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創地帝妃物語  作者: 宮月
37/46

37.我が家

「スイ!」

 地球までの移動、私は一人でも大丈夫と言ったが、あっさりアルに抱き上げられてしまった。『慣れるまでは不安だ』と言い張って、いつものようにお姫様抱っこされるが、妙に照れ臭い。

「セイ。」

 庭の移動用石に辿り着くと、飛び込んで来たのはセイの声。アルは、私の行動がわかるらしく、地面に降ろしてくれる。それと同時にセイにきつく抱き締められた。

アルとは違うけど、安心出来るぬくもり。

「心配したんだぞ。」

「ごめんね、セイ。」

「血まみれのアレクに抱き上げられたスイを見た時、心臓が止まったんだ。駆け寄ってみたら、寝息立てているし、それなのに、目を覚まさないし。」

「ごめんね。でも、大丈夫だから。」

「うん。クォーツに説明されたよ。嫌と言うほどね。」

 肩に乗っているクォーツが、私の頬を叩く。

お礼の催促か?

「ありがとうね。クォーツ。」

 偉そうに踏ん反り返り、満足そうに頷いている。

「スイ、おかえり。」

 セイと身体を離すと、微笑みを零す両親の姿。

「ただいま。お父さん、お母さん。」

 お母さんにぎゅっと抱き付くと、お父さんも優しく肩を叩いてくれる。

「スイが無事でよかった。」

「心配したんですよ。」

 ウィルとカスパーも笑ってくれる。さすがに抱き付かなかったけど。

「心配させやがって。バカスイ。」

 次に現れたのはキヨちゃん。笑いながら、デコピンしてくる。地味に痛い。

「ごめんね。」

 あれ?謝ってみるけど、どうして、クォーツを肩に乗せたままなのに、驚かない?もしかして、キヨちゃんって帝国の人なの?


「申し訳ありませんでした。」

 私がキヨちゃんの疑問に頭を使っていると、アルの声。

「私が付いていながら、粋晶を危険な目に遭わせてしまい。」

 アルが直角に頭を下げている。

えっ?どうして、アルのせいじゃないのに。

「ち、違うの。アルのせいじゃない。アルは私の命の恩人でしょ。アルが庇ってくれなかったら、私、死んでいたかもしれないんだよ。」

 ぎゅっとアルに抱き付いた。抱き付きながらも、涙が零れていく。

あの時の怖さが一気に蘇ってくる。

「アレク王子。頭を上げて、その泣き虫スイを泣き止ませてください。泣かせているのは、貴方が原因でしょう。」

 お、お父さん?

「ごめん、粋晶。」

 慌てる余裕もなく、アルに抱き締められてしまった。

「アルのバカァ。痛い思いをしたのは、アルでしょ。謝るのは私なんだよ。それなのに、謝るなんて違うでしょう。」

「悪かった。」

 ポンポンと私の頭頂部を叩き、、涙を拭ってくれる。そして、微笑。

ず、ズルい。そんな顔されたら、嫌でも涙は止まるでしょう。

「ほぉ。」

 涙を拭ってくれるアルの指が止まる。私の頭も冷水を浴びた様に冷静さを取り戻す。そんな威力を持った声を発したのは、セイとキヨちゃん。

「ボッ。」

 そんな音がしたかもしれない。身体中が熱くなる。多分、顔は茹でタコに負けないほど赤く染まっているだろう。

「ほら、中に入るぞ。」

 お父さんの声に皆がさっさと家の中に向かっていく。

助かった…のか?セイとキヨちゃんから羞恥という言葉攻めから逃れられたんだよね?

「粋晶。」

「うん。」

 アルの声が頭上から降ってきて、ちょっと恥ずかしいけど、私もアルを見上げて、小さく頷いた。歩き出すと、手を握ってくれる。

「あの、アル。」

「ありがとう。」

「私こそ、ありがとう。」

 照れ臭いけど、私、幸せです。


「うん?」

 リビングには九個のグラス。中身はコーラだ。珍しい。

「あれ?セイ、会社は?あと、お店は?」

「あぁ、俺、休み。明日行って、退職だし。多少、荷物の整理とかあるし」

「午前中だけ、キヨに頼んだ。」

「キヨちゃんと言えば、どうして、クォーツを見ても驚かないの?」

「あぁ、俺の従弟だからな。」

「はい?」

「本当の年齢は八十三でいいんだよな。」

 サラッと言い退けたけど、驚愕よ。

「ど、どうして、キヨちゃんは?」

「あぁ、最初、遊びに来ているだけだったんだけど、スイに惚れたとか言い出して、こっちに住み着いちゃったんだよ。」

「ふへぇ?」

「ロリコンだな。」

「ロ、ロリコン?」

 何で皆、平然としているの?どうして、セイさえ驚かないの?

「でも、安心しろ、スイ。お前の幸せな姿を見ていられるだけで幸せだと言っているから、過去も未来も手出しする事はないだろう。」

 …おかしいよね?キヨちゃんも皆も。お父さん、その前にキヨちゃんを止めてよ。

でも、本当なのかしら?冗談だよね?

「まさかとは思ったけど、キヨちゃんもそうなんだ。完全ロリコン。だって、初めて会ったのって、六歳くらいだったよな?」

 セイ、それは冗談ではないと、私にダメ押ししています?

キ、キヨちゃんが私を好き?そりゃあ、お兄ちゃんみたいで好意はあるけど、私が好きなのは…。

 ゆっくり顔を上げ、アルに視線を向けると、バッチリ目が合ってしまう。

ど、どうしよう。アル、ちょっと不機嫌そうな気がするし、目を逸らすのも不自然だよね?

「誰がロリコンだ。」

 リビングのドアが開き、腰に手を当てて仁王立ちの偉そうなキヨちゃん登場。

うわぁ、私、どんな顔をすればいいの?

「俺はスイの笑顔に惚れたから、見守る兄になると言っただけだ。」

 あぁ、やっぱり、、お兄ちゃんじゃない。もう、お父さんもセイも言っている事が違う。ううん、多分、私をからかって楽しんでいたんだろうな。

「だから、俺もスイに付いて行くから。セイだけだと不安だし。」

「何で俺だけだと不安なんだよ。」

「セイだからなぁ。それに一人より二人。」

「でも、キヨちゃん、漫画家は?」

「引退。金の為にやっていただけだし。」

 …疲れた。こっちに帰ってきて、数十分しか経っていないのに。

「ピンポーン。」

 お客様がいらした合図。

「はぁい。」

 騒いでいる人達は当てに出来ない。気付いていないみたいだし。まぁ、いつもの事だ。私がお店に出ますよ。皆、勝手にやっていてね。


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