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創地帝妃物語  作者: 宮月
29/46

29.アレクの告白

「アレク様、お久しぶりでございます。」

紫色の身体にフィットしたドレスを着た方が、妖艶な笑みを零しながら、こちらにいらっしゃいました。

美人だけど、ちょっと気が強そうな雰囲気を醸し出しています。。アルの知り合いかしら?

「誰?」

はい?アルの知り合いじゃないの?それにしてももう少し聞き方があるでしょ。

と、心の中でアルに突っ込んでいると、アルに腕を掴まれ、立たされた。

「嫌ですわ。ご冗談がお上手ですのね。わたくしです。茶畑(ちゃばたけ)エリザベートですわ。」

よく冗談と笑い流せるわね。私ならショックだし、こんな妖艶美人を忘れなさそうな気がするけど…。

今度こそ、この人物がわかったのかと顔を見上げる。

「アル?大丈夫?顔色悪いよ。」

「あ、あぁ。」

返事がぼんやりしている。さっきまで元気に食事をしていたのに。

あっ、もしかして、何かにあたったのかな?

「フランツ、呼んで来ようか?」

「いや、いい。それよりここにいてくれ。」

「アル?」

ぎゅっと私の左腕を握り締めるアル。

本当に大丈夫なのかな?

「アレク様、わたくしと踊ってください。」

おい、茶畑。アルが気分悪そうなのがわからないのか?それに、今の会話を聞いていなかったの?

「アレク様ぁ。」

甘い声を出すな。馴れ馴れしくアルの手に触れるな。

えっ?嘘。

「アル、アル。」

私の腕を握るアルの手が弱くなったと思ったら、アルの身体が重力に負け、倒れ出した。支える事は無理でも、せめて頭を打たないように、身体を滑らせアルの身体の下に。寸前の処で、頭を抱え込んだ。

「セイ、ウィル、フランツ、カスパー。」

もう無我夢中で名前を呼び、助けを求める。

「王子。」

一番に駆けつけてくれたのは、フランツとカスパーとタッキー。その後にセイとウィルも来てくれる。

「カツキ、手を貸してください。」

二人がかりでやっとアルを抱え込む。私も立ち上がり、アルに駆け寄った。まだ真っ青な顔色のまま、瞳を閉じている。

「アル…。」

「タツキ、スイを連れ、王子の部屋にお願いします。皆様は、引き続き、お楽しみください。アレク王子は平気ですので。では、失礼します。」

アルを抱えたフランツとカツキと呼ばれた方が消える。

「あの、タッキー。」

「セイ、姫をお願いします。すぐに戻りますので。スイ、参りましょう。」

タッキーが軽々と私を抱き上げ、瞬間移動。アル以外の人に、こんな風に抱き上げられるのは初めてだけど、そんな事を気にする余裕はなく、ただ、アルの事が心配で仕方ない。

「スイ、着いたよ。」

「アル。」

タッキーから飛び降りて、アルが横になるベッドに駆け寄った。

「フランツ、アルは?」

「大丈夫です。すぐに目を覚まされます。いつもの事ですから、心配ありません。」

いつもの事?アルって、病気持ちだったの?貧血とか?

「目を覚まされるまで、こちらに付いていてくださいますか?私達は、また、あちらに戻らないといけないので。」

「それはいいけど、本当にアルは平気なの?」

「えぇ、五分ほどで、いつも通りに戻られます。」

そんな確信を持てるほどいつもの事なの?

「廊下には見張りの兵がいます。御用がありましたら、声を掛けてください。すぐに私が参りますから。」

「わかった。あの、手当てとか、何かやる事はないの?」

「そうですね。手を握っていてください。目が覚めた時、歓ばれますよ。」

「はい?」

「では、失礼します。」

フランツは言いたい事だけ残すと消えてしまう。他の二人も同様。

一体、どうなっているのよ?

「アル、大丈夫だよね?」

ベッドの横に置かれた椅子に座り、アルの顔を覗き込む。

確かにさっきより顔色が良くなっているから、少し安心。

でも、どうして?パーティー前まで普通だった。いつも通り、私を抱えてくれたし、笑ってくれた。料理を食べている時も調子悪そうな感じはなかったし、もしかして、食べた中にアレルギー物質でも?

うぅん。それなら、治療とかするだろうし、放置ってのは解せない。わからないけど、とにかくフランツの言う通り、手を握ってみよう。

「う…ん。」

小さなうめき声が耳に届いた。もしかして、苦しいの?

「アル、アル。苦しいの?アル。」

「すい…しょう?」

「アル。」

「あぁ、粋晶。」

ゆっくり瞼が開き、意識がしっかりしたみたいだ。

「大丈夫?痛い所とか苦しい所とかない?」

「あぁ、大丈夫だ。悪い、心配掛けた。」

「悪くないよ。心配するのは、当たり前でしょう。」

アルがベッドから上半身を起こした。

「まだ、横になっていた方がいいよ。」

「もう大丈夫だ。いつもの事なんだ。」

「いつもなの?」

さっさと起き上がり、ベッドに足を下ろし、腰掛ける。

ふらつく事もなさそうだし、平気そうだけど。

「話し辛いから、隣に座れ。」

「あっ、うん。」

素直に、言う事に従ってみる。

「俺、女性アレルギーなんだ。」

「はい?」

今、何と言った?女性アレルギー?って事は、フランツのあの話はアルの事?

「女に触れられると、一時的に蕁麻疹や意識を失う事がある。」

それはフランツに聞いたけど…あれ?

「あのぉ、私は?多分、一応、女。」

「粋晶だけは特別だ。」

「ファーちゃんは?」

「クリスは妹だからな。」

私もファーちゃんと同じ妹って事なのかな?

うっ、わかっていた事とはいえ、直に言われると、胸が痛む。

「どうして、私は?ファーちゃんと同じ…。」

それ以上、言葉が続けられない。

痛い、苦しい…。あっ、ヤバイ。涙が出そうだよ。バカだ、こんな質問するなんて、本当にバカ。

「粋晶。」

今、顔を向ける事なんて出来ないよ。返事もせず、涙が零れないように、きつく唇を噛み締め、床を睨み付けた。

「粋晶。」

だから、もう一度、呼ばれても…。

「ふへぇ?」

な、何?今、頬に何か柔らかいモノが触れたよ。反射でアルの顔を見上げてしまった。その瞬間、アルの顔が目の前。

「ア…。っ。」

呼び掛ける声が、アルの唇に呑まれる。

って、こ、これって、キ、キス?天麩羅に揚げて、美味しい白身魚、それは鱚。違う、そうじゃない。何?この感覚。ヘンだよ…、私…。

いや、飲まれるな。酒は呑んでも飲まれるな。あぁ、ダメだ。思考が狂っているよぉ。

「粋晶。」

アルの声で、自我を取り戻し、遅ばずながら、唇を押さえた。

「ファ、ファーストキスだったのに。」

自分で言うのはあれだけど、違うだろう。叫ぶ言葉が。

「違うだろう。」

アルにしっかり突っ込まれました。そうじゃなく…。

「ど、どうして?」

「したかった。」

「したかったら、誰とでもするの?」

「だから、女性アレルギー。」

私一人が動揺して、バカみたい。

「粋晶だから、キスしたい。」

「ア…アル?」

アルの両手が伸ばされ、私は筋肉の中に抱え込まれてしまった。

「愛している。ずっと、粋晶だけだ。」

こ、これは夢ですか?私に都合の良い言葉が聞こえます。夢なら一生このままでいたい。

よし、夢なら、背中に腕を回しても許されるよね?

「聞こえているか?」

「えっ、あっ。」

おい、夢なら、このままロマンチックに腕に抱かれたままでしょう?こんな確認しないでください。まったく、私の夢、ヘンだよ。

「まぁ、粋晶だからな。」

そうです、私の夢ですから。でも、やけに感覚がリアル。その前に、私、いつ寝た?

「アレク王子、気付かれましたか?」

行き成り、ドアが開き、フランツ登場。

「あっ。」

ゆ、夢じゃないらしい。フランツの驚く顔。本物だよね?一気に熱くなる、私の頬も。現実感があり過ぎる。

「うわぁ。」

は、恥ずかし過ぎる。こ、こんな一目で抱き合っている様を見られるなんてぇ。信じられないぃ。ここにはいられない。私の精一杯で逃げるぞ。

ハイヒールを脱ぎ捨て、一目散に走り出した。

「粋晶。」

「スイ。」

二人の制止する声が聞こえるが、無理です。今は、顔を見られませぇんんん。


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