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~記憶喪失の私と魔法学園の君~甘やかしてくるのはあの方です  作者: ヒカリノサキヘ
目覚めと出会い
2/67

①光り輝く魔法陣の上

~巡る願いが、動き出す~



「もう一度、逢いたい」


「今度こそ、あの手を離さない」


願いは巡りーー



運命の輪が再び回り始める。



**




「……あれ、私」


眩しい光が目に刺さる。


気づけば私は、青白く光る魔法陣の中心で倒れていた。



「魔法陣……?っ......どうして、私がここに」



痛む頭を押さえながら、なんとか周りを見渡す。


目の前に広がるのは、静かな白い回廊に、図書館。



周囲には木々がざわめき、空は夕暮れから夜に差し掛かろうとしている。


ここは……。



「魔法学園トリバス……」


それだけは分かる、だけど……。


私は……だれ?


頭に霧がかかったようで、何も思い出せない。


自分が、どんな存在だったのかも。


名前も、過去も。



立ち上がろうとするも、左肩に痛みが走った。


「……痛っ……」


体の動きに沿って、茶色の長い髪が、さらりと揺れ視界に入る。


肩の痛みも頭の痛みも、倒れた時に打ったのかもしれない。


誰に助けを求めたらいいのかも分からず、途方に暮れる。


「どうしよう……」

まるで、世界に取り残されたように感じて、私の心に不安な気持ちが広がっていった。


と、その時。


「アリセア!大丈夫か?!」


誰かが走ってくる音。

夕日に照らされて、輝くプラチナの髪をもつ青年が、息を切らせて心配そうな顔で駆け寄ってくる。


「何があった?この魔法陣は……?」


そう言いながらも、優しく私の背中をささえてくれて。


彼の背後には、見たところ、数名の男性達も一緒だ。


魔法学園の制服とは違う白のジャケットに身を包んでいた。



その青年の澄んだ碧い瞳が、私をじっと見つめる。


(アリセア……?)


その名前が、どこか懐かしいような気もして、思わず口にした。


「それが……私の名前?」


青年の顔が一瞬、驚きに変わる。


そして、訝しげに眉をひそめて言った。


「アリセア? まさか、記憶を失っているのか?」


記憶を取り戻そうと必死に思考をめぐらすも、何も浮かばない。


戸惑いながら頷くと、彼の困惑と悲しみの色が深まった。


申し訳なさが、胸にひとしお込み上げてくる。



ふと。脳裏に、誰かに話しかけられた映像が映るも、


その誰かを認識する間もなく……消失した。


「今のは……?」



あぁ、駄目だ、身体が、瞼が。

どんどん重くなっていく。


鉛のように、身体が重い…。


「アリセア?!」

必死に私を呼んでくれる彼の声に、答えようとしたが、意識が途絶えた。





*************


「アリセア!?」

青年が、華奢な彼女の身体を咄嗟に支える。

支えがなければ、頭から完全に崩れ落ちるところだった。


どうやら彼女は完全に気を失ってしまったらしい。


身体が酷く冷えている。


一体いつから……。


「ユーグスト殿下、一体何があったのでしょうか」


己の配下、護衛の1人が戸惑いの声をあげる。


魔法陣は、ここにいる皆に見えるほどの輝きだったが、ユーグストがアリセアに触れた途端、輝きを失い完全に消失した。


「分からない、ただ、何かが彼女に……」


血の気の引いた唇に、いつもの美しい透明感のある茶色の瞳は、今はすっかり閉じてしまっている。


「来るのが遅くなってすまない」


顔にかかった髪を、耳にかけてやる。


頬をそっと触ると、やはり冷たくて。


「彼女を安全な場所に運ぶ。……この件は内密にせよ」

「承知いたしました」



護衛らは、この状況に難しい顔をしながらも頷いてみせた。

ユーグストは自らの白いジャケットを脱ぎ、優しく彼女に被せる。


そして、まるで守るべき宝物のように、大切に抱きかかえた。


「殿下、私たちが運びましょうか」

「いや、大丈夫だ。彼女は私が運ぶ」



腕の中の彼女は、胸を上下させ、静かに呼吸を繰り返していた。


一旦は、安堵の息を吐く。


記憶を、なくしてしまったのだろうか。


ユーグストは、焦燥感にかられるのが分かった。






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