太一の日記(抜粋)
葉月 己酉
今日は一日中、あの化け物のことが頭から離れなかった。
――あれは一体、何だったんだろう?
黒いツノが四本あって、輝く大きな眼が俺をじっと見つめてた。
あの眼……暗い闇の中に浮かぶ光のようで、どこか吸い込まれそうな感じがした。
どれだけ逃げようとしても、その視線が俺を追いかけてくる気がする。閉じた瞼の裏側に、あの眼が、あの爪が、焼き付いている。
夜になるとあの化け物が夢に出てきた。
四つの腕を広げ、俺に向かって近づいてくる。体が凍りついて逃げられないまま、目の前であの口が開いて、何かを言おうとしているのに、俺には何も聞こえない。起きたときには冷や汗がびっしょりで、息が上がっていた。
父さんも母さんも、何も気づいていないらしい。俺は、あの日からおかしくなってしまったのかもしれない。でも、どうすればいいのか分からない。誰かに話したとして、信じてくれるのか?
あれが本当に存在していると……。
―――
葉月 戊午
またあの夢を見た。
あの化け物が、俺を探しに来る。
あの冷たい眼、ぎらぎらした爪。
俺のいる部屋の外にいるのが分かる。
壁の向こうから、じっと俺を見ているんだ。
逃げられない、あいつからは逃げられない。
夜になるたび、あいつがここにいる気がして、眠るのが怖くてたまらない。
母さんが「大丈夫?」って聞いてきたけど、何も言えなかった。こんなこと、話せるわけがない。でも……どうしても、このままじゃ、俺はおかしくなってしまう。あの眼……あの眼が忘れられない。俺の心の中に食い込んで、離れない。
どうして俺なんだ?
どうしてあんなものを見てしまったんだ?
もう一度山に行く勇気なんてない。
でも、もしあの時あの場で逃げなかったら、今頃俺は……どうなっていたんだろう?
―――
逾樒┌譛医??逋ク莠・
眼、眼、眼が。あの眼が見てる。昼も夜も、目を閉じても、あの眼が。あの黄金色の瞳が、俺を追いかける。
逃げられない。
壁も天井も、どこを見てもあの眼がじっと俺を見ている。あの手、あの口、あの爪、全部、全部、俺に伸びてくる。
どうして、どうして俺のところに来るんだ。
俺は何もしていない。
裏山に行かなければよかった、こんなことになるなら……!
……笑ってる?いや、違う。笑ってるんじゃない。じっとして、動かない。でもこっちを見ている。俺の心を食い尽くそうとしているんだ。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げられない、逃げられない、逃げられない!
どこにいても、どこにいても、あいつがいる!
―――
(ここから日記は殴り書きのような状態で乱れ、以下の文章は不明瞭。判読可能な部分のみ抜粋)
―――
逾樒┌譛医??蟇?コ・
あの眼があの眼があの眼があの眼が。俺を見ている。何をしても、どこにいても。
逃げられない逃げられない逃げられない逃げられない。俺は俺は俺は……!
頼む、俺を放っておいてくれ。俺の頭の中に入ってくるな。俺は俺は……




