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創地帝妃物語  作者: 宮月
19/46

19.やっと着いたよ、地帝国王宮に

「はふぇ?」

想像と違う、違い過ぎる。ウィリバルトなんて、バリバリ西洋人の名前を付け、ルックスも金髪で真っ白なお肌。どう考えても西洋系でしょ?日本を含む東洋系じゃないでしょ?

それなのに、それなのに、目の前にある地帝国王宮は、日本の古城。白い城壁に黒い瓦っぽい屋根の上にはシャチホコではなくペガサス?四方を森に囲まれ、いや、森の中にお城が建っているというべきだろう。これ、何処までが王宮?この森の外が城下町?もしかして、そっちも武士の時代の日本?

「ウィル、ここが王宮?」

セイも私と同じ想像していたんだね。

「一応、王族の住処だけど。」

「そうですか。」

多分、セイの中でも王様が殿様に変換されたはず。ついでに、後宮が大奥、薔薇の庭園が日本庭園、という具合に。

さて、どうなっているんだろう?楽しみ。

「おかえりなさいませ。」

女性の声がして、振り返ると、重臣服に赤いマントをした人。あっ、このマントはアル登場時の全身隠す変態マントではなく、ヒーローがつける空飛びそうなマントね。

赤茶色の髪を高い位置でポニーテールにしていて、それでも腰まで届いている。意志の強そうな茶色い瞳。すらっとした身体に長い手足。物凄く美人だ。女の私でもときめいてしまうほどの美人。

と、横を見ると、セイも見惚れている。やっぱり。

「リリ、迎えに来てくれたのか。」

「ご予定より早い時刻のため、他の者はまだです。申し訳御座いません。」

「リリがいれば、充分だよ。紹介しよう。帝子騎士団長、(あかがね)重臣リリアンナ。カスパーの娘で、僕の幼馴染。」

ウィルが嬉しそうに目尻を下げ、リリアンナさんの肩を抱き寄せる。

やっぱり、モテモテくんは過剰なスキンシップがお好き?

ではなく、一歩間違えば、セクハラ?

「王子。」

リリアンナさんの短いけど厳しいお声を無視して、ご機嫌なウィル。

「こちらがスイ、セイ、アレク、フランツだ。」

いい加減な紹介、ありがとう。

「創帝国のアレクサンドル王子でいらっしゃいますね。初めまして、帝子騎士団長、銅重臣リリアンナと申します。以後、お見知りおきを。」

丁寧で格好良い。さすが騎士団長さんって感じでしょうか。

「スイ。」

ぼんやり、リリアンナさんに見惚れていたら、すぐ横からセイの声。我に返ったら、リリアンナさんが戸惑った顔で、私を見ていらっしゃる。

そうだよねぇ。まだ、アルにお姫様抱っこされたままだもん。

ふっと顔を上げると、アルとバッチリ目が合ってしまった。とっても近いです。

「もう平気そうだな。」

「ありがとう。」

下ろしてもらうと見える世界が低い。アルって本当に背が高いんだな。

じゃなくて、現実、現実。

「はじめまして。一色粋晶です。スイって呼んでください。」

ペコリとリリアンナさんにお辞儀。

「はじめまして。創地帝妃様がこのように可愛らしい方だと思いませんでした。」

うん?何か棘を感じるぞ。それって、アルに抱っこされていたから?ううん。それもあるかもしれないけど、もしかして…。

「スイ、身の回りの事はリリに任せて。」

「色々、わからない事が多いので、ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします。」

「こちらこそ、至らない点もあると思いますが、ご容赦を。」

絶対、そうだ。それ以外、考えられない。でも、嫉妬じゃない。嫌悪かな?

そうだよねぇ。好きな人の妻、それも王妃になるかもしれないのが、これじゃあねぇ。

あぁ、私、こんな綺麗な人に嫌われているの?いや、大丈夫。友達になってみせる。こういう格好良い女性が呆れながら、私と仲良くなった実績がある。ファイト、私。

「じゃあ、部屋に案内するよ。お昼に迎えに行くから、それまでゆっくりしていて。あと、スイとセイの部屋には、服が用意してあるから着替えて、スイはリリに手伝ってもらって。それとアレクとフランツの荷物は部屋に置いておいた。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、行こうか。」

カスパーとウィルを先頭に最後尾にはリリアンナさん。一回角を曲がると、立ち止まった。

何?どうしたの?

「地帝国銅重臣カスパー以下七名、帝子用客間大広間へ。」

へ?何、言って…。くわぁ、また、このふにゃふにゃ感。今度は何処へ?

「ふにゃあ。」

「だぁ。」

再び平衡感覚が狂う、セイと私。

いつになったら慣れるの?と、言うか、移動の度にこれですか?瞬間移動で便利なんだけど。

「大丈夫、じゃなさそうだな。」

何かに掴まらないとしゃがみこんでしまう。足に力が入らなくなっている。

そんなフラフラな私を救ってくれるのは、力持ちのアル。またまた横抱きされています。

「お前、まだ、ダメなのか?」

セイ、アンタが偉そうに言うな。似たような状態でしょう。あっ、でも、一人で立っている。

「仕方ないですよ。今のスイとセイは帝力がゼロの状態ですから。」

「帝力と関係するの?」

「詳しい説明すると長いですけど、聞きます?」

「いえ、結構です。」

「まぁ、乗り物酔いの軽い状態ですよ。すぐに治ります。だから、スイは移動の際にはアレク王子に抱っこしてもらいなさい。セイは、私達の支えで我慢してください。それともスイみたいに抱っこして欲しいですか?」

「遠慮する。多分、アレクも遠慮したいと思うし。」

「確かに。」

「スイがもう少し軽ければ、僕がおんぶしてあげるのに。」

私の体重、知っているのかい?それが乙女に言うべき言葉なの?

「悪かったわね、デブで。」

「いや、デブとは言っていないじゃないか。スイは今のままで充分可愛いんだけど、僕は力がないから。ほら、よく言うじゃない。」

「色男、金と力はなかりけり。」

セイと私の綺麗に重なった声。

いやぁ、知らなかった。これは異世界でも共通なんだ。

「金はありますよ。そうじゃなくて、モテ男、力出す場所限られるって。」

「はい?」

「何処で出すんだ?」

「それは、もちろん。」

「あぁ、わかった。もういい。」

途中から引継ぎ、にやりと笑うカスパーと、余分な事を言ってしまったと焦るウィル。

あぁ、そういう事ですか。確かに力を出していましたね。

「あっ、アル。ありがとう。もう平気みたい。」

「そうか。」

地面に足を付けてもふにゃふにゃ感はない。少しは慣れた証拠かな?

「じゃあ、部屋に案内しよう。あっ、ちなみにここは客広間。まぁ、お客用のリビングだと思ってください。」

広い廊下に左右三つずつドアが並び、突き当りにも一つのドア。

「一番奥突き当りをスイとセイで。左奥からアレク王子、フランツ、私。右奥からウィル王子、リリアンナ、詰め所になります。」

「はぁい。カスパー。」

学校のノリだな、これじゃ。

「何ですか?スイ。」

「詰め所って何ですか?」

「見張りの団員の休憩所といった所ですね。他に質問は?」

ノってくれるカスパー、偉い。

「どうして、スイと俺は同室ですか?」

「スイからの要望です。」

「わかりました。」

セイ、何がどうわかったの?まぁ、そこは突っ込むと面倒だから、気にしない。

「土足のままでいいのか?」

「もちろんです。そうでなければ、脱いでくださいと言っています。」

ふぅん。中は西洋風。まぁ、廊下の隅とかに和風っぽい壷があるけど、それはスルー。

「リリアンナ、スイの着替えを手伝ってください。」

「はい、カスパー帝子仕(ていしし)。」

ここで解散らしい。リリアンナさんの案内で、セイと私の部屋へ。

うわぁ、テレビで見るホテルのスイートルームみたい。ふかふかの絨毯に見るからに高そうなソファーとテーブル。サンタクロースが落ちて来たらびっくりの暖炉。

「右が創地帝妃様、左が星晶様の寝室でございます。寝室に入っていただき、ベッドの横の扉を開けて頂きますと、お召し物がございます。星晶様もわからないようでしたら、お手伝いいたしますが。」

「スイの着替えが終わってもここに来ないようなら、一人では無理だと判断して。」

「わかりました。では、創地帝妃様。」

リリアンナさんの勢いに負けているぞ、私。このままではいけない。


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