ACT.2
日差しが暖かくなり始める初夏――
トルニア魔法学園を北に幾許か行ったと所にあるとある山。
蒼々たる樹木は目に余るほどであり、 鳥の囀りなどが聞こえてくる。
この場にいるのは友斗、 ジーク、 ウィルの3人。理由はこの時期になるとトルニア魔法学園では、 在校生たちにクエスト――勿論ギルドと連携した物――をこなさせるからである。
「さてと、 クエストの内容でも確認しとくか。 」
殆どの人ははじめまして。 あんまりいねぇと思うけど、久々の方はどうも。 陸奥友斗です。
確認すんのは、 単純に「どんなんだったっけ?」 っていうのもあんすけどね。 実際は、幾つか掛け持ちしてんすよ。
「1つ目は、 蜂蜜の採集。瓶で3つぐれぇだな。 んで、2つ目は鉄鉱石の採掘ぅ。 なりふり構わねぇで、 20個ォ。 最後h」
「最後にバードラ20頭とドスバードラの討伐だな。」
「何で俺のセリフを取るのかね? お前は。 」
「そんなもの決まっているだろう。 俺の出番が無いからだ。 」
「何なのお前は? そのうち出番なんて来んだろうが。 」
「この作者では、それすら怪しいのだよ。」
……と口論してんのはジークハルト・レヴィン。通称ジークとウィリアム・クロムウェル。こっちはウィルね。 2人揃って嫌になるくらいの容姿端麗なんだよなぁ。 異性は勿論同性にもモテる。 だから、たまに女子との仲介役になったりする時も屡々ある。 アレ? なんか目から汗でそう。
ここで簡単に2人の紹介をしとこうかね。 容姿は全話参照ね。 ジークは情報通だね。 アナログでもデジタル両方のコネがある。 さらにハッキングまた、 クラッキングが得意。 それを活かして俺たち万事屋が各々持ってる手帳はある意味武器。 そして所謂、天才っていう奴かな。
ウィルはクリストファー卿――クリストファー卿は公爵――の嫡子ね。
万事を並以上にこなす鬼才だね。 んでそれを鼻にかけないというね。
因みに試験学年1位なんだよね。 全国でも8強に入る。
クエストの依頼主は順に商人・鍛冶屋・商人隊ね。俺らの知り合いだけどな。
「口論は後でヤレっちゅうの。 んでどうする? バラバラで行くか。 それとも纏まって行くか?俺は、纏まって行く方に1票な。」
これは結構重要なとこなんだよねぇ。
「俺は、纏まって行くに1票だな。 そちらの方が安全だろう。 最近は危険になったからな。 」
これは、ウィルの弁。 対してジークの弁は、
「俺も纏まって行くだなぁ。 最近は、 モンスターたちも活発っつうか凶暴? になってるからな。 下手に1人になるよりかは良いんじゃね? 」
最近になってモンスターたちは――ジークやウィルの言うように――凶暴化してる。
噂では、連合国が裏で1枚噛んでるとか、 なんとか。 所詮噂でしかないけど。
そうして、俺たちのクエストは幕を開けた。
†★☆†
件の3人は、談話しながらも蜂蜜を採取したり、 鉄鉱石を採掘したり、 バードラを討伐したりと、クエストをこなしていっている。
クエストも終了間際――蜂蜜は1瓶といっても残り3/1とバードラをあと1頭討伐――に、ジークは周りを見渡しながら話しだした。
「そういや、 お前ら知ってっか? 1年の話なんだけどよぉ。 」
「多分な。 」 「恐らくな。 」
既に知っている感じの2人の返答に、
「んだよ。 そこは知らないって答える所だろーよ。 」
詰まらない調子で呟くジーク。
「まぁ良いから話してみ? 俺も細かい所まで把握してるワケちゃうし。」
「俺も妹から聞いただけだからな。 十分には知らないんだよ。 」
「知ってても知らなくても結局は話すんだけどな。 」
そんなおちゃらけなジークに、 じゃぁ最初から話せよと思った友斗とウィルが思ったのはここだけの話。
「大体1月ぐらい前だな。 1年生同士が騒ぎを起こしたのよ。 理由は女生徒に手をだそうとした坊ちゃんを男子生徒が止めて、そこから口喧嘩。 んで決闘へ。 っつう流れだな。」
「それどんな主人公気質? 」
「気にしたら負けだな。 友斗。 続けるけど、 下馬評では坊ちゃんこと、パーシヴァル・ビリンガム、ジェイミー卿の息子だな。 が優勢だったんだが、 蓋を開けてみれば男子生徒こと、 ハル・ロイドがパーシヴァルの油断・慢心をついた作戦勝ちっつう話よ。 」
「パーシヴァルか。 実際に見たことがあるが、 自分以外を格下と思っている節が見て取れたな。」
「先手は譲ってやろう。 とか言って、1撃でやられるっつうのもなぁ。 」
事のあらましを説明し終えたジークに、 パーシヴァルの印象を語るウィル。そして、どんだけ油断してんだよと思う友斗であった。 話しながら、 聞きながらもクエストは終わらせている辺り抜け目ない3人である。
そんな3人は山から帰ってる最中である。そんな中、ジークがまた話しだす。
「そういや、 例の女生徒の名前なんだけどさぁ。 櫻田 舞彩」っていう娘なんだけどさぁ。 お前ら知ってるか? 」
「知らないな。 」
「知ってるわぁ。 」
知らないと答えたのはウィル、 知ってると答えたのは友斗。
「何で、 知ってんだ友斗。 」
友斗に到頭春来たんじゃね? とジークとウィルが思ったのは此処だけの話。
「俺のバイト先の1つのお得意様だからな。 まっ、 俺が一方的に知ってんだけどな。
櫻田神社の巫女で娘さんだろ。 見た印象はほんわかしてて和む女の子だったな。 」
何故か櫻田 舞彩の話している友斗に納得した様子のジークとウィル。
そして、何か思い出したようなジーク。
「確か例の1年生たち。 ハル、 パーシヴァル、 櫻田。 他に3人がここに居るらしいぜぇ。 」
「面倒事が起きそうな予感がするな。 」
何かが起きそうだと予想し、 顔を引きつらせるウィル。
「え、 何? パーシヴァルはベ○ータポジ? 敵だと思ってたらいつの間にか味方っていうオチ? アレかハルっつう奴は、7つ集めれば願いが叶う球でも探してんの? 」
パーシヴァルがハルと仲良く成ってるのを「だから何処の主人公なのコイツは? 」と思ってる友斗。
山から出ようとした3人。 山の中からナニカの声が聞こえる。 その後に悲鳴が聞こえる。
その鳴き声と悲鳴に顔を引きつらせる3人。
「……なぁ、 この鳴き声ってさぁ。 」
溜息をつきながら2人に問いかける友斗。
「十中八九、 チラノレックスだな。 」
頭を悩ますジーク。
「例の1年生たちだな。 それで、どうするかね? 」
最早達観している様子で話しつつ、 これからどうするか確認するウィル。
そんなもん決まってんだろ的な視線を送る友斗。 長年の付き合いなのかアイコンタクトのなせる業で一斉に選んだ選択肢は 『良し。 逃げるぞ! 』
逃げるだった。
その3人の後ろから途轍も無い速さで追い抜かしていく集団。
山を完全に出た所で息を切らして休憩している6名。
「お兄様。 先輩方。 どうして、助けてくれないんですか? 」
そんな中話しかけてきたのは、ウィルと同じく金髪碧眼で結い上げているがそれでも腰近くまでの長髪をしているのは、 ウィルの妹クリスティーナ・クロムウェル。 可愛いらしい娘である。
「クリス知ってんの? 」
クリスに聞いてるのは、 赤髪茶眼の短髪をツンツンにしているのは、 ハル・ロイド。
「ハイ。 私の兄様と、 御友人のジークハルト先輩、 友斗先輩とです。 」
これが、 後々の騒動の中心地に居るハル・ロイドたち6人と万事屋の3人の邂逅だった。
――9名が出会ったのは初夏。
――雲が一切なく晴れ渡った蒼天であった。
執筆って難しいね
楽しいから良いんだけどね