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創地帝妃物語  作者: 宮月
43/46

43.これから

 第二会議室には、徒歩で移動した。

エレベーターがある事に驚き、広過ぎる事にげっそり。だって、隣の建物だからすぐと言うわりに五分以上歩いたわよ。瞬間移動の便利さを痛感したわ。

「トントン。」

 フランツを先頭に入った第二会議室なる場所は、本当に普通の会議室。長机に折畳み椅子が並んでいるだけの殺風景なお部屋。もっと役員室とかに置いてある様な高級な椅子とテーブルとか。出席者全員立体映像、幽霊の様な透けているSFとかに出てくる会議が出来る場所とか。色々な想像をしていたのに、無駄だったのね。意外に現代の地球と変わらないかも?

「王子とスイはこちらへ。」

 フランツに言われるままに長方形に並べられたテーブルの短い方に並んで座る。目の前にはアル父。右側に私の両親とキヨちゃん。左側にフランツとセイ。私たちの後ろにカツキとルーイが立った。

「では、さっそく始めたいと思います。」

 進行役はフランツらしい。

「まず、明日、王子とスイの婚約の儀です。午前十時より重臣立会いの下、婚約式を執り行います。そして、昼食を挟み、国民にお披露目がございます。こちらは映像中継が創地両帝国で流れます。

「映像中継?」

「地球で言う、テレビ中継ですね。」

「へ?」

 テレビ中継?私には一生縁のないと思われた、いや、あったとしても何かの生放送に映り込むくらいと思っていたのに。どうしよう?って、仕方ないのか?

「結婚の儀は、半年後を予定しております。その半年の間に、スイには王家や帝国について、マナー等、色々学んでいただきます。もちろん、それぞれ教師を付けさせていただきますので、ご心配なく。あっ、あと、この勉強にはセイも参加していただきます。その間、セイは王宮で生活していただきますので、ご覚悟を。」

 覚悟が必要なのか?そんなに厳しく勉強するの?私の頭は大丈夫かしら?しばらく使っていないから、埃被ってない?動くの?

「その後、セイは、どうしたしますか?こちらでお仕事を探されるのですよね?」

「そのつもりです。スイの傍で支えてやりたい。その様な仕事に付きたいのですが、何もわかりません。教えていただけますか?」

 あっ、セイの顔付が変わった。仕事モードの真剣な瞳だ。

「では、重臣試験を受けてください。それまでは従者、いや、帝子妃仕(ていしひし)見習(みならい)扱いでよろしいですね?一番、安全で心強いですよね?帝王。」

「あぁ、そうだな。」

 で、決定らしい。

セイ、ずっと傍にいてくれるんだよね。ありがとう。

「胡晶とキヨは、どうする?」

「私は、休職扱いでした役に復帰させていただければ、幸いです。」

「あぁ、もちろんだ。胡晶以上のコック長はなかなかいない。副コック長も胡晶が復帰するからと、コック長の席は開けて置いて欲しいと言ってなぁ。」

 へぇ、お父さんってそんな凄いコックなの?初めて知った。

「キヨはどうする?」

「私も休職扱いからの復帰を望みます。」

「そうだろうな。」

 キヨちゃんとアル父の口元が、にやりと歪んだ。

一体、キヨちゃんは何の職なの?

「あの、キヨちゃんは何をしていたの?」

「広報。ついでに、副職として肖像画家もしている。」

「…だから、絵が上手いのね。」

「まぁな。」

 ううん、何か企んでいる気がするんだけど、あの口元が。

「あっ、キヨちゃん。まさか、スイを題材に漫画を描くつもりじゃ。」

「ピンポーン。さすが、セイ。わかっているじゃないか。せっかく創地帝妃となったスイの傍にいたんだ。その成長を世の中にお伝えするのも広報の立派な仕事だからな。」

 嫌な汗がつつっと背中を伝っていく気がする。

「キヨちゃん。」

「わかっている。ちゃんと世に出す前に、スイに確認する。さすがに恥ずかしくて、公務に出られないとなったら困るからな。」

 そんな恥ずかしい内容にするつもりだったの?復帰は考え直してもらった方がいい?いや、ダメだ。野放しにした方が危ない。

「絵コンテだっけ?それを先に見せてね。」

「あぁ、確かに。キヨちゃんの絵、キラキラ少女マンガしか見た事ないし、スイが薔薇背負っていたら、笑えるし。色んな意味で。」

 ポワーンと、私の頭に浮かんだのは、もちろん、出会った時の薔薇背負いウィル。あの薔薇を私が背負う?いやぁ、考えないでおこう。あぁ、そう言えば、ウィルは薔薇の棘が刺さったりしなかったんだろうか?あぁ、ダメだ。笑ってしまう。

「クッ。」

 私が口元を押さえ、笑いを堪えていると、隣から短い笑い声。やっぱりアルも笑うよね。って、実際あれを目にしているフランツと私の両親も笑いを堪えているよ。ここで話題を変えなきゃ、爆笑してしまいそう。

「お母さんは、どうするの?」

 声に笑いが混じってしまった。まぁ、いい。

「私は専業主婦よ。この空の丘の下に、前に住んでいた家があるのよ。」

「そっか。」

「さて、そろそろ、終わりにしたいと思いますけど、何かありますか?」

「追々で、大丈夫だろう。」

「そうですね。では、これでお開きに。あぁ、キヨには前に住んでいた宿舎の部屋が残してありますので、そちらに。あと、胡晶とキヨは、明日は家族としての参加で、復職は明後日からでお願いします。それと今日、挨拶だけは各職場にしていってください。解散。」

「ありがとうございました。」

 再び、試合終了を彷彿させる挨拶が交わされた。


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