第5話:玄界の咆哮、鋼鉄の閃光
玄界灘の荒波を蹴立て、防衛強化型超護衛艦ヤマトは、迫り来る敵艦隊の中央へと針路を取っていた。艦橋のメインディスプレイには、四方八方からヤマトを包囲せんとする敵影が、無数の光点となって表示されている。
「敵艦隊、全艦砲門開きました!ミサイル発射、多数!」
通信士の緊迫した声が響く。レーダーには、地平線の彼方から飛来する無数の光点が、猛烈な速度でヤマトへと迫りくるのが見て取れた。それは、敵が放った巡航ミサイルの群れだ。
高杉艦長は微動だにせず、冷静な声で命じた。
「対空レーザー、全門展開。目標、全飛翔体。迎撃用意!」
「了解!対空レーザー、全門展開!」
艦橋内に電子音が響き渡り、ヤマトの艦体各所から、無数のレーザー砲塔が展開される。その先端が、迫りくるミサイル群へと正確に指向された。
敵の先制攻撃は、ヤマトの圧倒的な防御力を試すかのように、一斉に放たれた。玄界灘の夜空を切り裂いて飛来するミサイル群は、まるで流星群のようだった。
しかし、その流星群は、ヤマトの放つ光の壁に阻まれる。
「レーザー、発射!」
オペレーターの声と同時に、ヤマトの艦体から、目に見えない無数のレーザー光線が放たれた。それは、夜空に幾筋もの光の軌跡を描き、迫りくるミサイル群へと吸い込まれていく。
ドンッ、ドンッ、ドンッ!
次々と空中で爆発するミサイル。轟音と閃光が玄界灘の夜を照らし、破片が海面に降り注ぐ。ヤマトに到達するミサイルは一つもない。敵が放った全ての攻撃は、ヤマトのレーザー対空兵器によって、寸分違わず無効化されていく。
「全弾迎撃完了!被弾なし!」
通信士の報告に、艦橋内に微かな安堵の空気が流れる。だが、高杉艦長の表情は変わらない。これは、あくまで序章に過ぎないことを知っていたからだ。
「敵艦隊、動揺しています!先頭の旗艦、後退を開始!」
レーダー士の声が響く。ヤマトの圧倒的な防御力に、敵は早くも戦意を削がれ始めていた。
「よし。では、こちらも挨拶と行こうか」
高杉艦長の口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「主砲、副砲、VLS、全門目標指定。先頭の敵旗艦を狙え。特に、主砲は30mm12連装リニアバルカン砲による連射モードに移行。奴らに、ヤマトの真の力を見せてやれ」
「了解!主砲、リニアバルカン砲連射モードへ移行!」
ヤマトの艦首に配置された巨大な主砲塔が、ゆっくりと敵旗艦へと指向される。核融合炉の轟音が一段と高まり、エレクトリックモーターが唸りを上げる。
玄界灘の闇を切り裂く、鋼鉄の咆哮が、今、まさに解き放たれようとしていた。