吸血鬼捜査官
「ここ数年。吸血鬼が大量発生しています。先月は1万を超える数の人が亡くなりました。主に―――」
ここは、日本の首都東京。高層ビルが立ち並び、交差点では多くの人間は通行がままならないほどの人口密度を誇っている。しかしここ最近人口が減少している。大量殺人も怪異現象も起こっていない。ある「生物」の仕業なのだ。その生物とは、通称「ブラッド」。 吸血鬼だ。昼は人間の姿で生活し、夜は吸血鬼として人間を襲う。この物語は、そんな吸血鬼と人間との闘いを描いた物語である。
コンコン
「失礼します。」
「訓練兵第189番。森尾 新と申します。訓練隊長報告があります。」
「なんだ。」
「176番の金井 涼が先ほど死亡しました。」
「ふむ。なぜだ。」
「ブラッドに噛まれてしまったためです。」
「なぜ噛まれた。訓練兵は夜は外出禁止のはずだ。」
「金井は、ばれなきゃいい と言って夜の散歩に出かけたのです。」
「そうか。それなら仕方がないな。戻ってよいぞ。」
「はい。失礼しました。」
「フゥー・・・・。」
狂ってる・・・・いや、この状況になれなきゃいけないんだよな。ついさっきまで一緒の部屋で話してた金井が、ブラッドに襲われて死ぬなんて。しかもそれを報告しても顔の表情一つ変えない訓練隊長に恐怖すら覚える。いや・・・何度も死を身近で体験してきた隊長にとっては、普通なんだろうか。
「はぁ。部屋に戻るか。」
親に強制的にこの世界に入れられた俺は、日々訓練に励んでいる。月に一回行われる「訓練生加勢討伐」。いつもは吸血鬼の討伐なんてできない訓練兵が、この日だけは捜査官と一緒に討伐できる。そこで活躍すればいっぱしの捜査官になれる。といってもなれるのは捜査官の中でも一番位の低い「D級捜査官」。そこからまた上り詰めて「C級」「B級」「A級」と階級していき、最後は「S級捜査官」に到達する。俺は「S級捜査官」になり人々を吸血鬼から守るのが夢だ。そして明日はその「訓練兵加勢討伐」の日だ。
「早く寝るか。」
そういって、先ほどまで金井がいた布団をどかし、広々と一人で部屋を使った。