ACT.4
ノリとその場の勢いって大事だよね
――カルフェス2日目
『皆さんこんにちは~。 昨日襲撃があったもののカルフェス2日目です。
多くの先生は、 後日延期を推していましたが、 生徒会役員や、 残りの先生たちの意見もありこのまま続けるそうです。 リサ会長続行を推した理由は? 』
放送しているのは、 昨日と同じ芦原 暁。 続行する理由を生徒会長であるリサ・エリスに聞いている。
『正直に言わせてもらいますと、 3年生にとって後日延期は辛いものがあるというのが理由の1つです。 』
会長の答えに会場に笑みがこぼれる。 会長綺麗や、 可愛いなどの声が端々から聞こえる。
『マジですか? 』
『マジです。 もう1つは、 カルフェスを楽しみにしている方が多く居らっしゃるので、 そのご期待に応えようというのもあります。 』
なるほどと一言挟み、 暁はこれからの予定を話していった。
要約すると、 以下のとおり。
・KNIGHT‘S HONOR は各1回戦のみ行う。
・閉場時間を早める。
・教師や生徒に質問される可能性が増える。
『それでは、 2学年KNIGHT‘S HONOR が開始されます。 実況は芦原 暁が勤めます。 解説は、 生徒会長のリサ・エリス先輩と、 副会長の連城 彩姫先輩の御二人です。 どうぞ宜しくお願いします。 』
『よろしくお願いします。 』
『こちらこそよろしくお願いします。 』
リサは金髪のロングヘアーで、 彩姫は黒髪のロングヘアーである。
こう、なんかロングヘアーって良くね?
え? そんな事はどうでも良いからさっさと進めろ?
何で伝わんないかなこのロングヘアーの素晴らしさが!!
あ、 止めろ。 意思投げんな。 じゃねぇ、 石を投げるな。
スイマセン、 本当スイマセン。 石投げないでください。
ふぅ、 気を取り直して、 続けます。
『本日の来訪者が多く闘技場に入りきれずに、 会場の外で中継用モニターの席の陣取りが激しい様ですが、 そこをリサ会長と、 彩姫先輩はどう思いますか? 』
『そうですね。 来訪者の多さに私自身驚いていますが、 多くの方は第1試合を見る為に来ているのではないでしょうか。 』
暁の質問に、 理由は初戦にあると答えるリサ。 彩姫が更に掘り下げる。
『2学年の初戦の対戦カードが、 対戦カードですから。 学園三指且つ、 十傑の1人。 クリストファー卿の嫡子であり万事屋の一員ウィリアム・クロムウェル君。 この子の戦う姿が見たいのでしょう。 キチンと行われていた場合、 第2試合の勝者恐らくジークハルト・レヴィン君が上がってきたでしょうね。 との戦いを大いに期待していたというのを耳にしましたしね。』
『なるほど。 ウィリアム先輩の実力は、 耳にする事が多いですからね。 そのウィリアム先輩の対戦相手は、 解説の先輩方と同じく生徒会役員の一員で副会長を勤め、 ウィリアム先輩と同じく万事屋の一員、 陸奥友斗先輩ですね。 』
暁の紹介に合わせて、 リサが友斗に関することを言う。
『友斗君は生徒会のムードメーカーですね。 場が明るくなりますね。 面倒臭がりなところもありますが、 根は良い人ですね。 実力に関しては……』
『関しては? 』
言い淀むリサに、 友斗の実力を聞き出そうとする暁。
『並ですね。 』
『並ですか? 』
『リサがおっしゃったとおり友斗君の実力は、 頗る良くも、 悪くもないんですのよ。 』
『実力に関しては、 普通であると。』
『その通りです。』
暁の結論に2人の答えがハモる。
『まもなくKNIGHT‘S HONOR 2日目第1試合、 ウィリアム・クロムウェルVS陸奥友斗が始まります。 』
学園に暁のアナウンスが響き渡る。
† ‡ † ‡
怠い、 面倒くせぇ、 かったりぃ、 帰りてぇ。
なんで俺の相手はウィルなんだよ。
誰だよこんな対戦カード組んだのは?
くじ引きを引いてもらって決めてるから俺じゃねぇぇかぁ、 ワリィの。 凹める。
くじ運悪すぎんだろ、 俺。
『まもなくKNIGHT‘S HONOR 2日目第1試合、 ウィリアム・クロムウェルVS陸奥友斗が始まります。 』
うがぁ。 行きたくねぇけど行くっきゃねぇ。
両手で頬を叩いてから深呼吸する。
「ふぅ、行くか。 」
ま、 なるようになんだろ。
闘技場に一歩踏み込むと、 ウィルへの黄色い声。 男性も応援してんなぁ。
そんな中両手をズボンのポケットに突っ込みながら、 背を若干丸めながら中央まで移動する。 アレ? なんか惨めじゃね? 気にしねぇけど。
ウィルと対面する。
「カッカッカッ、 大人気だな、 ウィル。 」
「まぁ、 応援してもらえるのは嬉しいが、 ここまで来るとな。」
「応援してもらえる分良いやんけ。 されすらしないのはきちぃぜ。 」
ケラケラ笑いながら言ってるけど内容が悲しいな俺。
「友斗を応援している者もいるがな。 」
「えぇ、 即降参出来ねぇじゃん。 」
首を左右に傾け、 肩を回し、 指を鳴らし、 左手で右手首近くを持ち右手首を回し、 同じように左手首も回す友斗。
屈伸やアームプルやエルボープル、 オープンスクワットなどのストレッチをするウィル。
「まぁ、さっさと初めて終わらせようかぁ。 」
正面を向き右手をブラブラさせ、 右目を閉じている友斗。
「始めるとしようか。 」
左手でフィンガースナップをするウィル。
「「5分で終わらせる。
……勝つのはどっちだろうな?」」
『READY!
FIGHT!! 』
2人が言い切るのと同時に、 試合は始まった。
先手は友斗の右足によるハイキック。 それを、 左腕で側頭部を守るウィル。
それを狙ったかのようにミドルへ軌道を変え腹部への一撃。 横へ飛ばされるウィル。
そのまま、 炎の槍で追撃する。
自分から横へ飛び、 衝撃を逃していたウィルは体制を立て直し、 追撃を水の壁でやり過す。炎槍と水壁の衝突で蒸気が辺りを包む。
視界が晴れた際に、 観客たちが見たのは闘技場中央に佇立するウィリアムの姿と、 闘技場の端までぶっ飛ばされている友斗の姿。 最後に見たのとは真逆さまな光景。
『蒸気が発生するまでと発生し晴れるまでの間に、 立場が逆転しているー!!
あの短時間で一体全体何が起きたのかァ!? 』
『…………』
興奮する実況と言葉がでない解説の2人。
立ち上がる友斗に歩を進めるウィル、 そして、 静けさに包まれる闘技場。
そんな中、 手を挙げ軽く振りながら
「降参するわ。 」
友斗は負けを宣言した。
『決まったァ!! 勝者はウィリアム・クロムウェル! 』
『あの蒸気の中で起きたことは、 分かりませんね。 』
『私達には知る由もありませんわね。 』
試合終了と勝者を宣言する実況の暁。 蒸気の中で起きたことが気になるが、 分からず終いなリサと彩姫。 歓声が上がる闘技場。
『入ってきた情報によると試合時間は約3分。 始まる際に5分で終わらせると言っていた2人。 5分以内に終わらせたぁ!』
これに観戦していた者たちは目を見張った。
あの蒸気の中で起きたことは神――作者――のみぞ知る。