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因習の胎動 ー「因習村」は、どのようにして生まれるのだろうかー  作者: 無機色


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5/10

太一の日記(抜粋)

葉月 己酉


 今日は一日中、あの化け物のことが頭から離れなかった。

 ――あれは一体、何だったんだろう?

 黒いツノが四本あって、輝く大きな眼が俺をじっと見つめてた。

 あの眼……暗い闇の中に浮かぶ光のようで、どこか吸い込まれそうな感じがした。

 どれだけ逃げようとしても、その視線が俺を追いかけてくる気がする。閉じた瞼の裏側に、あの眼が、あの爪が、焼き付いている。


 夜になるとあの化け物が夢に出てきた。

 四つの腕を広げ、俺に向かって近づいてくる。体が凍りついて逃げられないまま、目の前であの口が開いて、何かを言おうとしているのに、俺には何も聞こえない。起きたときには冷や汗がびっしょりで、息が上がっていた。


 父さんも母さんも、何も気づいていないらしい。俺は、あの日からおかしくなってしまったのかもしれない。でも、どうすればいいのか分からない。誰かに話したとして、信じてくれるのか?

 あれが本当に存在していると……。


 ―――


 葉月 戊午


 またあの夢を見た。

 あの化け物が、俺を探しに来る。

 あの冷たい眼、ぎらぎらした爪。

 俺のいる部屋の外にいるのが分かる。

 壁の向こうから、じっと俺を見ているんだ。

 逃げられない、あいつからは逃げられない。

 夜になるたび、あいつがここにいる気がして、眠るのが怖くてたまらない。


 母さんが「大丈夫?」って聞いてきたけど、何も言えなかった。こんなこと、話せるわけがない。でも……どうしても、このままじゃ、俺はおかしくなってしまう。あの眼……あの眼が忘れられない。俺の心の中に食い込んで、離れない。

 どうして俺なんだ?

 どうしてあんなものを見てしまったんだ?

 もう一度山に行く勇気なんてない。

でも、もしあの時あの場で逃げなかったら、今頃俺は……どうなっていたんだろう?



 ―――



 逾樒┌譛医??逋ク莠・


眼、眼、眼が。あの眼が見てる。昼も夜も、目を閉じても、あの眼が。あの黄金色の瞳が、俺を追いかける。

逃げられない。

壁も天井も、どこを見てもあの眼がじっと俺を見ている。あの手、あの口、あの爪、全部、全部、俺に伸びてくる。

どうして、どうして俺のところに来るんだ。

俺は何もしていない。

裏山に行かなければよかった、こんなことになるなら……!


 ……笑ってる?いや、違う。笑ってるんじゃない。じっとして、動かない。でもこっちを見ている。俺の心を食い尽くそうとしているんだ。

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げられない、逃げられない、逃げられない!

どこにいても、どこにいても、あいつがいる!


 ―――


(ここから日記は殴り書きのような状態で乱れ、以下の文章は不明瞭。判読可能な部分のみ抜粋)


 ―――


 逾樒┌譛医??蟇?コ・


あの眼があの眼があの眼があの眼が。俺を見ている。何をしても、どこにいても。

逃げられない逃げられない逃げられない逃げられない。俺は俺は俺は……!


頼む、俺を放っておいてくれ。俺の頭の中に入ってくるな。俺は俺は……

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