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灼熱

〈春寒きATMの孤獨かな 涙次〉


【i】


殲滅された「ニュー・タイプ【魔】」(前回參照)。魔界入りしたヘルメース神(前々回參照)は、のつけから後ろ立てを失ふ事となつた。今更「オールド・ウェイヴ【魔】」に接近し、鞍替へをするのも何だと思ひ、ヘルメースは「よし、こゝは一匹狼で行かう。第一その方がカッコいゝや」-と云ふ譯で、單獨で【魔】の看板を掲げる事にした。



【ii】


主神・ゼウスの判断に依り、ヘルメースは天界・オリュンポスを追放された譯であるが、實を云ふとオリュンポスの神々は、さる(人間の)右翼團體と、係爭を抱へ込んでゐた。神々は、日本移住に際し、オリュンポス山に擬へて、富士山を占領してゐたのである。で、その右翼團體、「それは領土侵犯と云ふものだらう。特に富士のお山は、靈山であり、日本國の象徴と云つてもいゝ。其処を占領されては、日本民族の沽券に関はる」と、いちやもんを付けて來てゐた。



【iii】


まあそれは強請(ゆすり)行為であつたのだが、神々の傳令として、渉外担当をいつもさせられてゐるヘルメース、彼を欠いては、話が進む譯がない。ヘルメースは、云つてみれば「人間通」であつた譯だが、ゼウスのやうな「上から目線」の過ちは決して犯さなかつた。ゼウスは* 彼の家系の長兄・冥王ハーデースのやうには、無盡藏の富は持つてをらず、その分吝かつた。「カネなら出せん」一點張りでは、上手く行くべき交渉も、滯つてしまふ。ヘルメースは、其処はまあ適当に鼻藥を利かせて、この問題に当たつてゐた。



* 前シリーズ第166話參照。



【iv】


上記の話、膨らませれば一話丁稚上げる事も可能である。だが、今回の本筋とは一致せぬ事なので、これはだうやら余談としなければならぬやうだ。たゞ、ヘルメースの愛する混沌とはそぐわぬ形で、ゼウスは行かうとしてゐたのだ、と云ふ事。本來、カンテラや怪盗もぐら國王のやうなアウトロウを許容してゐる日本は、ヘルメースにとつて「樂土」と云つても良かつた。それは、前々回彼が云つた事とは矛盾してゐるのであるが、ヘルメースはまたその矛盾、と云ふ行き方をも愛してゐたのである。



【v】


運命の定めるところに依り、目下の仇敵として、ヘルメースはカンテラ・國王に対峙してゐる。彼の考へでは、本當はカンテラ・國王は好もしい存在であつた筈なのに、一度斬られたと云ふ事實は重かつた- さつさと話を進めやう。國王は、圖體こそでかいが、戰闘面に於いてはからきしで、雜魚と云つて良い。問題はカンテラである。彼と干戈を交へる事は、いかな百戰錬磨のヘルメースとて、避けなければならない事だつた。「これは、術、だな」とヘルメース、一人ごちた。



【vi】


作者、ぶつちやけ成り行き上、この『カンテラ』物語に於いて、火vs.水、灼熱vs.ブリザードの戰ひは數多く描いて來た。それと云ふのも、カンテラが火焔のスピリットである事に端を發してゐる。其処で、火vs.火ならだうだ、と云ふ或る種の實驗がしたくなつた。ヘルメース神のキャラクターに託つけてゞある。



※※※※


〈臨終の猫お前また思ふのか揺り籠もなき出生の事 平手みき〉



【vii】


ヘルメース神、別名をメルクリウスと云ふ。英語訓みならマーキュリーである。聰明な讀者なら、水星つて確かマーキュリーだよなあ、と思ふ筈。水星、と日本語で書くと、まるで水の惑星のやうだが、實際には太陽系で最も太陽に近い軌道を周つてゐる、灼熱の惑星なのだ。それがヘルメース神にも叛映されてゐる。



【viii】


カンテラは正直、火に依る攻撃なら易々と受け止める事が出來る、と考へてゐた。ところが、ヘルメースが發した炎は、カンテラの想像を遥かに上回る温度で、カンテラ思はず、「あちゝ!」と悲鳴を上げた。これがヘルメースの所謂「術」なのである。カンテラ、敗走と云ふ(記憶に殘る劃りで)初めての屈辱を味はゝねばならなかつた。



【ix】


で、カンテラとつくりと考へた。この屈辱に付ける藥はないものかと。その考へに依ると、ルシフェルの助言がだうやら、効能がありさうだ- カンテラ、* 眞夜中に仲本堯佳の躰を脱け出して墓に帰つてゐるルシフェル、彼に問ふてみた。ルシフェル、言下に、「莫迦だなお主。お主はいつもぴゆう(ぴゆうちやんの事)が、風をエネルギーにしてゐるのを見てゐるのぢやらう? ヘルメースの發した熱を、お主もエネルギーに變へてみよ。負けて悔しかつたら、さう云ふ手しかないのを、悟れよ」



* 當該シリーズ第38話參照。



【x】


躰よくやり込められた譯だが、カンテラ、それもさうだな、と物事の道理の基本を學んだやうな氣もした。其処で「修法」に依つて自己暗示を掛け、ヘルメースがまた灼熱で攻撃して來たら、その熱を使つて自分を活性化するやう、仕向けた。



【xi】


果たして、ヘルメースは再度、熱を放射して來た。カンテラ、「同じ手は二度喰はん。見てをれ」-* 白虎と合力するより、己れを強くさせる物- それは放射されて來る熱であつた。カンテラ、拔刀し、「しええええええいつ!!」と再びヘルメースを斬つた。



* 前シリーズ第73話參照。



【xii】


「はつ」目醒めたヘルメースは、神の坐で居眠りをしてゐた自分に氣付く。「夢だつたのか...」(彼は眠りの守り神でもある)。だが、見慣れぬ剣創が二条、彼の躰を走つてゐた。彼は明らかにカンテラを舐めてゐた自分の不明を恥ぢた。



【xiii】


彼は、カンテラ・國王宛てに、國王から横取りした分のお寶を、送り付けて來た。國王、「さて、カネも落ちて來たし、これでお開きだ。この話は」-カンテラ「さうだといゝんだがなあ」。お仕舞ひ。



※※※※


〈朧月冱ゆる空との矛盾かな 涙次〉



PS: 作者にとつては、一度書いたプロットを破棄してのリヴェンジである。其処で、カンテラにもリヴェンジの機會を授けてみた。お氣に召せば、身の倖ひとします。永田。


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