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創地帝妃物語  作者: 宮月
18/46

18.いざ、地帝国へ

「いってらっしゃい。気をつけてね。」

唯今、土曜日午前九時。地帝国に旅立つ日です。

アル、ウィル、フランツ、カスパー、セイ、私の六人がが出掛けるメンバー。

これは良いのですが、何故見送る側に、キヨちゃんがいるのでしょう?もう臨時アルバイトも終わり、本来の仕事に戻ったはずです。それに両親との会話で旅行の事を聞いたのでしょうが、一体何処へ行くと聞かされているのでしょう?

「お土産、楽しみにしている。」

一体、何を買ってきたら良いのでしょう?まぁ、後でセイと相談しましょう。

「じゃあ、行ってきます。」

大きなバッグを肩に掛け、出発。

それにしても、皆、どうして、そんなに荷物がないの?ウィルとカスパーがほとんど手ぶらなのはわかるけど、アルとフランツ、セイまでもが小さなバッグ一つ。どうやって、着替えとか諸々を仕舞ったのでしょう?

「セイ、どうしてそんなに荷物が少ないの?」

「全て用意してくれるって言うから、下着しか持ってきていない。」

「洋服は?」

「せっかく異世界に行くんだ。あっちの服を着る。用意してあると思うし、コスプレも楽しそうだし、慣れるためにも服は持たない。」

あぁ、そういう考えもあるのね。

「スイは逆に、慣れない服も着辛いし、コスプレも遠慮したいとか思ったんだろ?」

「ううん、はずれ。用意されている事なんて、頭の隅にも浮かばなかった。それに向こうのお金を持っていないから、買う事も出来ないとか考えたら、この量。」

「本当、庶民的な考えだな。」

「何よっ。」

だって、庶民だもん。同じ家で同じ様に育ったのに、何を言うか。

「必要な物があれば、いくらでも僕が買ってあげるよ。安心して、スイ。」

「ダメよ。」

「へ?」

ウィルが甘い言葉をくれるが、惑わされてはいけない。

「働いて得たお金。大切にしなくちゃ。本当に自分に必要な物をきちんと選んで買わなくちゃ、すぐに破産してしまうでしょ。」

「破産はないと思うけど、ね。」

余分な事を呟くセイを横目で睨み付ける。それなのに、何処吹く風。

「行くぞ。」

「ぎゃ。」

背後からお腹に腕を回され、肩に担がれる。

あのぉ、アル。私、荷物じゃないよ。

「セイもフランツにしがみ付け。置いていかれるぞ。」

どうやらドコデモ扉に着いたらしい。それらしき物はないよ。見るのは私達の家の庭。って、近所を一周して、戻ってきたんかい。落ち着け。今はその突っ込みはなしにしよう。

そのドコデモ扉はどれ?目の前にあるのは、小さな頃、セイと上って遊んだ大きな石だけだよ。うん?カスパーがその石に触れ、何かをぶつぶつ言っている。

「消えた。」

フランツの横腹にしがみ付いているセイと、アルに荷物扱いされている私の声。

「アレク、先に行け。」

「あぁ。」

つ、次は私達ですか?どうなっちゃうの?大丈夫なの?あぁ、アルも石に触れ、ぶつぶつ言っているよ。

「うぎゃ。」

世界が一瞬ふにゃりと歪んで、きつく目を閉じた。

「着いたぞ。」

アルの声でゆっくりと目を開けた。

あれ?世界が変わっている。でも、普通の森の中。私、中世のヨーロッパの街並みを考えていたんだけど、なぁ。

「ぎゃあ。」

私に負けないほどの声を発したセイは、ウィルとフランツに挟まれ、まるで命からがら抜け出してきた人みたいに、ぐったりしている。

セイ、安心して。私も同じようだと思うから。

「ふにゃあ。」

アルがお荷物だった私を肩から下ろす。地面に立った感じは同じなのね。でも、ちょっとふらふら。歪みに酔ったかな?

「アル、運んでくれて、ありがとう。でも、出来れば荷物みたいに担がないで欲しいな。」

「どうすればいい?」

先に着いたカスパーと、ウィルとフランツの三人は、木陰にセイを座らせ、何やら話している。

普段は車酔いとかしないけど、この感覚は始めてだもんね。

「あのねぇ、この前、私の部屋からアルの部屋に連れて行ってくれたみたいに、その横抱きというか、お姫様抱っこがいい。」

「こうか?」

「きゃ。」

急に抱き上げないで。びっくりするでしょ。まぁ、びっくりしたのは、私だけじゃなく、木陰にいる四人も目を丸くして、こっちを見ているよ。

「あの、今は別に必要ないかと。」

「膝が笑っているだろう。」

「でも、重いでしょ?」

「まぁ、軽くはないな。でも、粋晶だから、大丈夫だ。」

私だからって、どういう意味?

「ここが抜ければ、すぐです。行きましょう。」

おぉい。平然と歩き始めないで。この状況に何か言わないのか?セイ、ウィル、お願い。何か言って。このまま、スルーされるのは、何故か凄く恥ずかしいのですが。

「アレク、おんぶの方がいいぞ。背中に胸が当たって。」

「セイ!」

いえ、やっぱり、このまま、スルーしてください。それがさっきまでグッタリしていた人の言葉?

「あっ、それなら、僕がするよ。」

「ウィル、無理するな。スイは重いぞ。」

「……やめておこう。」

今、目で体重を測りましたね。乙女に失礼でしょう。

「今日は、力持ちのアレクがいるから、任せよう。」

取って付けたような言い訳するな、バカウィル。

「あの、アル。」

「掴まっていてくれ。歩き辛い。」

「私、歩けるよ。」

「いいから、首に手を回して、掴まれ。」

「はい。」

重いのになぁ。アル、何でもない顔しているから平気なんだよね?

でも、こういうのいいな。凄く大切にされているって気がする。あぁ、嫌だな、私。何を考えている?バカ、みたい。ヘンな期待、期待って何?私は別にアルの事……。

ヤ、ヤメヤメ。もう考えるのはヤメ。いいや、しばらく、アルに甘えよう。そう、これでいいね。


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