『寿司』と羊たち
○○と羊たちシリーズは、本編のWEB拍手として掲載していたものが中心です。ゆるい日常系となっています。
早池峰家の居間。
昼食が終わり、皆がくつろいでいる所でユーリが突然口を開いた。
「最近 寿司食ってねぇなぁ。ところでさ、早池峰達って寿司食いに行ったりすんの?」
ユーリの視線の先の菊塵がゆるりと笑う。
「あぁ、たまに行ってましたね。哭士が祖父様を怖がってた頃は、祖父様に頼まれて哭士と一緒に」
「あれはじじいの差金だったのか……」
哭士がぼつりとつぶやく。
「そうですよ。孫可愛がり出来ないので、せめて好物だけでも食べさせたいと祖父様の行きつけのお店に」
「へぇー。じいちゃんやっぱり孫に甘いのな。ほんでさ、一番好きなネタって何さ? 色把は?」
聞かれた色把は少し考えた後に目を輝かせて語る。
『私は玉子です』
「色把さん、玉子とか巻物とかサビ無しばっかり食べてますよね」
『ワサビ、ちょっと苦手で……。あ、軍艦も好きです』
「やだ、かーわーいーいー! あとさあとさ、最初に食べるネタって? 早池峰は?」
「コハダ」
「……渋くね?」
「哭士、青身魚好きですよね。僕は白身魚から。おすすめで食べることが多いかもしれません」
『なんだか通、って感じですね』
「なんか、マグロ食いたくなってきた。晩飯に行かない? 回転寿司!!」
『回転寿司! 面白そうです!』
「……色把行ったことないの?」
『はい。いつもこーんな大きい桶に入ってるお寿司でした。お寿司が回ってるのは見たことないです』
胸の前で大きな丸を作り、楽しそうに笑う色把。その答えにユーリの表情が硬くなる。
「え、え。キクは行ったことあるよね? 寿司っつったら回転寿司だよね?」
菊塵が首をひねりながら語る。
「回転寿司ですか? まあ、一応はありますが、哭士と行くのはカウンターの……」
「値段が時価とか書いてるような所、とか言わないよな?」
「というか、値段も何も書いてないですね、あそこ」
「……お会計いくら位するわけ?」
「さぁ? その店はいつも祖父様が後で支払ってるので……値段までは」
「回転寿司はテレビで見たことある」
『今度連れてって下さい!』
「お前ら嫌い!!!」