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幻風景

【幻風景】幽木の憂鬱

作者: はまさん
掲載日:2026/06/18

 公園にある桜の老木が、危ないということで、ついに切り倒されることになった。

 それは仕方ないと思っていたが、切られて数ヶ月後。そこに桜の幽霊が生えていることに気づく。


 残業で遅くなった帰りだ。駅からマンションまでの帰路、公園の近くを通る。そこで初夏の季節外れなのに、春の香り。桜が咲いている。

 するとあの桜の切り株があった場所から、透けた幹が延び、朧気な枝葉が夜空に展がっている。そして月光に照らされて、淡く光る花を咲かせているのだ。


 この桜の幽霊。いかにも幽霊らしく、日の光の下では消えてしまう。また自分しか見えてないのか、他に誰も気づいていないのか。誰も噂しない。

 ただ季節関係なく桜が愛でられるのは、ありがたい。

 僕は帰りの遅くなった時、また夜のコンビニへの散歩途中。幾度となく桜の幽霊をぼうっと眺めた。


 ある夜、公園のベンチに座り、コンビニで買ったビールを開ける。そこで僕は桜の幽霊に問いかけた。

「無念でもあって幽霊になったのかい?」

 樹木にそんなものあるはずがない。毎年のように花を咲かせようとして、気づいたら幽霊になっていたとの返答。

「それなら仕方ない」


 ただ無念があるとしたら、夜にしかいられないので光合成できない。昼になると自分は消えてしまう。これだと気が滅入る。

「なるほど、一理ある」


 今度、投光器でも人から借りてみるかな。そしてライティングしてやるのだ。

 夜闇に浮かび上がる、幽霊の桜。天へ向けた投光器はきっと風の代わりとなって、桜吹雪が空へ舞い上がる。そして何枚かは星となって輝き続けたら良いのに。

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