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ブロローグ

今日は学生にとって7日振りの休息日である日曜日。いつもなら家で半ニート化してゲームしながらゴロゴロしている……筈だった。

しかし、今いるのはクーラーが効いて快適な自室ではなく太陽が容赦なく照り付けてくる山の中だ。


「何で折角の日曜日に山登りなんて行かなきゃいけないんだよ…」


そんな憂鬱な気持ちを押しのけるように、服部明(はっとりあきら)は登山道を登り続ける。

折角の休日は"行事"と言う名の強制的な登山によって見事に潰されたのだ。ここにいる誰もが同じ気持ちだろう。

運動部に所属しているので体を動かすのは嫌いなわけではないが、休日はインドア派のアキラにとっては早く家に帰りたいという気持ちしかない。


「なに不機嫌なツラしてんだよ。せっかくの山登りなんだからさ。」


話し掛けてきたのは友人の一人である安齋淳(あんざいじゅん)だ。


中々のイケメンで成績優秀、まさにこれが勝ち組というやつだ。

特に嫌われるような性格や体形ではないが、成績は中の上で顔面偏差値は平均まあ平凡に部類されるであろうアキラと並ぶと色々な面で雲泥の差である。

学校では接点のないように見える二人がなぜ友達なのか不思議に思われているらしい。


「あれ?顔に出ちゃってた?」

「出てる出てる。こんな絶好の登山日和なのにそんな顔されてるとこっちまでテンションさがっちゃうよー」


アキラと違い、休みを潰された事に不満を抱くどころか楽しんでいるようだ。

ルンルン気分でどんどん歩いていく。


「てかお前こんなクソ暑いのに楽しそうだな……」

「何言ってんだよ楽しいじゃん」

「えぇ…」


内心で『マジかよ…』と呟くが自分との休日の過ごし方を比べるとまあそんなもんかと一人で納得する。ジュンは何だかよく分かってなさそうだが放置だ。


「しっかし休憩ないのかよこれ…もう12時に近いんだからもうそろ昼だろ?」


そろそろ腹が減って来る昼頃だ。1~2時間も歩かされてる。途中の展望台がある場所で弁当ということになっていた。


「お、あれじゃね?あのちょっと開けてる場所」

「確かにそれっぽいな」


丘のように小高くなってるところへの階段を二段飛ばしで駆け上がると広場のような場所に出た。予想は的中したよう、先を歩いてた組はもう既に広がって昼を食べようとしている。


「よっしゃやっっっと休憩だああ」


ぐにゃりと曲げた体から吐き出すようにそう言うと早速座り込もうとする。


「お、あれがその展望台か。行ってみようぜ」


後ろから追いかけてきたジュンが指さす先に木組みの展望台が見える。地面から少し突き出たようなもので、高所恐怖症ならば上るのに勇気がいるようなものだ。だがそんなのは関係なしにジュンは上に乗ったいく。


「お、おい待てよー」


慌てて後を追いかけるように展望台へ上がると目の前には絶景が広がる。今まで登ってきた山や麓の町、遠くには東京の町まで見える。

近くの案内板によれば、天気がいいとスカイツリーも見えるらしい。


「すげぇなここ。こんな場所があるなんて知らなかった」

「おいあれうちの学校じゃね」

「まさかぁ~んなとこから見えないでしょ」


そんなことを言ってると点呼を取るのか、教師が集合を掛けている。


「ジュン、呼んでるし点呼行こうぜ」

「おう」


そう声を掛けられ皆がぞろぞろと集まっていく場所へと歩き始めようとした。


「ん?風か?」


突然、耳元で何かが通り過ぎたような風が吹く。

気のせいかと思い、だった……が、体はその通りに動かない。

歩く前に目の前の風景は上へと流れていく。

足元の床が音をたてながら崩れていったからだ。


『え?落ちてる?』


体を支える物が無くなったので重力に抵抗などできる筈はなく、体は崖の下に向かって落下していく。


『うそだろおい?なんかのドッキリだろ?』


周囲にいた数人も同じように落ちる。ある人は現実を受け入れられんとばかりに叫び、ある人は何かに掴まろうともがいているが無駄な努力と化している。こうなればもう打つ手は無い。


『おいこれ死ぬんじゃないのか?』


そう考えると急に恐怖心が出てき、上手く思考が纏まらなくなる。焦り混乱し、どこからか汗も出てくる気がして仕方がない。


『は…ははは……実は空を飛べる能力がありましたーとかないのかよ?……そうであってくれよ…』


気づくともう目の前には地面が見える。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


そして、地面に激突を……しなかった。

地面から白い光のようなものが現れ、その中に入り込んでいく。


『え……これは……』


周りは真っ白、まるで周りに何もない

吸い込まれてもどんどん落ちていく感覚は残っているので落ちているのだろう。

しかし よく分からないまま意識が薄れていった……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



"………………"


何かの音が聞こえて意識を戻す。


"……たは……したら……な……がほし……すか…?"


幻聴だろうか?やはり何かが聞こえるような気がする。


"あなたは転生したらどんな能力が欲しいですか…?"


『転生…したら…?』


どうやら幻聴ではないらしい。今度ははっきりと聞こえた。女のような男のような機械じみた声のような気がするが、意識が朦朧としているようであまりよく分からない。


"あなたは転生したらどんな能力が欲しいですか…?"


また聞こえるな…いったいあの声はなんだろうか?そういえばここはどこだ…?俺は今何をしたたっけ……?

確か……山登ってて…展望台上って…落ちた……?

そうか…そういや俺は崖に落ちたんだったな。ということは死んだ…?だから転生できるってことか?えっマジで?


『なら………魔法を使ってみたいし…もやりたいし…○ルトみたいに忍術もつかってみたいし……転生できるなら…色んなの…やってみたいけど……まあ無理だよな…』


"あなたの願い、聞…入れま…た……転…しま………"


マジかよ…ホントに転生なんてできるのか。夢みたいだ……




そうして、アキラはこの世界から消えた。

転生することによって……



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