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創地帝妃物語  作者: 宮月
16/46

16.セイと内緒話

「おかえり、セイ。」

夕食の少し前、待ちに待ったセイが帰ってきてくれた。嬉し過ぎて、抱きついちゃうのは、私の家族ならでは?

「ただいま、スイ。」

ぎゅっと抱き合い、お互いを確認。

やっぱり、セイがいないと淋しかったよ。

「おい、スイ。お父さんとお母さんが帰ってきた時、そんなに歓ばなかっただろう。」

「セイは超特別なの。ねぇ。」

「ねぇ。」

セイとにっこり笑い合うと、その後ろから呆れた溜息。

「お前等、いい加減、兄妹離れしたら?結婚出来ないぞ。と、スイにはアレクとウィル、二人も婚約者がいて、セイにはいないのか?」

「何人か立候補してくれている人はいるが。」

お父さんが口を濁す理由は、何となくわかる。多分、創地両帝国の女性で、一色家の人間だからとかが理由なんだろうな。だって、セイと面識があって、セイに一目惚れとかはないもんなぁ。

「セイ、夕食の後、独り占めしてもいい?」

「もちろん、スイのためなら。」

「ありがとう、セイ。」

再び、ぎゅっと抱き付き、過剰なスキンシップ。

「アレク、ウィル。羨ましいだろう。これが俺の特権。」

セイってば、私をぎゅっと抱き締めて、鼻を鳴らしている。

羨ましいのか?

「結婚したら、そんな事はさせないから。」

 羨ましいらしいです。

でも、ウィルも子供みたいに応戦しないで。

「粋晶、おいで。」

アルが手招きするので、首を捻りながら近くに行くと、アルの逞しい腕に抱き締められてしまった。

「ふにゃ、ほにゃ。」

筋肉が厚いというのは、防音作用を持たすのか?自分が何を言っているのか不明。

「スイ、僕も。」

「アレク、不意打ちはダメだろう。」

「まぁ、騙されるスイも悪いな。」

「アレク王子の中に、スイはすっぽり入っちゃうんだな。」

それぞれが勝手なことをほざいてくれている。

その間もアルの腕の中に囲われている私は、心地良さを覚えてしまっている。何度か、昨夜もだけど、アルのぬくもりって、安心感があるんだよね。何でだろう?

「何、騒いでいるの?夕食よ。」

母の一言でピーチクパーチクと鳴いていた声はやみ、私もアルの腕から解放される。

「アルのバカ。」

抵抗もしないで、大人しくアルのぬくもりを噛み締めてしまった自分が恥ずかしい。

「嫌じゃないんだよな?」

屈んで、私の瞳を覗きこみ、苦笑を零す。

何でだろう?胸の奥が痛い。

「嫌じゃないけど、恥ずかしい。」

「俺は嬉しい。」

どうして、嬉しいの?どうして、嫌じゃないって聞くの?

私、おかしい。こんな気持ち、おかしいよね?


「そんな事があったのか。」

夕食の後、セイの部屋のベッドの上で向かい合い、ウィルの告白とハルンケアさんの事を話した。でも、ウィルの暴走の事は話し辛くて、意見の食い違いがあって喧嘩して、アルに慰めてもらったけど、すぐに仲直りしたとだけ話した。

多分、セイの事だから、何があったか正確に察していそうだけど。

「で、スイはどっちが好きなんだ?」

「両方、好きだよ。ウィルは華やかで優しくて、会話が弾むし、アルはちょっと不器用だけど落ち着いた優しさがあって、傍にいるだけで穏やかになる感じ。」

「ふぅん。じゃなく、結婚。」

「それで困っているから、セイに助けを求めているんでしょ。あっ、でも、アルは…。」

「アレクは?」

まただ。胸の奥にズキンと痛みが走る。

「セイみたいに世話の掛かる妹みたいに思っているのかなって。」

「その根拠は?」

「私をよく見ているの。ちょっと落ち込むと察してくれて、元気付けてくれたり、何度も私を助けてくれたり、そういう所、セイとよく似ている。だから、スキンシップも少し照れ臭いけど嫌じゃないし、心地良いのかなって。」

セイが頭を抱え、大きく息を吐き出した。

それって、私に呆れている溜息なんですか?

「これはしばらく時間が掛かりそうだな。」

「そうだよね。一生の事だもん。しっかり考えなきゃいけないよね。それでね、セイ、三日位、休み取れる?」

「今度、三連休だろう。今のところ、予定はないよ。」

「そっか。じゃあ、創地両帝国に行ってみたいの。で、王宮を見せてもらって、どんな所か参考にしたい。」

「あぁ、それはいいな。よし、フランツとカスパーを呼んでもらって、手配してもらおう。それは必要な事だよな。」

「でしょ。」

セイが急に立ち上がり、ドアに歩いていく。

「セイ?」

「何しているんだよ。アレクとウィルに、フランツとカスパーを、呼び出してもらうんだろう。」

「えっ?今日?今?」

「連絡だけでも、な。」

「あぁ、そうだね。でも、どうやって連絡するんだろう?」

セイも立ち止まり、顎に手を当て考え込む。

「何かあるだろう。」

投げ遣りな返事をありがとう。だったら、一瞬でも考え込むな。


アルとウィルはリビングで両親に掴まっていた。長々と旅行の話を聞かされ、さっそく印刷されたデジカメ写真を山ほど見せられ、完全なる餌食になっている。

さすがのキヨちゃんは、夕食を済ませるとさっさと帰っていったらしい。

「アレクとウィル、借りるよ。」

「あっ、セイ、スイ。良い所に来たわね。写真、見ない?」

「今、ちょっと忙しいんだ。あとでゆっくり見せてもらうよ。」

「そうそう、じゃあ、アル、ウィル。行こう。」

救出成功。とりあえず、セイの部屋に戻り、先程の話をする。

「さっそく従獣(じゅうじゅう)に行ってもらおう。」

「あっ、見たい。」

前から思っていたのよ。二人の従獣が見たいって。

二人とも右手を出し、ぶつぶつと何かを唱えると、手の平にミニチュアのアルとウィル。

「可愛い、ねぇ、名前は?名前。」

「名前?普通、付けないよ。」

「えぇ、呼ぶ時、困らない?」

「困った事はない。」

「付けた方がいいよ。だって、自分の分身なんでしょ?仲良くなりたいじゃない。そのためには名前って、重要でしょう。」

「スイ、自分の分身なら元から仲良しなんじゃないか?」

「そっか。」

会話が何処かずれているとわかっているが、いつもの事。気にしてはいけない。

「じゃあ、スイが付けてよ。」

「え?私?」

「あぁ、いいな。」

「本当?私、決めちゃうよ。名付け親になっちゃうよ。気に入らなければ、ちゃんと拒否してね。本当にいいの?」

私の長過ぎる念押しの言葉は軽く流され、二人は大きく頷く。

「アルの従獣はコクヨウ、ウィルの従獣はコハク。」

「なんともスイらしい。」

セイが眉間に皺を寄せ、苦笑を零している。

「意味は?」

「両方、天然石の名前。コクヨウは黒い石、コハクは黄色、金色に近い色の石なの。日本名で響きが良くて、色を大切にしようと思ったら、浮かんできたの。」

「コクヨウ、創帝国に行って、フランツを呼んできてくれ。」

明らかにウィルの従獣よりも大きいけど、小さなアルがにっこり笑い、頷く。

「スイ、ありがとう。行ってくる。」

コクヨウって名前、気に入ってくれたみたい。よかった。

「コハクも地帝国へ行って、カスパーを。」

「かしこまりました。」

大輪の薔薇を一本背負わせたら、薔薇の方が大きそうだけど、小さなウィルが薔薇背負い笑顔を見せてくれる。

「スイ、気に入ったよ。ありがとう。」

コクヨウに続き、コハクも一瞬で姿が消える。

「なぁ、スイ。まさかとは思うが、自分の従獣の名前、決めてないよな?」

「いいえ。決めてあります。」

「クリスタルだろう?」

「それじゃ、まんまじゃない。だから、クォーツ。」

「まんまだろう。クォーツの中にクリスタルも含まれているんだから。」

「まぁね。」

セイと私の会話に、首を捻る二人。

まぁ、パワーストーン好きの人でないと、よくわからない話だからね。

「で、俺のは?」

「ジェイド。翡翠の事よ。私にとって、セイって、緑のイメージなの。」

「あぁ、それはわかる。」

ウィルは声を出し、納得し、アルは無言で頷いた。


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