【4】衝撃の出会い
衝撃の出会いから1時間後、なんだかんだでイズミの手にかかってジェルネイルをしている藍が店内にいた。
不思議なもので、ネイルが完成に近づく程に色々と話もして、少しずつ藍もリラックスできるようになってくる。
ただ、このイズミというネイリスト。腕は良いのだろうが・・・
「へぇー、じゃあ藍さんは29歳にして女子力高める為にウチの店に来たんだ。単純な奴」
・・・・・めちゃくちゃ口が悪い。
「まあ、女の人が男社会で働くってのは大変だしね。それを少しでも応援できるよう、気分を上げるネイルにしとく」
「それはどうも」
「いえいえ。女の人を応援するのが俺の仕事ですから」
「・・・・・イズミさん、ホストみたいですね」
「よく言われる。昼間のホストって」
「マジですか?」
「嘘ついてどうする」
でも・・・・、嫌いでは無い。
言いたい放題なんだろうけど、その分、なんか話しやすい男だ。
手を触られながら会話するって、やっぱり心の距離も近づきやすいのかな?と、妙に感心してしまった。
それに、腕が良いと言っていたのも嘘では無かったようだ。
ジェルネイルそのものが初めてな藍は、具体的イメージが無かったので、おまかせでお願いした。
すると、仕事へも配慮されたベージュカラーをベースに、クリスタルでアクセントをつけたデザインをいくつか見せてくれた。全て自らのデザインだと話していた上品でシンプルなそれは、どれも藍の好みでツボをつく。
こんなチャラ男の外見からは想像もつかないような繊細さで、正直、予想外だった。
右手に持った細い筆で、藍の爪に次々とジェルを施していく。思わず、その仕草に見とれてしまった。
「だいたいさー美容師とかもそうだけど、女の人から指名をもらおうと思ったら会話力もいるんだよ。お客に合わせて面白い会話が出来て、次も来ようって思わせる。俺らの仕事は自分の個性を出しすぎてもダメだし、そこはホストと一緒」
「はぁ・・・、客商売も大変なんですねー。でも充分、個性強いと思いますよ」
「え?どこが?」
「そーゆー返しがくるところ。正直、初対面でこんなにズバズバ返してくる人、私は初めて会いました」
「あー・・・・、藍さんってなんか話しやすいのかも。よく言われない?」
「言われます・・・。業種のせいかもですけど、人に合わせるの苦じゃないんですよねー」
「恋愛もそんな感じなんだろなー。苦労するよー」
「見てきたかの様に言わないでくださいよ」
「え?違うの?」
「・・・・・・・・いや、違いませんけど・・・」
「ほらな、やっぱり」
本当に・・・口と性格さえ悪くなければ最高なのに。。。。
若干、ネイリストの言いたい放題に藍がイラついてきた頃、予想外な言葉が相手から出てきた。
「結局、合わせてるのは表面上だけで、いざとなると肝心なところ譲らないでしょ。本当はめちゃくちゃ気が強いのに、その本質を理解してもらえなくて、相手の理想と現実のギャップに苦労して自分から別れたいとか言ったことない?」
・・・・・・先週、恋人と別れた原因がソレです。
会って1時間のネイリストの勘の良さに、藍は改めて衝撃を受けた。




