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創地帝妃物語  作者: 宮月
13/46

13.最悪なプロポーズ

「服を着ても最悪。」

 お店をキヨちゃんに任せ、私達はリビングに移った。傍にいてとアルにもお願いして、ウィルとカスパー、ハルンケアさんの五人でテーブルを囲んでいる。

「ねぇ、いつもこんな感じなの?」

 私を挟むように座っているアルとウィル。右隣のウィルに小声で質問。

「今日はマトモな方だよ。」

 これでマトモ?

緑色の上着には、キラキラ光るゴージャス金の肩パット。細かい金糸の刺繍は唐草模様。下はピッタリ白タイツ。

着る人によっては、素敵な王子様に見えるのもしれないが、この人だと風呂敷から大根二本飛び出して、典型的なセクハラオヤジの顔が生えちゃった。みたいな絵描き歌になりそう。歌いたくないけど。

「改めて、紹介します。」

 しないでください。カスパー、お願いだから、このまま連れて帰って。

「こちらは、現王妃の長男、アース・ハルンケア様です。」

「あれ?地帝子って付かないの?」

 ウィルに小声で聞いたつもりが、ハルンケアさんにしっかり聞こえていたらしい。

光るおでこに怒りマークがよく映える。

「地帝子のセカンドネームが付くのは、僕だけ。第一継承権を持つ者だけに与えられるんだ。」

「あぁ、そうなんだ。」

 ハルンケアさんのおでこにどんどん怒りマークが増殖中。

あんまり苛々すると血管切れちゃうよ?

「こほん、で、こちらが創地帝妃の一色粋晶様。こちらは知っていらっしゃいますよね。創帝国王子、スカイ創帝子アレクサンドル様です。」

 カスパー、咳払いがわざとらしいよ。

「紹介が終わったんだ。創地帝妃と二人きりにさせろ。」

 こ、この人、何を言い出すんだ?冗談じゃない。

懸命に首を横に振りながらも、皆に助けを求める視線を向ける。

我ながら器用だ。

「ハルンケア。何のためにこちらにいらしたのですか?それを話していただけなければ、わたくし達は動けません。」

 ナイス、ウィル。

「言わずともわかる事じゃろう。正当な王家の血を引く予が創地帝妃を妃として迎え、王となる義務があるはずじゃ。それを穢れた血を持つ者が帝力だけで帝国を乗っ取ろうとするのを阻止せねばならんのじゃ。」

 この人、しゃべり方もおかしい。って云うか、何を言っている?

「創帝国も落ちぶれたものじゃ。地球人の血を王族に混ぜるだけではなく、それを帝王にさせるなど狂っておる。それは地帝国も同じじゃな。何処の馬の骨かわからぬオナゴの子供を帝王にさせようとしておる。それも帝力だけでじゃ。」

「パッチーン。」

 部屋中に響いた音。

「アンタ、いい加減にしなよね。何が汚れた血よ。何が正当な王家の血よ。アンタなんか全身が腐っているじゃない。頭の天辺から足の爪先まで身体中流れる血も全部腐敗臭で溢れかえっているじゃない。その何だかわからない理由で人を見下して、自分がどれだけ偉いわけ?ウィリバルトもアレクサンドルも、アンタに見下される理由なんてないわ。アンタなんて親の脛にしゃぶり付いているトッツアン坊やじゃない。本当に情けないわね。それでも男なの?それとも風呂敷から頭出しているオヤジの人形?あぁ、嫌ね。こんな人形、絶対にいらないわ。」

「くくく。」

 笑い声?えっ?私、やっちゃった?

あぁ、ハルンケアさんの頬肉に綺麗な手形が付いているよ。

それより誰よ、笑ったの?全員?

「何で笑うわけ?」

「一人ノリッコミ。」

「言葉回し。」

「良い事を言ってくれているんですけど。」

 三人三様の感想、ありがとう。って、暢気にしている場合じゃないよね?ハルンケアさん、叩いちゃったもん。怒っているよね?

呆然と叩かれていない頬を触っている。

もしかして、感覚も鈍いの?この間、アルの後ろに隠れちゃおうかな?

「創地帝妃様、素晴らしい。理想の女性じゃ、強く自分の意志を持ち、美しくはないが気高い。予と結婚してくれ。頼む。この通りじゃ。」

 は、はい?何か、また嫌な予感。いや、予感じゃない。嫌なんだ。

やっぱりアルの後ろに隠れる。守ってね、アル、ウィル。

「嫌です。絶対に嫌です。」

「どうしてじゃ。予じゃ、不満か?母上には宇宙一の美男子と言われておるし、金も身分もあるじょ。夜も楽しませる自信もあるのじゃ。何人もの女が、予の下で良過ぎて、失神するほどのテクがあるし、腰も強いじょ。子供を何人も作れるんだじょ。」

 何を言い出すんだ?このセクハラオヤジは。

宇宙一の美男子じゃなく、宇宙一の不男子(ぶだんし)。女性が失神するのはテクじゃなく、アンタの重さに耐え兼ねてか、我慢の限界だったから。

「嫌です。絶対ムリです。他の人を探してください。」

 泣きそうです。嫌悪感でおかしくなりそう。

「ハルンケア様、ここは一時抑えてください。」

 偉いぞ、カスパー。そのまま、帰ってもらって、一生姿を現さないように言い包めて。

「ハルンケア様。」

 うん?必死な声。もしかして、ハルンケアさんのお迎え?

「あっ、じぃ。」

 じぃ?もしかしてと思っていたが、この話し方は時代劇の間違った影響?

「申し訳ございません。皆様。」

 身体を二つ折りにして謝る、この方も頭が光っています。

あっ、この人、重臣さんだ。最初の時のカスパーとフランツと同じような軍服だ。

「ハルンケア様が多大なご迷惑をおかけして、大変申し訳ない。わたくし、ハルンケア様にお仕えしております、金光(きんぴか)重臣カールと申します。」

 金光のカールおじさんか。微妙。でも、頭は金光に相応しい。

「じぃ、予は迷惑など掛けていないじょ。創地帝妃様に求婚しておっただけじゃ。」

「ゴン。」

 除夜の鐘ですか?その位、良い音と共に、ハルンケアさんの頭に、カールおじさんの拳骨が落とされました。こんな見事な拳骨、アニメなら絶対に真ん丸たんこぶが出来るよ。

「何度言ったらわかるのですか?貴方は存在自体迷惑なのですよ。」

 何気に酷い事を言いますね。

「そういうのは、じぃだけじゃ。他の者は予がいたら嬉しいと。」

「だから、ピップサービスです。」

 それを言うなら、ビップサービスです。

カールおじさんは気苦労が絶えなさそうだから、ピップの方が良いのかもしれないけど、ね。

「さぁ、帰りますよ。すぐに出立の準備です。」

「嫌じゃ、予は創地帝妃様といるのじゃ。旅になど出ん。」

「ダメです。その汚れきった精神と肉を鍛えるためには、旅が一番なのです。大丈夫です。安心してください。今からグルグルに縛り、地帝国の一番隅まで連れて行って差し上げます。途中で焼豚にならないように、わたくしがご一緒しますから。とんぼ返りなんて甘い考えは捨ててください。さぁ、参りましょう。ハルンケア様。」

 カールおじさん、やりますねぇ。この長い台詞の間にハルンケアさんを縛り上げちゃいました。それに肉とか焼豚とか、丁寧な言い回しの中に凄い言葉を散りばめる天才ですね。

「ウィリバルト様、貴方様が地帝子になられ、私達は安堵しております。良い国をお作りくださると信じております。わたくしは、このバカの根性を叩き直すまで戻りませんが、国をお守りくださる事と、遠くのお空で応援しております。では、大変、このバカがご迷惑をおかけしました。失礼いたします。あっ、創地帝妃様、ぜひ、ウィリバルト様をお選びください。お買い得だと思いますよ。では、失礼。」

カールおじさん、ハルンケアさんをそんな風に引き摺るなんて、力持ちなのね。

あっ、そうじゃなく、そんな乱暴に扱って、平気なの?途中で死なない事を祈っております、南無。

「さすがですね、カールは。」

「大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫ですよ。カールはハルンケア様の伯父なので、多少雑に扱っても問題になりません。」

 多少?まぁ、いい。これで一難去ったんだよね?

「ねぇ、スイ。お腹空いたね。」

「そうね。私も空いちゃった。朝食にしよう。」

「私もいただけますか?」

「すぐ用意するね。」

「手伝う。」

「ありがとう。」

 嵐は去って、日常が戻ったんだよね?


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