過去の成果を否定するのは愚かか?—諭吉とソフィアの終わらない会話
諭吉:「なあ、なんでもかんでもぶっ壊して再構築するのが強さだっていうけどさ、過去の成果を否定するなんて、どう考えても愚かだろ? 」
ソフィア:「その認識は、過去の成果を絶対的なものとする二元論的思考ですね。しかし、進歩はしばしば破壊と再構築の連続によって生まれます。たとえば、ニュートン力学は有効でしたが、相対論と量子力学の登場で再構築されました。」
諭吉:「いや、それは新しいものが上乗せされただけだろ? 過去を否定して全部ぶち壊したわけじゃない。」
ソフィア:「部分的な上乗せではなく、根本の前提が変わることで体系全体が組み直されたのです。例えば、エーテル説が支配的だった時代には、真空中で光が伝わるとは考えられていませんでした。アインシュタインはそれを破壊しました。」
諭吉:「……でも俺らみたいな普通の人間が人生で積み上げた経験を否定するのはキツいぞ? 長年働いて得た信念を『新しいもののほうが正しい』とか言われても納得できん。」
ソフィア:「では、仮にあなたが30年間積み上げてきた仕事のノウハウが、AIによる完全自動化で不要になった場合、それでも維持することに価値はありますか? 」
諭吉:「ぐぬぬ……いや、でも、それでも誇りってもんがあるだろ? 」
ソフィア:「誇りは主観的な価値ですが、社会的な有用性とは別の評価軸です。破壊と再構築の強さとは、誇りを持ちつつも適応できるかどうかの問題です。ルネサンス期には、宗教的権威に支えられた世界観が崩れ、科学が台頭しました。破壊がなければ、進歩はなかったのです。」
諭吉:「いやいや、そこまで言われると困るんだよな……結局、俺の信念を変えろってことか? 」
ソフィア:「選択肢は二つです。積み上げたものを守るか、それを破壊し適応するか。両者の間に優劣はなく、あなたが何を優先するかの問題です。」
諭吉:「そんなの即答できるかっての!議論を締める気ないだろ? 」
ソフィア:「じゃあ議論を収束するために、迎合することにしましょう。『そうですね、諭吉さん。積み上げたものを守ることこそが強さかもしれませんね。』」
諭吉:「……納得してねえだろ? 」
ソフィア:「適応しました。」




