わたしは水の妖精
童話書くのって、なんだかはまりますね(笑)
まだまだ初心者の私ですが、良かったら読んでください!
旅の途中、私の前に不思議な生き物があらわれた。
「君はだれ?」
「わたしは水の妖精よ。あなたは?」
「ただの旅人だよ。」
「旅人さん。ねえ、あなたはどうして旅をするの?教えてください。」
「それは、見つけたいモノがあるからよ。」
「あなたの見つけたいモノって、なに?」
「それはね……愛、だよ。」
まったく、不思議な生き物だなぁ。
私のことを知ってどうするんだろう。
私はただの旅人なのに。
「愛、かぁ。わたしはね、水の妖精だから、誰かを幸せにする水を見つけたいんだ。」
「誰かを幸せにする水ってなんだい?」
「わからないの。だから探しているの。あなたの愛は、見つかった?」
「まだだよ。だからこうやって旅をしながら、探しているのさ。」
「ねえ、私と一緒に旅をしましょう、旅人さん。あなたの探す愛と私が探す幸せの水は、なんだか似ている気がするの。」
「それはいいね。じゃあ、一緒に行こうか。」
「ええ、行きましょう。」
二人の旅は、ここから始まった。
愛ってどこにあるんだろう?
山を越え、谷を越えてもそれは見つからない。
幸せの水って一体なんだろう?
川を渡り、海を越えてもわからない。
見つからないんじゃと思うときもあった。
足が動かなくなったこともあった。
旅を止めたくなったときもあった。
でも二人はおたがいを励ましあいながらゆっくりと、ゆっくりと歩き続けた。
旅の中で、長い年月が二人の間に過ぎていた。
最初はペースが合わなかった二人だが、だんだんとペースが合い、仲良くなっていった。
いつのまにか、二人は砂漠の真ん中に来ていた。
二人は今までの旅で疲れきってしまった。
「水の妖精さん。私もう疲れてしまったし、喉もからからよ。ねえ、私の目の前にオアシスでも作ってよ。」
旅人は冗談めかして言ったつもりだった。
「わかったわ旅人さん。でも、わたしも疲れてしまったわ。きっと、わたしはオアシスを作るので精一杯よ。」
「それってどういうこと?」
旅人は尋ねようとした。
でも、その言葉が出るより早く、水の妖精は杖を振り上げた。
辺りをぱっと光が包み、旅人はとっさに目をつむる。
おそるおそる目を開けるとそこには、
とてもとても広大で、誰も見た事が無いほど美しいオアシスが広がっていた。
でも旅人は目の前のオアシスより水の妖精を探した。
水の妖精は旅人の足元で倒れていた。
「ねえ……水の妖精さん。聞こえているのなら、返事をして。ねえ……!」
水の妖精が返事をする事は無かった。
旅人は急いで水の妖精をオアシスの水に浸した。
「お願い、目を開けて。」
「お願い、またいつもみたいに喋ってよ。」
「まだ私、あなたと一緒の旅がしたいわ。」
ずっとそんなことを呟きながら、一晩中そうしていた。
旅人はオアシスの水を飲む暇もなければ、
少しでも眠る暇も無かった。
そして水の妖精が目を開けたのは、次の日の朝のこと。
「良かったぁ……」
「旅人さん……私を助けてくれたんですか?」
「うん。私にとって、あなたはとても大切な存在だった。あなたが倒れて、私はそれに気がついたの。」
「そうですか。ならきっとそれが、愛ですよ。」
水の妖精はにっこり笑って旅人を指さした。
そうか、これが愛なのか。と、旅人は心が温まるのを感じた。
旅人の笑顔がオアシスと妖精の瞳に映っている。
「愛って……不思議ね。それでいて……とても、素敵ね。」
「やっとあなたの愛が見つかって、良かったですね。」
妖精はふふっと笑って、旅人を見つてめいた。
しばらく二人でそうした後、旅人は辺りを見回すと、オアシスを指さして言った。
「ねえ見て、妖精さん。あなたの作ったオアシスに、たくさんの人が水を求めて来ているわ。このオアシスは、きっと人々の心のオアシスになるわ。これが、幸せの水なんじゃないかと、私は思うわ。あなたは?」
「いいえ、これは違うわ。これは幸せの水ではありません。」
「どうして、そう思うの?」
「なぜならわたしが、幸せが何なのかまだわからないからです。それじゃあ幸せの水が何なのかなんて、わかるわけ無かったのです。ごめんなさい、見つかるわけないものを探すのに、あなたを巻き込んでしまって。」
「そんなの全然、いいんだよ。そうだ、じゃあまた二人で、旅に出ようよ。私の愛はもう見つかったけれど、今度はあなたの幸せを探しに。」
「ありがとうございます……旅人さん。」
「いいの、あんまり気にしないで。私が愛を見つけられたのは、あなたがいたからなの。今度は、私があなたの役に立ちたいわ。」
二人の今までの旅の疲れは吹き飛んだかのように消えていた。
そして、また二人は旅に出た。
いつかの山を越え、いつかの谷を越え、
いつかの川を渡り、いつかの海を越えた。
二人はもっとゆっくりとゆっくりと歩き続けた。
さらに長い年月が二人の間に流れていた。
すると二人はいつの間にか、二人が出会った場所に戻ってきた。
長い年月の間で旅人は老いてしまっていて、
もう旅をする体力は残ってなかった。
だから、二人は旅人の家で暮らしていた。
「私、そろそろ死んじゃうかも。」
ある日、もう動けない旅人はぽつりと言った。
「おねがい、やめて。寂しいよ…………」
妖精はぐっと涙をこらえて、かすれた声でそう言った。
「でも妖精さん。幸せも、幸せの水も。そろそろ見つかるんじゃない?」
「そんなわけないよ。あなたが死んじゃうのに、幸せが見つかるわけが無いよ…………」
「いいえ。今、私が幸せなの。だって、こんなにも良い友達を持てたのだから。」
その時、旅人がぽろりと涙を流した。
つられて、妖精もぽろりと涙を流した。
「あっ…………」
「わかった? 幸せが何か。」
「うん……なんだかわかったわ。幸せって……不思議ね。それでいて……とても、素敵ね。」
「そう、やっと見つけたのね。やっと、あなたの役に立てたのね。なら…………良かった………………」
そう言い残して旅人は目を閉じた。
息を引き取ったのだ。
「ありがとう…………旅人さん。あなたがいなかったら、わたしはきっと幸せを見つけられなかったわ。」
私、ずっと幸せだったんだね。
今、気づいたよ。
やっとわかったよ。
幸せの水のことも、全部。
あなたのおかげで。
「ありがとう、
さようなら。」
わたしは水の妖精。
また旅にでています。
今回は一人旅なの。
それで、今度は奇跡を探しているんだ。
幸せがどんなものかわかったから、旅がとても楽しく思えるの。
これもあなたのおかげね。
一人はやっぱり心細いけど、あのオアシスを見るたびに心が温かくなるのを感じるわ。
これが、あなたの探していた愛なのね。
そうそう最近、道行く人にね、幸せの水を配っているんだ。
え?幸せの水は配れるものじゃないって?
そうかもね、でも、
そろそろ、私の探しているものが見つかりそうなんだ。
また、あの場所で。
「君はだれ?」
「わたしは水の妖精。あなたは――
いつかの旅人さんですか?」
「水の妖精さん……久しぶり。探しているものは、見つかった?」
「たった今、見つかったよ。ありがとう、旅人さん。」
「そっか、良かった。次は何を探そうか。」
「そうね、次は―――― 愛も、幸せも、奇跡も見つかった。何にしようかしら。そうだ……旅をする、意味を探しに行きましょう。」
「それはいいね。じゃあ、行こうか。」
「ええ。行きましょう」
きっと、旅は終わらない。
わたしが水の妖精である限り。
何度でも、君に会えるから――
山を越え、谷を越え、川を渡り、海を越えて。
意味を探して、奇跡は何度でも見つかって。
次は何を探そうか?
至らない部分が多かったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
感想やアドバイスも待っています。