだ。


しかし何かおかしい。人にしては背が低くて何かもっそりとした動きで…


「おいまさかあれ…クマじゃないのか…?」


目を凝らして見ると四足歩行の黒い毛で覆われた熊がゆっくりとこちらに歩いてくるのが分かる。その大きさはまるで力士…いやそれを軽く凌駕するほどだ。


逃げよう、そう自分に向けて言い聞かせるが全身から恐怖を感じすくんで動けない。冷や汗がだらだらと出てきてゆっくりと近づいてくる黒い猛獣がスローモーションのように見える。


「嘘だろ……また…こんな気持ちを味わうなんて…な……」


どうにか一歩、二歩と足を動かしてこの場から立ち去ろうとする。しかし黒熊は逃そうとはしない。ザッという音をたてると猛烈な勢いで突っ込んできて……。


「ジャギィィィ」


気づくと真横には光り輝く≪・・・・≫残像が見える。その残像はまっすぐ伸びていき近くの木を綺麗に切断しながら消えていく。


『な、何だよ…今のは…』


アキラは本能で避けていたようだ。尻餅はついているが無傷である。


『どうなってんだよ……もしや…これが魔法か?』


黒熊は次は外すまいと至近距離でもう一度狙いを定めて攻撃を繰り出そうとしている。前右足を大きく上に上げ、アキラに向けて振りかぶる。


「ここだッ」


直前に横に転がって避けるとすぐに起き上がり、ダッシュで逃げる。逃げられたと察した黒熊は大きな咆哮で怒りを露わにすると全力で追いかけて来る。


ドスドスとその巨体は案外速いスピードを出せるようだ。


追いかけながらでもさっきの魔法のような攻撃も飛ばしてきてスパスパと左右の木が切り倒されていく。幾分かは走りやすくなるがそれは向こうも同じだ。距離を離せると思いきやあっという間に差は縮まる。


「クソッ…もうッ…追いつかれるの……かよ…ハァッ……」


十分に距離を縮めたと判断したのか、黒熊は倒木を使って大きくジャンプし渾身の一撃を決めようとする。が、その瞬間視界が大きく広がる。崖に出たのだ。

斬られるか落ちるか…仕方ねぇ…


「おりゃぁぁぁぁぁ飛っべええええええ」


アキラは大きく跳んで黒熊の攻撃を避けると、宙へ浮かび落下を……。


「あ…れ……?落ちない…?」


落ちると覚悟を決めていたアキラは、自分が空へ浮かんだままになっているのが理解できず頭の上にハテナマークを出して唖然としていた。




今回から毎週月曜の朝に更新したいと思います

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