表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創地帝妃物語  作者: 宮月
36/46

36.熱い朝

 温かいなぁ。この香りもいい。ちょっと重いけど、幸せ。

うん?何か昨日もそんな事を想いながら、起きたような…。

あっ、でも、昨日と違って、シーツのサラサラした感触が直に感じる。

「起きたか?」

 頭上から声が聞こえる。この低くて、腰砕けそうな声は、アルね。

えっ?アル?

「おはよう、粋晶。」

「あっ、お、おはよう。」

 目の前にアルの瞳。う、うわぁ、私、昨夜…。うぎゃあ、ぎゃあ。

「ん?うぅ…。」

 行き成りの口付け。あ、朝から刺激的だぁ。で、でも、昨夜はもっと凄い事してしまったんだよね?

「身体は大丈夫か?」

 うわぁ。多分、身体は平気だけど、心がダメです。もう、恥ずかしさと色々思い出してしまった事で、完全にパニックですぅ。

「夢じゃない。現実だ。」

 アルの言葉がすぅっと心に染み込んでいく。不思議だ、パニックが一気に落ち着いていく。

「ずっと、ずっと一緒だよね?」

「あぁ、もう二度と離さない。」

 嬉しいな、凄く嬉しい。アルの胸に頬を付けると、鼓動が聞こえる。私と同じ。ずっと、こうしていられるんだよね?

「そろそろ起きるか。」

「うん。こうしていたいけど。」

 アルが嬉しそうに微笑み、優しい口付けをくれる。

あぁ、私、このまま、天にも昇れそうだよ。

「トントン。」

 ノックの音?や、やばくない?

「フランツ、待て。」

「おはようございます、アレ。」

 アルがドアを開けるのを制止する声より早くドアが開き、フランツが顔を覗かせた。ベッドに上半身起こし掛けのアルと、とりあえず布団で身体を隠した私を見て、停止した。数十秒の沈黙。

「フランツ、とりあえず、三十分後に、また来てくれ。」

「は、はい。」

 フランツがバタンとドアを閉め、バタバタと走る音の後、再びドアが閉まる音。

「アル…。」

「風呂に入ろう。起きられるか?」

「あの、服。」

「どうせ、すぐ脱ぐんだ。行くぞ。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。」

 布団を巻き付け、ベッドから立ち上がろうとする。アルってば、裸のままだし、はっきり言って、目のやり場に困るんだけど。そ、そりゃあ、あんな事しちゃったけど、私は恥ずかしくて、アルの身体を見てないし…。アルは、見たかもしれないけどって、そうじゃないぃ。うぎゃあぁ。

「痛っ。」

 立ち上がって歩き出すと、お腹の奥の違和感と股関節や腰や足がかなりのダメージ。

大丈夫か?私。

「大丈夫か?」

「アルは何ともないの?」

「まぁ、俺は、な。」

 ずるい。やっぱり普段から鍛えているから?

「ぎゃっ。」

 だから、行き成り抱き上げるのは止めて。

「急がないとフランツが戻ってくるぞ。」

 それはわかっているが、お願い。ちょっとは私を落ち着かせてぇ。

「はふぅ。」

 私があたふたしている間に、髪も身体も洗ってくれ、自分の洗浄も済ませる。その上、お風呂から上がったら、身体を拭き、髪まで乾かしてくれ、服まで着させていただきました。途中でさすがの私も『自分でやる』と言ったが、『俺がやった方が早い』と返され、なすがママならきゅうりがパパ状態の私。えっ?古い?

「ねぇ、アル。」

「ん?」

 さすがにアルが自分の支度をしている間に、自分でお茶の準備をしましたよ。グラスに注いだだけなんだけど。

「本当にいいの?」

「また、そこに戻るのか?」

「だって…。」

「もう一度、よくわからせてやろうか。そうしたら、今度こそ動けないだろうな。」

 な、何を言い出すのかな?この人は。

「だって、仕方ないじゃない。私、失恋経験しかないんだよ。」

「安心しろ。俺には粋晶だけだ。」

「多分、私、これからも不安になると思う。」

「誘っている?」

「さ、誘っているぅ?」

 アルって、こういう人だったの?違う一面を発見してしまった。

「何度でもわからせてやるよ。俺が粋晶だけを愛しているって。」

「ありがとう、アル。」

 着替え終わったアルに抱き付く。

うん、やぱり、このぬくもり、安心出来る。

「トントン。」

 ノック音。私は急いで、アルから離れ、ぎこちないけど、ソファーに座る。

「入れ。」

 今度はちゃんと返事を待ってから、ドアが開いた。

うわぁ、どんな顔して、フランツに向き合えばいいのよぉ。

「アレク王子、スイ、すみませんでした。お二人の邪魔をしてしまって…。」

 微妙にずれているような気もするけど。

「あ、あの、こちらこそ、ごめんね。」

「まぁいい。それより、フランツ。朝食はここで取りたい。」

「はい、用意出来ております。」

 本当に準備が良い人。さすがフランツ。

「いただきます。」

 五分も掛からずに、テーブルに食事が並ぶ。そして、知らない間にクォーツが姿を現し、ちゃっかりテーブルに座っている。

「おはよう。スイ、アレク、フランツ。」

「おはよう。」

 うん? クォーツってば、いつの間にアレクって呼ぶようになったの?

「アルくんって呼んでほしくないんだって。アルって呼んでいいのは、スイだけなんだってよ。愛されているね、スイ。」

 にやりと口元を歪め、私を見上げている。

あぁ、やっぱり、セイに似ているなぁ。

「フランツ。」

「はい。」

 クォーツの言葉に返事をせず、黙々と食事を勧めていると、アルが口を開いた。元々居心地の悪そうだったフランツが、ますます落ち着かないご様子でいらっしゃいます。今朝の事を聞きたいんでしょうね。

「俺と粋晶は結婚する。」

 うわぁ、宣言されちゃったよ。顔が熱い。凄く嬉しいけど、照れる。

「おめでとうございます。さっそく、婚約発表、婚礼の儀の準備に。」

「待て。」

「はい?」

「一度、地球に戻り、粋晶の誕生日に創地帝妃の決断をしてもらう。そうでないと、地帝国側も納得出来ないだろう。茶畑の事もあるから、な。」

「そ、そうですね。」

 フランツが何か言いたそうに私に視線を向けている。アルには聞き辛いから、私に聞きたいって事?

「ねぇ、スイ。身体は平気?」

 フランツが口を開くと思ったら、口を挟んできたのはクォーツ。

「まぁ、スイの運動神経は悪いけど、身体はそんなに硬くないから、それほどでもないと思うけど。うん?関係ないかな?」

 クォーツ、そのにやけ顔は止めて。何が聞きたいのか、わかる気もするがわかりたくない気持ちが上回っている。さて、どうしよう。

「何でそんな事、聞くの?私、顔色が悪い?」

「悪いはずないじゃない。むしろ、つやつやで可愛いわよ。もう一度、ベッドに連れ戻されそうなくらい、色っぽい。」

「クォーツ!」

 アルと私の声が綺麗に重なる。

何て事を言い出すんだ。あぁ、顔が熱い。

「今更、照れなくてもいいじゃない。フランツも私も、昨夜二人の間で何があったのか、わかっているんだからぁ。あっ、でも、内緒よね。わかっているって。」

 …クォーツって、私の(じゅう)(じゅう)で間違いないよね?少し不安になってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ