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創地帝妃物語  作者: 宮月
14/46

14.ウィルの暴走

 ハルンケアさんのせいで午前中眠れなかった。眠気と戦いながら、時々負けて居眠りしながら過ぎていた。

でも、もう限界です。

「疲れたぁ。」

 自分の部屋に辿り着くとベッドへダイブ。

あぁ、このまま寝ちゃいそう。ダメだ、お風呂は済ませないと。

「スイ、入るよ。」

「うん?」

 ドア越しの声の後、ドアが開く音。

あっ、私、寝ちゃった?あっ、起きなきゃ。

「スイ?」

「あっ、ウィル。お風呂空いたの?」

 ダメだ。まだ、眠い。起き上がりたくない。

「空いたよ。……ねぇ、スイ。」

「うぅん?」

「アレクがペンダント付けているの、知っている?」

「どうしたのぉ?急にぃ。」

 あぁ、口調が酔っ払いと同じ様になっている気がする。

「スイも同じ様な鎖のペンダント付けているよね?もしかして、お揃い?」

「ウィルも欲しいの?」

 あぁ、会話しながら眠りに落ちてしまいそう。

よくこの状態で私、話しているなぁ。会話成り立っている?

「僕が質問しているんだよ、スイ。」

「アルとお揃いだよ。買ってくれたの。」

「…アレクの方がいいの?」

「はい?」

 うん?気のせい?ウィルの声、いつもと違う。ちょっと怖いよ。

「僕よりアイツがいいの?」

「何、言っているのよ?ウィルにも良い所、いっぱいあるじゃない。」

「アイツにスイは渡さない。」

「ウィル?」

 ウィルの低い声。

うん?私、何かまずい事を言った?目据わってない?怖いよ。

そんな顔で、こんな近くに寄らないでって。

えぇ、何?この状態?周りから見たら、ウィルが私を押し倒している様にしか見えないよ。

まぁ、私、元々横になっていたけど。

「ウィル?ふざけないで、退いて。」

「僕の子供を身籠れば、僕と結婚してくれるでしょう。大丈夫、初めてでもスイを気持ちよくしてあげるから。」

 目が据わった顔のまま、微笑まないで、怖いから。言っている事がハルンケアさんと同じになっているよ。こういうセクハラ発言が似ているのかな?

って、私、冷静におかしな考えに現実逃避していないで、この状態をどうにかしないと。

「ウィル、笑えない冗談だよね?」

「冗談じゃないよ。スイは僕に任せてくれればいいからね。優しく抱いてあげるから。朝になったら一緒に地帝国に帰って、すぐに式を挙げようね。」

 本気なの?本気で本気?口元には笑みが浮かんでいるのに、目が笑っていない。

「きゃっ。」

 今、ビリビリッて音がした。ボタンが宙を舞っていたよ。

「嫌だ、ウィル、止めて。うぎゃ。」

 ウィルの手が下着の上から私の胸に触った。

寝惚けていたときとは違う。ちゃんと意思のしっかしている手の動き。

「ウィル、嫌だ、嫌だってば。止めて。」

 私の上に跨り、私の両手は左腕だけで頭の上に押さえつけられている。あばれるがびくりともしない。

怖い、嫌だ。こんなの嫌だ。

「これは僕が捨てておくね。」

 首に下げたままのペンダントが奪われていく。えっ、どうやってこの一瞬で取ったの?

そうじゃない。逃避したい気持ちはわかるが現実に戻ってこい、私。

せっかくアルが私のために選んでくれて、買ってくれたのよ。それなのに、捨てるって言った?

「嫌だ、嫌だってば。」

 もうウィルの手にペンダントがない。何処にやったの?

「そんなに聞き分けのない事ばかり言わないで。でも、抵抗もここまでだよ。」

 ウィルは、やっぱり男の人なんだ。細くて、綺麗だけど、私より力があって、片手で私を封じ込められる。

「抵抗しなくなった。良い子だ、スイ。」

 いつもと同じ笑顔なのに、瞳が笑っていない。このまま、私、こんな形で…。

「アル…、助けて。アル。」

「やっぱり、アイツがいいの?でも、ムリだよ。スイは僕のモノ。」

 頬を伝う涙にウィルが口付けする。

優しいのに、どうして、こんなに胸が痛いの?

「嫌だぁ。」

 こんな奪われるような、私の意志が伴わないのは嫌だ。

手は動かないけど、足は動く。思い切り足を振り上げた。

「粋晶。」

 ウィルが目の前から消え、身体の自由が甦ると同時に、アルの声。助けに来てくれたんだね。

「アル。」

 ベッドから飛び起きて、アルにしがみ付く。もう、大丈夫なんだよね?

「怖かったよぉ、アル。」

 無言のまま、大きな手で私の頭を叩いてくれる。優しい温かい手だ。

「ウィル、自分がやった事、わかっているのか?」

 蹲ったまま、動かないウィル。

そうだよね、動けないよね。だって、私、力一杯、急所を蹴飛ばしちゃったもん。でも、やめてくれないウィルが悪いんだから。

「反省しろ。向こうへ行こう。粋晶。」

 あっ、足の力が入りません。安心したせいか、足の震えが。

「ほら。」

 アルが上着を脱ぎ、私に被せ、横抱きに抱き上げてくれる。

「粋晶は俺の部屋で休ませる。落ち着いたら、リビングに来い。」

 アルの胸にしがみ付く。

嫌だな、私。手が震えている。それに、涙が止まらない。

「粋晶、もう大丈夫だからな。」

 わかっている、わかっているけど。震えも涙も止まらない。

「アル、ウィルが怖かったの。止めてっていったのに、止めてくれなくて。ボタンが宙に飛んで暴れたの。でも、力じゃ勝てなくて。」

「ほら、着いた。ここに座っていられるか?何か飲み物でも持ってこよう。」

「ヤダ。しばらく、もう少しだけこうしていて。」

 アルの腕の中、安心するの。守ってくれるって、頼りにしてもいいって思わせてくれる。

アルが座り、私を腿に横抱きのまま、両手で包み込んでくれる。

「ごめんね、ごめんね。アル。」

「どうして、謝るんだ?」

「アルがくれたペンダント、ウィルが怒って、取っちゃって、捨てるって。せっかく、私にくれたのに…。私、大切にしていたんだよ。」

「そのせいなのか?ごめんな。怖い思いさせて。」

「アルのせいじゃない。ウィルも…。」

 アルの背中にぎゅっと腕を回し、胸に顔を寄せる。私を落ち着かせてくれる。

「私、寝ちゃっていたのがいけないのかな?ほら、ハルンケアさんが来て、お昼寝出来ちゃったでしょう。だから、うとうと寝ちゃって。お風呂呼びに来たウィルに気付けなくて、アルとお揃いのペンダントを見て、ウィル…。」

 アルの手が背中を撫でてくれる。子供にするみたいな手付き。

「明日には、いつものウィルだよね?」

「許すのか?」

「もう二度としないって約束してくれた上で謝ってくれれば、それだけでいい。」

「こんなに震えが止まらないほど、怖い思いをしたのに?」

 アルにしては珍しい上擦った声。

「多分、これは、アルが来てくれて、安心したから。それに、私、蹲って動けないほど、ウィルにダメージ与えちゃったもん。って、言うか、大丈夫だよね?このまま、ショックで死んだり、女の子になっちゃったりなんて事はないよね?」

「正当防衛だろう。そうとう痛かっただろうけど、ショック死や女の子になる事はないと思う、多分な。確認するか?」

「誰が?」

「粋晶。」

 上目使いにアルを睨むが、効果はなさそうです。涼しい顔している。

「アル、何か飲み物が欲しい。」

「あぁ、持ってこよう。ここで大人しくしてろよ。」

「まだ、膝が笑っていて、上手く歩けそうにないです。」

 アルが私を下ろし、アルの布団の上に座らせてくれる。

「ありがとう、アル。」

「あぁ。」

 素っ気無いけど、アルの優しさ、感じる。

「ごめんね、ウィル。」

 ウィルの気持ちを知っているのに、返事出来ないままなのがいけないのかな?それがウィルの暴走の最大理由だと思う。でもね、行き成り異世界に嫁に行け、婿の候補は二人、どちらかを選べと言われて、ハイ、この人にします。って、返事出来ないよ。もう少し、約束の一ヶ月くらい、猶予ちょうだいよ。ごめんね。


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