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創地帝妃物語  作者: 宮月
22/46

22.鈍感天然スイちゃん

「何、やっているんだ?」

真横から声がして、振り返るとセイが立っていた。

「セ、セイ。ね、寝たんじゃないの?」

「喉渇いたから、何か飲もうと思ってさ。」

「そ、そうなんだ。」

私は何を動揺しているんだ?

「で、アレクが帰っていったドアを見つめて、何をしているんだ?」

セイは性格が悪いのか?

「もう五分は経っているぞ。」

うん、やっぱり性格悪い。

「私も何か飲もうと思って、何にしようか考えていたの。」

「ふぅん。」

ちょっと苦しい言い訳だったかな?でも、自分でもよくわからないんだよね。

「それより、ここの街、東京と変わらなかったね。創帝国の帝都も同じかな?」

「話の逸らし方がわざとらしいな。それだけ動揺しているって事か。」

セイって、こんなにも性格が悪かったかしら?人間、そんなに急に変わらないだろうな。そうだね、悪かったんだよ。

「スイ、そこで何か飲みながら、話そう。」

あぁ、そうですか。このまま、流してはくれませんか。

「ほら。」

冷蔵庫らしき物から、お茶を出し、手渡してくれる。

まぁ、お茶と言っても良いんだろうな。何かの葉から抽出したらしいから。

「ありがとう。」

セイと並んでふっかふっかのソファーに腰掛ける。

うわぁ、身体が沈む。

「それで、お前、どうするか、決めたのか?」

「何が?」

「結婚に決まっているだろう。」

そんなに怒鳴らなくてもいいんじゃない?

「多分、どっちも断る。」

「何で?」

「だって、ウィルにはリリアンナがいるし。」

「アレクは?」

「きっと、いるよ。だって、あのルックスであの性格だよ。それに王子様。いるに決まっている。」

「直接聞いたのか?」

「聞いていないけど、いるでしょう。だって、ウィルだって…。」

さっきからずっと胸が痛い。いつもの私らしくもなく、歯切れも悪いし。

「ウィルとアレクは別だろう。」

「でも…。」

「怖いのか?」

セイの言葉に心臓が跳ね上がった。

「失恋するかもしれないから、逃げるのか?」

「…私は、別にアルの事、アルに恋なんてしていないよ。」

「スイ、いい加減、自分の気持ちを誤魔化すのは止めたら?本当は自分でもわかっているんだろう。」

もう、逃げられないのかな?誤魔化せないかもしれない。

セイに言われると不思議と素直になってしまいそう。でも…。

「まだ、一ヶ月経っていないよ。もう少しね。」

「スイ…。」

「さて、寝よう。セイも早く寝た方がいいよ。」

フッカフッカのソファーから、『ドッコラショ』と掛け声を飲み込みながら、立ち上がる。

本当にふかふか過ぎて、立ち上がり辛いのよ。

「あっ、スイ。」

「うん?」

「そっちの部屋にもベッドが二つあったよな?」

「あるけど。」

「そっちで寝る。」

「はい?」

セイにどんな風が吹いている?

「いや、あの物音が煩くて、さぁ。」

「あぁ、はい、はい。いいよ。」

ウィルとリリアンナも元気だなぁ。

「じゃあ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

窓に近いベッドにセイ。ドアに近い方に私が潜り込んだ。

いやぁ、家のベッドと違って、マットもふわふわだよ。

「なぁ、スイ。」

「何?」

「アレクと結婚しろよ。」

「はい?」

ほとんどない腹筋を使い、あり得ない勢いで起き上がってしまった。

「な、何を言い出すのよ。」

あぁ、私、動揺丸出しだよ。まぁ、セイだからいいや。

「まさかと思うけど、本当に気付いていないのか?」

「何が?」

「あぁ、悪かった。そうだな。鈍感天然スイちゃんだもんな。」

「はい?」

私は鈍感でも天然でもないはずだ。そうだよね?

って、今はそこじゃなくて、何に気付いてないかの問題だ。

「何に気付いていないと言いたいの?」

「それを俺が言うのは違う気がする。」

「はい?」

「自力で気付け。」

何だ、それは?

「自力で気付けないから、何もわからないんでしょう。」

「あぁ、確かにそうだ。」

「ヒントくらいちょうだいよ。」

自分で言っていて、何だけど、クイズかと突っ込みたい。

「ヒントねぇ。あぁ、その前に自分の気持ちはわかっているよな?」

「自分の気持ち?今、腹筋が吊りそうだなって思っているけど。」

そんな深々と溜息をつかないで。確かに誤魔化そうとした苦しい言い逃れだけど。

「わかっているよ。でも、私、この気持ちを認めてしまったら、多分、壊れる。」

「はい?」

膝を引き寄せ、ベッドの上で体育座り。

「今まで、届かない想いばかり重ねてきて、慣れっこのはずなのに、おかしいでしょ?でも、今回はダメ。」

「そんなに好きなのか?」

「絶対に認めないよ。」

自分で重い事を言っている意識がある。だから、微笑で誤魔化す。

「アレクも同じ様に思っているとしたら?」

「まさか。」

「アレクはお前には特別扱いだろう。」

「元々優しい人なんだよ。女性には特に。」

「そう思うのか?」

「そうじゃなければ、お飾りの創地帝妃が欲しいからとしか考えられないでしょう。そんな風には考えたくない。」

あぁ、ついつい溜息を零しちゃったよ。幸せ逃げたのかな?

「もし、告白されたら?」

「…やっぱり未だ怖いと思う。」

「臆病なんだな。」

「まぁ、失恋経験ばかり重ね、女としての自信なんて皆無だからね。」

「スイは女としても魅力的だと思うけどな。」

「優しい慰め、ありがとう。そう言ってくれるのはセイだけだよ。」

「鈍感天然スイちゃんだけある。」

「はい?」

「さぁ、寝るか。明日も早いぞ。」

寝ようとしていたのに起こしたのは、セイでしょう。本当に勝手なんだから。

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」

布団にもぐってみたけど、眠れそうにないな。今夜の私。


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