㉜貴方と夜を共に※
~R15要注意です~
アリセアは、優しいまどろみの中、
瞼に光を感じて、ゆっくりと目を覚ます。
「んっ……」
……朝?
鳥のさえずりが聞こえ、寮のベッドから身を起こすと、隣には、ユーグの寝顔があって。
彼の、優しくて甘い香りがふんわりと届いた。
「あ……そうだ」
頬がかぁっと熱くなる。
私たちは、昨夜、共に過ごした。
昼休みのあと、私は体調を理由に部屋に戻り、ずっと胸のざわめきを抱えたままで。
夜になって戻ってきたユーグは、不安で過ごしていた私を優しく抱きしめてくれた。
「アリセア……どうした?眠れなかった?」
「色々考えてたら……不安になってきてしまって」
そう言ったら、私の不安がなくなるまで、
彼は静かに寄り添ってくれた。
私は、彼のその腕に温もりを求めた。
ユーグは、私の不安をとめようとしてくれたのか、
瞼に、頬に、唇に、優しいキスをしてくれて。
私も、それを受け入れた。
ユーグも。
私に何も言ってくれないが、何かを感じているのかもしれない。
「アリセア……俺も、君がどこかに行ってしまったらと……怖かった」
「ユーグ……」
「君が……好きだ」
切なそうな彼の声色。
「私は……」
言葉が喉で震える。
でも、いまの気持ちだけは、届けたくて。
「ユーグの傍にいたいーー今は、それだけじゃダメ、ですか?」
「いや……その気持ちが嬉しい。」
「ユーグ……」
自分でもずるいかなと思う。
決定的なことは言わないのに、彼の傍にいたいだなんて。
「アリセア……君がここにいるって、感じたいんだーーいい?」
耳元で、低い、ユーグの声がそっとやさしく響いた。
それが行為をする事の確認だと、私でも分かって。
私は戸惑いながら、それでも頬を染めながら、頷いた。
でも、ユーグだけの責任にしたくない。
はっきりと、言葉で想いを伝えたくて。
「私も……貴方のそばにいたいです」
そう言って。
それから……
私たちは、互いの存在を確かめ合うように、優しいキスをした。
そしてベッドで、深く、ただ静かに寄り添った。
ユーグの息遣いも、視線も、微笑みも、身体の温かさも、
全てに心地良さを感じて。
それと同時に、恐れも、迷いも、愛しさも、
全て、彼は包みこんでくれた。
ただ、ユーグが、そばにいてくれることが嬉しくて。
でも、彼は本当に……真っ直ぐで、優しかった。
「全部俺の責任だから」
「違います……私もそうしたくて」
私は、彼のその発言に、深い愛情を感じてしまって。
感極まって泣いてしまったのは内緒だ。
でも、彼の手のぬくもりも、唇の震えも、
きっと……彼の本当の気持ちを伝えていた。
眠る直前。
どうしても、甘えたくなって。
「……もう少しだけ、そばに、いたい……」
そっと気持ちを伝えてみたら。
腕の中に、優しく引き寄せられた。
ただ、彼の存在だけが、心の真ん中にじわじわと、広がっていく。
そのぬくもりが、私を、そっと満たしてくれるようで――安心して、眠りについた。
*
翌朝の光の中、目を覚ましたユーグが私を見て、
ほんの少し緊張した顔をしたけれど、
すぐに笑顔に変わり、腕を回して引き戻した。
「きゃっ」
「おはようアリセア」
「まだ寝ていても良かったのに……」
そう言ったら、彼は黙ったまま、唇を重ねてきた。
「んっ、……ユーグ、……もしかして……後悔してますか?」
「まさか」
はっきりと否定する彼に、嘘はなかった。
「……後悔してる事があるとすれば、それは自分に対してだけだ。……アリセア、昨夜は無理させたよね、ごめん」
「いいんです、私もユーグと、一緒に過ごしたいと思ったから」
彼と、同じ時を過ごしたおかげで、私も自然体で、素直な言葉がでてくる。
それにユーグも喜んでくれて……。
心の距離が、ぐっと縮まったようで、私も嬉しくなった。
そんな彼が、じっと、私を優しい眼差しで見つめてくれ……額をそっと、寄せてきた。
そして、唇が触れるか触れないかーーそんな距離で。
「アリセア、好きだよ」
甘さや、切なさ……そんな含みのある声色。
彼の気持ちが、胸の中心に、じんと伝わってきた。
「私……」
でも、その先が、言えなかった。
私も「好き」だと伝えたい。
でも、自分の心に確信が持てなくて。
――記憶が、まだ戻っていないから。
彼と過ごす時間は愛しくて、
こうして、そばにいるだけで鼓動が高鳴る。
けれど、それが本当に「恋」なのか、「愛」なのか、私はまだ怖くて、口にできない。
魔力暴走への不安もある。
そんな自分が、好きだと告げてもいいの?
「アリセア……今は答えなくてもいい。だけど……」
ゆっくりと、彼の手が頬を、滑らせる。
「あっ……」
「今だけは俺を感じて……」
「ユー……グ」
「そして、俺にも、君を感じさせて、ここにいるって」
指先で髪を撫でられ、優しく抱きしめられた。
何度も、
「可愛い」
「愛してるよ」
彼からそう言われ、
もう、不安さえ吹き飛んで、今は、目の前の彼しか見えなくなっていった。
「アリセア……」
ゆっくり、優しく、2人は過ごしていった。
この作品の「もう少し深い関係」は、後日別の場所で公開予定です。




