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創地帝妃物語  作者: 宮月
42/46

42.アルの幼馴染

「では、着替えて、一時間後に第二会議室に集合してください。」

「はい。」

「セイは、場所がわからないでしょうから、五十分後に王子とスイの部屋に。」

「わかりました。」

 解散らしく、アル父を先頭に、私の両親、キヨちゃん、セイ、フランツと部屋を出て行く。

「戻るぞ、粋晶。」

「うん。」

 私の返事より早くアルに抱き上げられ、部屋の外へ。廊下には急いでドアに背を向けたと思えるルーイとカツキの姿。肩が揺れているので、笑っているのだろう。

「ルーイ。」

「はい。」

 アルの呼び掛けだけで欲する物がわかったらしく、服が後ろ向きのまま、差し出される。

「ほら、粋晶。」

「ありがとう。」

 服が私の胸とお腹を隠す様に掛けられた。

本当に優しいアル。

「いいぞ。でも、あまり見るなよ。」

 肩を震わせたまま、カツキとルーイが振り返った。

あの、口元、完全に笑っていますよ。噛み殺し切れていませんが?

「また、飛びますか?」

「当然だ。」

「当然、ですか?」

 ルーイが耐え切れなくなったのでしょう。ぶはははと大きな笑い声をあげた。その後を追うようにカツキも声を上げ、笑い出した。

「さっさと戻るぞ、粋晶。」

「はい。」

 アルは笑っている二人を一瞥して、さっさと瞬間移動。コイツ等の相手はしていられんとばかりの表情。

それにしても何がそんなにおかしいのだろう?

「スイ様、御着替えの準備が出来ております。こちらへ。」

「あ、あの、シェリルさん。」

 部屋の真ん中、フワッフワのソファーの前に到着すると、あれよあれよという間に、シェリルさんに隣の部屋に連行されました。

「どうなさいました?」

 にっこり笑顔を向けられ、言いたかった事が綺麗さっぱり消え去りました。

すみません、何でもございません。

「あっ、スイ様。後日、スイ様付きの侍女を四人紹介致しますね。もちろん、私が中心にスイ様の傍に仕えさせて頂きますけど。」

「私付きの侍女?」

「そうでございます。創地帝妃様の上、王子の婚約者様なのですから、当然ですよね。」

 当然なのか?あっ、でも、ここで私が渋るとか出来ないよね。この人達も仕事なんだもん。色々大変そうだけど、慣れるしかないよね。

「アルにも侍女がいるの?」

「アレク王子には従者、男性が五人付いております。」

「こんな風に着替えとかを?」

「そうでございますね。」

「あのぉ、シェリルさん。ずっと言いたかったんですけど、私に敬語を使わなくてもいいですよ。それとスイと呼んでもらえると、嬉しいの、ですが。」

 だんだん声が小さくなってしまった。気のせいか、シェリルさんの笑顔が怖い?

「ダメです。私達は王家スカイ家に仕えているのです。スイ様もその一員になる御方。創地帝妃様とお呼びしなければいけない処をスイ様と砕けてお呼びしているのですよ。それ以上の譲歩は難しいですね。もちろん、他の使用人も同様ですよ。」

「そう、ですか。」

「スイ様、これが王家の一員になるために必要な事です。」

「わかりました。あの、私、これからもわからない事だらけですので、よろしくお願いします。」

「もちろんでございます。あっ、あと、シェリルとお呼びくださいね。敬称は付けてはいけません。」

「はい…。」

 私、これから大丈夫かしら?ううん、大丈夫。だって、私、アルと一緒にいたい。頑張らなきゃ、と私が自分に力を入れていると、着替えが終わり、鏡台の前に座らされていました。さすが仕事人シェリル。

「スイ様は、御肌も御髪も御綺麗なので、少ししか弄りませんでしたけど、よろしいですか?こんな感じで。」

「御綺麗?」

「はい。とても御綺麗ですよ。」

 初めてではないでしょうか?こんな風に身内以外で褒められるの。何かむず痒い。

「スイは全体には可愛らしいけどね。」

 今まで大人しかったクォーツが、鏡台を覗き込みながら口を開いた。

「か、可愛らしい?私が?」

「あっ、ごめん。スイはそんな風に面と向かって言われないから、気付いてないんだよね。わかってないのよ。」

「はい?」

「あぁ、ごめん。パニックてるね。」

 はい、確かにパニックしています。今までまともな彼氏もできずに、モテた記憶もない私よ。可愛いとか綺麗とか言われても、ねぇ。

あぁ、そっか。シェリルもクォーツも身内みたいなモノか。それならそんな錯覚があっても不思議はないな。

「また、ヘンな考えで落ち着いたみたいね。」

「何?クォーツ。」

「いいえ。何でもございません。ほら、アレクが待っているよ。隣に行こう。」

「あぁ、そうね。」

「お茶の用意を致しますね。もう少しだけお時間がありますものね。」

「ありがとう、シェリル。」

「いいえ。」

 隣の部屋に行くと、アルとカツキ、ルーイが談笑している。入ってきた私に気付き、アルが立ち上がり、真っすぐこちらへ。

「よく似合う。」

「あ、ありがとう。」

 にっこり微笑まれた上、お褒めの言葉をいただき、顔が熱くなるのと照れるのは仕方ないよね?

「あの、アレクが。」

「女性に、に、似合うなんて。」

 息もきれぎれの声に続き、笑い声が部屋に響き渡りました。カツキとルーイが、大爆笑しています。ソファーから落ちそうな勢いで、膝を叩いたり、お腹を抱えたり。

「あの、アル?」

「あぁ、あの二人は幼馴染ってヤツだ。気にするな。」

「何で、あんなに笑っているの?」

「スイ、そんなのは決まっているじゃない。」

 クォーツがにょきっと顔を出して、わからない私がヘンだと言わんばかりの顔。

「何?」

「もう、本当に鈍いんだからぁ。」

「はい?」

「説明してもいいかしら?アレク。」

「…好きにしろ。」

アル?顔が赤くないか?一体、何だと言うんだ?

「今まで女性を遠ざけてきた、あの(、、)アレクがスイにはデレデレなのよ。それを幼馴染として近くで見てきた二人が、笑いたくなるのは当然でしょ。」

 あぁ、そっか。アル、女性アレルギーなんだよね。

「クォーツ。でも、アルはデレデレなんてしてないわよ。」

「しているわよ。パーティーの時、見たでしょ?あの紫ドレスの人には、冷たぁい視線だったじゃない。真正面から、あの瞳を見て、凍り付かない人は、ず太過ぎる人ね。」

 まぁ、確かに冷たいかなとは思ったけど、それ程たった?

「でも、スイには、甘々ラヴラヴ光線全開発散中でしょ。」

 甘々ラヴラヴ光線?ちらっとアルの顔を見上げると、無表情を作り出している。

「本当?」

「あぁ。」

「私だけ。」

「当たり前だ。」

「嬉しい。」

 アルにぎゅっと抱き付き、嬉しさを表現。アルも背中に手を回し、抱き返してくれる。こうしてくれるのは、私だけなんだよね。

「スイ、アレク。ラヴラヴオーラ発しているなよ。」

 真横からセイの声が聞こえ、ゆっくりアルのぬくもりから解き放たれる。少し淋しい。

「セイにもいつも抱き付いているでしょ。スキンシップよ。」

「いつも?」

 シェリル達三人の驚きの声が聞こえ、振り返った。あっ、いたの忘れていた。

「はい、はい。そのヘンにしてください。第二会議室に移動しますよ。」

 学校の先生かと突っ込みたいフランツの声。

「はぁい。」

 こちらも聞き分けの良い生徒の様なお返事をして、立ち上がった。

あぁ、騒ぐつもりはないけど騒いでいたら、お茶を飲み損ねちゃったよ。まぁ、コミュニケーションは大切だから、いいわね。


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