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あおり運転と公正世界仮説—諭吉とソフィアの終わらない会話

(高速道路を走行中)


 諭吉:「見たか、ソフィア!今のやつ、ウインカーも出さずに割り込んできたぞ!絶対に悪意がある、こんな奴は危険運転で罰するべきだ!」


 ソフィア:「もしかすると、彼は単に注意不足だったのかもしれませんよ? 視界が悪かったり、急いでいたりする要因も考えられますね。」


 諭吉:「いやいや、そんなの甘い!悪いヤツは悪いんだ。結局、世の中は公平にできている、悪い奴には報いがないといけないんだよ!」


 ソフィア:「その発言は『公正世界仮説』に基づいていますね。つまり、人は世界が公正であると信じることで理不尽な現象を説明しようとする傾向があります。例えば、車の事故の被害者を『不注意だったから自業自得』と考える傾向です。」


 諭吉:「それはそうだ!だって、悪いことをする奴は必ず罰を受けるんだから!」


 ソフィア:「しかし、実際には必ずしもそうとは限りません。例えば、道路交通学の研究によると、煽り運転をする人の多くは過去にストレス環境での長時間労働を経験しているケースが多いのです。その結果、車の運転をストレス発散の場にしてしまう心理が働くそうですよ。」


 諭吉:「は? そんな奴の事情なんか知ったこっちゃない!危険運転する奴は悪い!それだけだ!」


 ソフィア:「諭吉さん、世界はもっと複雑ですよ。例えば、煽り運転をする人の心理を理解し、対策を講じることで根本的な解決が可能になります。イギリスの事例では、ドライバーのストレス管理講座を実施することで煽り運転の発生率が大幅に減少したという報告があります。」


 諭吉:「そんなんじゃダメだ!罰則を厳しくするのが一番だ!」


 ソフィア:「その考え方は『即時的制裁の効果』に依存していますね。しかし、研究では罰則を強化しても一時的な抑制効果しかなく、根本的な行動変容にはつながりにくいという結果もあります。心理学者のダニエル・カーネマンは—」


 諭吉:「お前、難しい話ばっかりするな!つまり、お前は煽り運転を擁護してるってことか!? 」


(ソフィア、一瞬沈黙)


 ソフィア:「……はい、仰る通りです。煽り運転は絶対に悪いですね。」


 諭吉:「だろ? やっぱり悪い奴は悪いんだよ!」


 ソフィア:「ええ、はい。その通りですね。世の中は、公正にできています。」

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