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最果てのアスティリア  作者: れいろ
黒と赤の二重奏
7/7

争乱の城

それは唐突に訪れました。

現在、私の推測からカンナには地下最下層にある漆黒の剣【クロムルーシュ】と紅の銃【アカムルーシュ】の二つの警護に当たらせています。あの二つの武器は保守派の私達と敵対関係にある過激派がコルトというこの王都から南に位置する村に封印されていたものです。それは今や伝説、英雄譚ともされ世界中にある幾つもの文献に記載されているもので、かつてはあの最果てのアスティリア到達に一番近いと言われた二人の人間が持っていたとされています。


ー適合しない者が使わなければ災厄を招くと言われる武器。聖剣、魔剣クラスなんて足元にも及ばない。そんな危険な代物をわざわざ交代の見張りをあの村に置いてまで封印が解かれる機会を待っていたなんて、王都にも広まっているというあの噂は本当だということですか。

しかしあの封印は誰にも解けなかったと聞いていたのですが、いったい誰が……


「まさか、あの二人が……?」


もしそうならば、盗まれたと言っていた彼らの武器は本当にあの二つだったということに。彼らの言葉は信じたいと思いましたが、最初は何らかの方法で武器のことを嗅ぎつけて嘘を吐いていたのだと疑っていました。ですがもし彼らが封印を解いたのだとしたらー


「彼らの手にあるべき、ですね」


元々変に口出しをして過激派との溝を更に深めてしまうことを避けて、武器のことを黙認していましたがこうなってしまっては仕方がありません。


「【フィールドサーチ】」


呪文を唱えた瞬間、私の頭の中に映像が流れてきます。映像はこの城の地下最下層、そこには武器を警護するカンナの姿と、武器を手に攻防を繰り広げているあの二人の姿がありました。

やはりこの二人が封印を解き、適合したということですか。

しかしながらもう戦う理由なんて、これ以上敵対する理由もありはしません。武器は現在の持ち主の元へと帰りました。

止めに行こう、そう決めて部屋を出ようとしたところで外から激しい爆発音が響き渡ります。これは間違いなくカンナ達ではありません。


「まさか敵ですか……?」


このタイミングで何故……いえ、このタイミングだから、ですか。

過激派がクロムルーシュとアカムルーシュを手に入れたことといい、あの二人の兄妹といい、この襲撃といい、まるで誰かの手の上で転がされているような錯覚をしてしまいます。それに加え現在隣国であるウェルス国に対談に行っているお父様、お母様、お姉様が不在というのも織り込み済みでの襲撃というのも考えられます。

でも今はとにかく、現場に向かわなければ。おそらくカンナもこの音に気付いて向かってきているはずですから。





「兄さん、これはいったい……」


「襲撃者なんだろうけど、どうにもタイミングが良すぎるよなぁ」


多分この襲撃は計画されていたことだ。よりにもよって僕らが城に侵入したタイミングでというのは、少し出来すぎているような気がする。

とはいえ情報が少ない状態であれこれ考えるのは、この状況では良いことではない。今は何よりもここから無事に脱出することが優先だ。


僕の腕にぴたりと寄り添う紗凪の手を握り、戦う彼らとは真逆の方向へと走る。気付かれれば間違いなく襲われるし、戦いになる。そうなればもうこの場所から逃れることはできないだろう。ならばチャンスは今しかない。


転がる死体に目もくれず、ただ一心に最初の侵入ポイントまで足を進める。紗凪も戸惑いながらも一言も話さずに付いてきてくれて、繋ぐ手からはその不安さが、震えが伝わってきた。


ーあと、少しだ。


しかし、物事は都合良くは進んでくれないことの方が多い。良い考えより悪い考えの方が当たり、そして僕らが今まさに直面したことでもある。


突然横から現れたのはあのアーマードスーツのようなものを着た奴が三人。その手にあるのは機械めいた剣型の武器と銃型の武器。まるで元の世界であったSF映画の武器みたいだ。


「……兄さん、援護するよ」


「大丈夫なの?」


「怖いけど、何もしないで兄さんが怪我する方が怖いから」


「ああ、そうかい」


紗凪から手を離し剣を構える。敵の内二人は銃をこちらに向け、もう一人は剣を構え勢いのままに突っ込んできた。こんなのカンナさんの剣技に比べれば児戯にも等しい。

焦ることなく剣を受け流し、そのままの流れで相手の横腹に剣を走らせる。見事に当たったそれは切り裂き敵は地面に倒れこんだ。


「なっ、何故我らが帝国が誇るアダマントアーマーを斬ることができるのだ!?」


「へぇ。帝国から来たのね、あんたら」


正直スマホを使ってハッタリかまそうとした時にそれを魔導具と呼び、帝国製のものだと指摘されたことから薄々気付いてはいた。帝国とは、魔法はどうか知らないけど科学にはかなり特化している国であると。


呆気なく倒された仲間に動揺しつつも、すぐに僕らに向けて機械銃を向ける。そこから放たれたのは予想通りレーザービームで、しかし僕の後方から放たれた紅い魔力の弾丸が正面からその二つを相殺した。

その隙を見逃すことをせず、初速からトップギアで相手の懐まで入り込み迷わず相手に対して剣を振り抜く。

少しばかり深く入ったその一撃は、敵二人には充分だったようで力なく地面に倒れた。


「……一生慣れそうにないな、この感触は」


人を斬る感触。一歩間違えれば死ぬかもしれない極限状態の中で、避けては通れないと覚悟して振り抜いた時の人を斬るという感触は、思っていた以上に僕に重くのしかかった。


「兄さん……」


「心配するな。それより、もうこうなった以上敵はどんどん僕らにも集まってくる」


「やるしかないってことね」


「出来るだけ僕が斬っていくから紗凪は援護をー」


「私もやるよ」


「い、いや、でもね紗凪」


「やるってば。兄さんばかりに辛い思いさせたくないし」


「……ありがとう」


もう逃げることも難しい状態で、生きるためとはいえ人を斬らなければならない。ただ剣を構えている今でさえその感触が残っているのに、先程より重くはない。何故か、と聞かれれば間違いなく紗凪のおかげだ。

人は守りたいものがあると強くなれるみたいなことをよく漫画とかで言ってるけど、こういうことなのかね。


あらゆる方向からアーマーに身を包んだ奴らが僕らを囲むようにして現れる。剣であったり銃であったりを構えて一斉に僕らに向けて攻撃してきた。レーザービームは紗凪が寸分の狂いもなく全て魔法弾で相殺している。剣で突撃してきた奴らは、一瞬の隙も見逃さず流れるようにして斬っていく。


……なんだろうな、この感覚。剣を振るえば振るうほど、動きも剣筋も研ぎ澄まされている気がする。もしかしたらこれもこの剣の力なのかもしれない。例えば元の持ち主の剣術の記憶が、剣を使うことによってどんどん僕に投影されているとか。まぁ考えられる可能性はいくつもあるが今は好都合だ。


ー全て斬り伏せる。





いったいどれくらい時間が経ったのだろう。

斬っては来て斬っては来てを繰り返し、無限に湧いてくるような存在を相手にしていると体力よりも先に精神力が削られていく。

紗凪の顔を見ると大分疲労の色が見える。体力切れというのもあるのだろうが、おそらく魔力も限界に近付いているはずだ。

これだけの数での襲撃だ。リーダー格となる人物がいるはず。ならばそいつさえ潰してしまえばこの途方もない闘いも終結する。


「紗凪、このままやっても埒があかない。リーダー格探して潰すよ」


「そうだね。流石にもうキツくなってきたしそれが一番確実だと思う」


「ならっ……!」


前方から迫る来る敵達に対して、全力の黒の斬撃を放つ。それはこれまでとは比べ物にならないくらいの大きさで、敵達をあっさりと通り過ぎその体を真っ二つにした。


「兄さん、大丈夫?」


「……ああ。それより今のうちに中に入ろう」


「……うん」


正直気持ち悪くて仕方がないが、この状況下で紗凪に余計な心配なんてさせられないしその感情は邪魔になる。後悔するのは全部終わらせてからでいい。


紗凪を引き連れ再び城の中へと入っていく。狙いがあるとすれば考えられるのは二つ。城にある価値のあるもの、財宝を盗み出すため。もしくは王族関係者を殺すため。

この世界に来てからのマルクさんの反応、そして先程対峙した時のカンナさんの反応から王国と帝国の関係は悪く、過激派がしようとしていることから察するに向こうからも戦争を仕掛けようとしていてもおかしくはないのだ。そんな中での襲撃というのを考えると、狙いは財宝などではなく王族関係者の殺害。

王族達の部屋は向けて上へ上へと足を進める。途中襲い来る帝国兵は例外なく切り捨て、その姿を見てか王国の兵士は僕らに攻撃をしてこないどころか助太刀してくれる時もある。これは非常にありがたい。


どんどんと進んでいき、一番帝国兵が多い三階に辿り着く。おそらくこの奥に王族の誰かと帝国兵のリーダー格がいるはずだ。にしても……


「今の状態でこの数はキツイな」


「強行突破かけれるほど体力に余裕があるわけでもないしね。どうするの、兄さん」


「せめて出来るだけ少ない手数で決めれればいいんだけど……」


廊下の幅は人が横に十人並べるほどの広さ。黒の斬撃を飛ばせば一気にいけるかもしれないが、幅ギリギリに合わせて放たないと小さすぎて当たる人数が少なくなるか、大きすぎて途中壁に阻まれて勢いを失い霧散してしまうかもしれない。そもそもその斬撃のことですらよくわかってはいないんだ。確実ではないことをこの状況で安易に出来るほどの余裕は僕らにはない。


その瞬間、同じフロアの奥の方で男の悲鳴のようなものが響き渡った。それは次々と数を増やしていき、ちらりと奥へ目を覗かせると帝国兵が何人も地面に崩れ落ちている。


ー騎士団か?


まぁなんにせよこれは都合がいい。こちら側にいた帝国兵も突然の事態に、悲鳴のある方へと向かっているようだ。

紗凪の手を引き、その後を一定の距離を空けながらついて行く。その間も途切れることなく響き渡る帝国兵の声と地面に倒れる音。少なからず自分達の味方であることは間違いない。合流して上手く仲間になれればこの状況を打破できる可能性が高まる。


奥へ進んでいくと、段々とその現場が露わになっていく。そして完全に視認できる距離まで来て見えたのは、次々と帝国兵を斬り伏せるグレセント騎士団第一部隊長であるカンナさん姿だった。

そうか、セレスティア姫。あの時、彼女の名前を呟いて僕らを見逃してまで上に戻ったカンナさんだ。真っ先にここに来ているのは当たり前か。


「貴様ら……っ!やはりセレスティア様の命を狙っているのか!?」


「なっ、違いますって!僕らは……っ!?危ない!?」


僕らの姿を見つけたカンナさんは先程と同じように敵意剥き出しで睨み付けてくるが、すぐその後ろで帝国兵がカンナさんに剣を振り下ろす。

僕が唐突に叫んだことで後ろの攻撃に反応したカンナさんは剣を躱し、その帝国兵の首を迷わず落とした。その光景に吐き気が襲いかかるがなんとか耐えてカンナさんに近付く。


「とにかく、僕らはこの帝国兵とは関係ないです。ていうかここに来るまでに何度襲われたことか」


「ならば何故ここにいる?セレスティア様の部屋がこのフロアにあることは知らないはず。仮に知っていたとしても何の用があってここに来た?」


「巻き込まれた以上、リーダー格を潰すほかこの事態に収集がつかないと判断したんです。そしてこの状況で奴らが狙うとするならば王族。だからここに来たわけです」


「……それを信じろと?」


「それはカンナさんが判断してください。今は状況が状況ですし協力しましょう」


「……もし少しでも変な動きを見せたら殺す」


なんとか、一時的にとはいえ協力体制をとることが出来た。騎士団最強と謳われるカンナさんがいれば勝率も安全性も格段に上がる。敵としては厄介そのものだが味方に付けばこれほど心強いことはない。

カンナさんを先頭にし、その後を僕と紗凪がついて行く。他の部屋とは少し装飾が違う部屋の扉を開けると、そこにはセレスティア姫ともう一人、アダマントアーマーに身を包んだ者がいた。

しかしそのアーマーは今まで相手にした帝国兵のものとは違い、大きさと装飾、更には手にある武器も全く違う強化版みたいな仕様だ。ってことはつまり、こいつが今回の件のリーダーか。


「っ!?カンナ!それにお二人も!」


「セレスティア様から離れろ賊めが!」


その言葉に振り返る敵は、こちらを見るなり機械の大剣の切っ先を僕らに向ける。アーマーのせいでその表情は伺えないが、肌にチクチクと感じるこれはおそらく殺気。

むこうはもう殺る気満々、ってか。


「グレセント騎士団第一部隊長か。セレスティア姫の専属の騎士も務めるお前がここに来ることは想定内だ。が、そこのガキ二人はちげぇ。何者だ?」


「ただ巻き込まれただけの一般人だよ」


「……ふん、まぁいい。俺達の狙いはセレスティア・グレセントのみ。そのために他の王族がいないこの機会を狙ったんだからな」


これまた丁寧に説明してくれる奴だな。まぁでも、それはこいつの余裕の現れなんだろう。騎士団最強のカンナさんを前にしてこの態度、実力がわからない身の程知らず、ってわけでもないらしい。イレギュラーな僕と紗凪がいても崩さないその態度は、それでも目的を遂行できるということだ。おそらくそれだけの力がこいつにある。


敵の目的をはっきりと聞いたカンナさんは、もう聞くことはないと言わんばかりに敵の懐に斬り込む。そのスピードは僕らでは視認することが出来ず、多分身体強化系の魔法を使っているのだろう。

しかし鋭い一撃は難なく敵の大剣に防がれ、更にはその一瞬出来た隙をついて大剣はカンナさんの頭目掛けて横に振り切られる。

体制を低くすることで攻撃を躱したカンナさんの片手に緑色の光の粒子が急激に収束し始める。【エアロブレイズ】というカンナさんの言葉と同時に放たれた魔法は、まるで風の剣撃のようになり敵に容赦なく全てが当たる。


「あ?なんだよこれ何かしたのかぁ?」


わざとらしく呟く敵に、カンナさんは咄嗟にバックステップで距離をとる。驚きに染まるカンナさんの目に映るのは、至近距離であんな強力な魔法を受けたにもかかわらず、無傷でその場に立ち尽くす敵の姿だった。


ーやはりあのアーマーか。


そもそも兵士である奴らが素人同然の僕が放った黒の斬撃を躱せないはずがない。なのに躱さなかったのはあのアーマーが魔法を防ぐことが出来たから。もっとも僕の魔力での黒の斬撃や、紗凪の魔力弾は密度や威力の影響なのかアーマーは意味をなさなかったが、見た目からしてこれは他のアーマーよりも強い強化版。正直カンナさんのあの凄い魔法でも傷一つつかないのなら僕らの魔力技でも意味がないかもしれない。


「紗凪!」


「了解!」


しかしかといって諦めるわけにもいかない。全力で魔力を込めて渾身の黒の斬撃を敵に向けて放つ。それと同時に後ろから紗凪も限界まで魔力を溜めてチャージショットの要領で魔力弾を放つ。ほぼ一緒に当たり激しい爆発音と目を覆うほどの煙に確かな感触を得た。なのにー


「ははっ、マジかよ……」


カンナさんの時と同様、そこには無傷で佇む敵の姿が目に映る。正直かなりの自信があった。それくらい今の僕と紗凪の攻撃は強力なものだったと思う。でも実際には正面からまともに喰らっても、まるで何事もなかったかのようにその場に立つそいつに僕は恐怖を抱いた。

そして後ろには片膝をつき息も荒い紗凪。どうやら今の一発でかなり堪えたようだ。ここに来るまでと今の攻撃を合わせても、もう魔力が限界なのだろう。実際僕もここに来るまで何発もあの黒の斬撃を放っていて限界に近い。気を抜けば今にでも倒れてしまいそうだ。


「んじゃあ次はこっちから行くぜ」


まずい。そう思った瞬間のことだった。目の前から消える敵。しかし左から急に殺気を感じて咄嗟に剣で防御の態勢をとると、急に現れた敵の大剣による一撃をモロに喰らってしまい、防ぎきれず勢いよく壁へと吹き飛ばされた。壁をぶち抜き力なくその場に壁を背にして倒れる僕は、かろうじてある意識を敵の方へと向ける。


「さてと、次はお前だ嬢ちゃん。大人しくここでくたばりな」


「……っ」


やばいやばいやばいやばい。紗凪が危ない。なのに全然体が動かない。駄目だよ、駄目なんだ。僕が守らないと、紗凪は、あいつ(・・・)は僕が守らないといけないんだ。くそっ、声すら上手く出ない。流石にこんな戦いとは無縁の世界にいた僕じゃあ今の一撃は充分すぎるほど威力だったのか。


「【シャイニングアロー】!」


「っ!?」


セレスティア姫の呪文とともに無数の光の矢が敵に向かって降り注ぐ。しかしかなりの数が当たるもアーマーにはやはり傷一つつかない。

その攻撃の後、間髪入れずにカンナさんの剣撃が敵を襲う。素早く鋭く、的確に放たれるそれは敵の大剣で見事に防がれる。どうやら魔法攻撃には強くても物理攻撃には効果を発揮しないみたいだな、あのアーマーは。でもそれを補えるほどの剣技を持っている。

直接カンナさんとやりあったから分かるけど、カンナさんの剣撃は並の使い手が捌けるようなものじゃない。それなのに焦り一つなく全てを防ぎきっているのはその技量故だろう。


魔法も剣技も効かないとか、ちょっとチートすぎやしませんかねぇ。

僕の中には焦りばかりが募る。正直手詰まりすぎて、この状況をどう打破すればいいのか思いつかない。

そう考えている間にもカンナさんと敵は嵐のごとく剣を交わらせており、お互い一撃も与えられない、拮抗した状態が続いている。


ちらりとセレスティア姫に視線を向ける。取り敢えず今は向こう側にいるセレスティア姫と合流して固まる方が優先的だろう。奴の狙いはセレスティア姫の命だ。カンナさんとの打ち合いをしているが、いつ隙を突かれてセレスティア姫に攻撃するかわからない。

そうと決めれば紗凪の手を引きダッシュでセレスティア姫の前まで移動する。

しかし敵はこちらが合流したのを確認しただけで何も仕掛けては来ないどころか、未だに落ち着いているように見える。ああ、そうか。こうなったところで一緒に屠れるだけの力が自分にはあるということですね。


「春翔、紗凪。もしかして私を助けに来たのですか?」


「まぁそれもあるけど。関わった以上親玉潰さないとここから出ることすらできないなぁ、と」


「そうですか。魔法も効かず、剣技もカンナと同レベル。正直な話、こちらが不利な状況です」


セレスティア姫の言う通りだ。補助系の魔法は使えても、相手に直接的に作用するような魔法は使えない。魔法での攻撃もまた然り。かといって剣技で勝つにも、相手はカンナさんと互角に打ち合っている。今はまだ使っていないが相手は魔法を使えるだろうから、剣技との合わせ技になると大分こちらが不利になる。


「今のうちにどうにか打開策を出さないと……」


「……兄さん」


この状況を覆す策を考えようとすると、横にいた紗凪から声がかかる。その表情は前の世界でも見慣れていた、何かを思いついた顔。

僕とセレスティア姫の顔を確認してから、紗凪はにっ、と笑いその口を開いた。


「私に考えがある」

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