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創地帝妃物語  作者: 宮月
44/46

44.バカップルは盲目的な恋の最中

「スイ様…。」

 今日は婚約の儀なるモノが執り行われる当日です。

はっきり言って、身体が怠いです。そう、気怠いのです。何故かは聞かないでください。えぇ、昨夜、身体や声帯を酷使させられた結果です。何に使ったかも聞かないでください。そうです、そうですよ。アルのせいです。私に拒むという高等技術が身に付いていれば、もっと爽やかに婚約の儀の緊張に悩まされていたでしょう。お手柔らかに、その一言を声に出す余裕があれば、こんな恥ずかしい想いをしないで済んだはずです。

「……。」

 朝一番、半分睡眠から抜け出せずにいた私をあんな手やこんな口、いや、色々な技、とにかく、アルに起こされ、再びなすがママならきゅうりがパパ状態で身を清められ、他にも…。

まぁ、いい。とりあえず着替えを済ませ、朝食をいただきました。ほう、朝から大変でした。はい。

 そして、今です。やっと今の状況の説明が出来ます。食後の珈琲を飲み終わると同時にシェリルが登場。再びあれよあれよと衣裳部屋にラチられました。それでせっかく身に着けたばかりの服を剥ぎ取られ、シェリルがその服を持ったまま、凍り付いてしまったのよ。私の身体を見て。不思議に思った私も自分の身体に視線を落としましたよ、もちろん。えぇ、私も凍り付きました。叫ばなかった自分を褒めたいくらいです。身体中に見事な赤い痣の小花が咲き散らばっているのですよ。それも首から下、数えたくない程。

「さすが王子です。首には印がありませんね。」

 アル、褒められているようですよ?

「スイ様、御身体は大丈夫ですか?御腰が怠いようでしたら、マッサージをいたしますが?」

 シェリル、本気の心配顔はやめてください。

「大丈夫。アレクはアフターケアも万全よ。」

「クォーツ?」

 突然の登場はやめて。クォーツ、びっくりするのよ。

「朝、お風呂上りに、全身マッサージしてあげていたわよ。まぁ、再び雪崩れ込みそうになったのは、どうにか踏み止まったみたいだけど。」

 どうして、知っている?その前に後半は余分だろう。

「そ、そうでございますか。」

 シェリル、笑みが引き攣っていますよ。

「スイ様、王子は体力が人とは思わぬほど、有り余っております。」

 おいおい。

「もし、御身体がお辛いようでしたら、私から、いえ、フランツからも、いえ、皆様からも注意いたします。ちゃんとおっしゃってください。あっ、いや、仲がおよろしいのは、とてもとても良い事なのでございます。でも、限界を超えるようでしたら。」

「大丈夫よ。確かにスイの体力は人並み以下だけど、頑丈な作りしているし、帝力で補えるから、心配ないわよ。」

 どうして、クォーツが答えるのよ。返事をするべきなのは、私なの。

「スイ様。」

「ありがとう、シェリル。もしもの時はお願いね。」

「はい、スイ様。」

 確かに、気怠い感は拭えないけど、辛くはないのよね。アルの愛かしら?って、私、何を考えているんだ?

「この様な格好もよくお似合いですね。」

「はい?」

 私がぼんやりしている間に、仕事人シェリルは、着替えさせてくれていた。目の前の鏡を見ると重臣服と同じデザインで白。肩から下がっているマントも白。

「これは式典用の重臣服です。そして、白いマントは王族に準ずる方のみ着用が認められています。」

「私、てっきりビラッビラのドレスだと思っていたけど。」

「もちろん、婚姻の儀ではウェディングドレスを着ていただきますよ。でも、今日は婚約の儀ですので、このスタイルが決まりなのです。」

「こっちの方が動き易くていいけど。」

「まぁ、スイ様ってば、その様な事。」

 笑っていますが、これが私の本音よ、シェリルさん。

「では、鏡台にお願いします。」

 仕事人シェリルの手は、魔法が使えるのですか?そんな風に聞きたくなる程、手際よく私の顔に薄化粧が塗られ、髪がセットされていきます。

「この様な感じでよろしいでしょうか?」

 これで文句が言える人がいるなら出て来て欲しい。いや、元の造りは無視しても本当に凄いわよ。皮膚呼吸出来ているのに、この出来は、私にはムリ。

「あの一つ聞いてもいい?」

「どうぞ。」

「パーティーの時、化粧してもらったよね?」

「はい、させていただきましたけど?」

「あの時、どうして皮膚呼吸出来なかったのでしょう?こんな凄い技術を持っているのに…。」

「あぁ、あの時でございますか。パーティー用の重い白粉を使用させていただいたからですよ。」

「重い白粉?」

「はい、特別製なんです。でも、これからはもう少し軽めの白粉を使わせていただきますね。スイ様のお肌には軽めでも大丈夫そうですし、スイ様自身にもその方がよろしいみたいなので。」

「ありがとう。よろしくお願いします。」

「はい、承りました。さぁ、そろそろ、王子が痺れを切らす頃ですね。リビングへ行きましょう。」

「はい。」

 アルは何の痺れを切らすのだ?


「心配だ。」

「はい?」

 ドアを開けると満面の笑みを浮かべたアルに出迎えられました。だけど、すぐに眉間に皺を寄せ、困り顔に変わってしまう。

「こんなに綺麗だと重臣達が心奪われてしまうだろう。」

「…。」

 アル、何か間違ったモノが目に映っておられませんか?それとも脳に行く情報が間違っているのだろうか?

「恋は盲目。」

 ぼそりと呟いたのは、やはりクォーツ。私の肩の上で苦笑を零しております。

「スイはルックス重視ではなく、このすっとぼけた性格と表情で、人を惹き付けるのよ。だから、一目惚れされる事はほとんどないから安心して。」

 時々、皆の言っている事が理解出来ない。私の事なの?

「そうか。」

 アルはクォーツの言葉に納得したらしいけど…。

「あの、アル。」

 私と同じ格好にしたアルは、物凄く格好良い。美丈夫って、アルみたいな人?それに落ち着いた優しさがあるし、王子って身分もある。

「どうした?粋晶。」

 くっ、笑顔が眩しい。

「いいの?あの、私と…。」

「粋晶が良いと言っただろう。昨夜も今朝も動きたくなくなる程、伝えただろう。」

「でも、あの、アル、格好良いし、優しいし、モテそうだから、私なんかじゃ…。」

「もう一度、ベッドに連れ戻してほしい?」

「あ、いや、そうじゃなくて。」

 顔が熱いです。私、発火してしまいそうです。でも、不安なの。

「俺が愛しているのは、粋晶だけだ。俺が粋晶に傍にいて貰いたいんだ。」

 信じていいんだよね?夢じゃないよね?現実なんだよね?アルにぎゅっと抱き付くと、きつく抱き返してくれる。ぬくもりが私を落ち着かせてくれる。

「不安になる必要はない。不安になるな。」

「バカップル。」

 アルの力強い私を支えてくれる声とクォーツの呆れ果てた声が同時に耳に届く。私は、アルの声を心に留め、ぬくもりに寄り添った。


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