4-27『相性』
マナの話を聞いてガラドは面白くなさそうに口元を歪めた。
「ふーん、だけど人間は君たち魔族の助けなんてぇ求めてないと思うよぉ? 君たちが助けようとしているその人間に今度は命を狙われるかもしれないぃ……それでも本当に助けるのかぁ?」
「えぇ、それが私だから」
マナの眼に迷いなど存在しない。
普通、これほど自信満々に答えることというのは難しいものだが、こういうところはやっぱり魔族をまとめる立場なんだなと言うのが分かる。
これが魔王のカリスマと言うやつなんだろう。だからこそ、自由奔放な魔族たちが彼女の下で働いているというのがあるんだ。
マナはまだ実力が戻っていない。何だったら、先日戦ったことでバルゼットの方が全然強いように思えてしまった。
だから恐らく、今のマナの実力だったら魔王軍の上澄みに比べたら弱いくらいで、下剋上をしようと思えばいくらでも出来るレベルなのだろう。
だが、それを誰もしようとしていない。その理由はこのカリスマにあるのかもしれない。
「面白いねぇ。でもぉ、そんな考えを抱くのは異端だぁ。誰にも認められないぃ……それでもその考えは曲げないというのかぁ?」
「もちろん」
「おいガラド、何呑気に話してるんだ。早くこいつらを殺すぞ」
「わりぃわりぃ、ちょっとおっかしくてなぁ」
ハイドは長々とお喋りをするガラドに我慢も限界に到達したようで、マナへ向かって突っ込んで行った。
そしてガラドも面倒くさそうにしながら地面に転がる俺に手のひらを向けてきた。
だけど、ガラドがお喋りクソ野郎だったお陰で、俺の痺れが回復するくらいの時間を稼ぐことは出来ていたようで、手足が自由に動くのを感覚で確かめて機を待つ。
そして――
「『雷砲』ぅ」
ガラドの手から雷を纏った魔力弾が発射された瞬間に手に全力の身体強化を付与し、地面を叩くことによって反動で転がって魔法を緊急回避。
勢いよく飛び上がるようにして立ち上がると、そのまま身体強化をした手に握り拳を作り、雷属性を付与する。
さぁ、雷勝負と行こうぜ。
「ぶっ飛べぇっ!」
「ぐえぇぇぇっ」
俺は勢いのままガラドをマナの方へと殴り飛ばす。
マナはハイドとの相性が異常に悪い。だけど、いくら力が戻っていなかったとしても、彼女は魔王なのだ。俺は何かしらやってくれると信じている。
さぁ、今こそマナの魔王としての実力を俺に見せてくれ!
「触れられたら負け……でも、そんなのは勇者の剣も同じなのよ! 『無体』」
「『豪拳』」
マナへ放たれるハイドの拳。しかし、ハイドの拳はマナに直撃することはなく、そのまま身体をすり抜けて行ってしまった。
あれは闇属性魔法『無体』。自分の姿だけをその場に残し、実体は別の場所へ移動するというもの。
魔力の流れを読まれたらバレてしまうが、咄嗟のタイミングで行えば効果は高い!
「さぁて、私の相手はあなたじゃないみたいね。そうよね、エシュド」
「あぁ! ぶちかませ!」
足に風属性を付与したマナは身体強化も足にかけ、そしてハイドの胴体を蹴り飛ばした。
「『暴風蹴り』」
マナならば対処する方法はいくらでもあるのかもしれない。
だけど、マナは魔族である以上はハイドとの相性は最悪だ。マナ視点、俺も同じ条件かもしれないが、それでもマナは俺の判断を信じて特に理由を聞くわけではなく理解して託してくれたらしい。
ガラドとハイドがすれ違い、ハイドが俺に向かって飛んできたため、俺は拳を構えた。
だが、どういうわけかハイドは飛んでいる最中で体勢が悪いにも関わらず、身体の向きを変えて俺を見据え、そして俺と同じようにして拳を構えてきた。
飛んでいる最中に迎え撃つ気かよ。
流石に拳と拳のぶつけ合いでハイドに勝てる気はしなかったため、俺は飛んできたハイドを避けることによってぶつかり合いを回避。
俺の背後に飛んでいき、地面に着地したハイドを見据える。
今、押し合っていたらまず間違いなく俺はやられていただろう。ハイドの手に触れたら魔力も何も使えなくなって一般人レベルになってしまうんだから。
「おい、俺をお前一人で相手するつもりか? 自殺志願者か?」
「んなわけあるか。お前くらい、俺一人で充分だって話だ」
ちらりとマナの方へと視線を向けてみると、そこには既にマナの姿が無かった。
お互いに戦いの邪魔にならないよう、俺から蹴り飛ばされてきたガラドを更に蹴り飛ばして戦場を変えたに違いない。
多分、マナにとってはその程度の考えだったんだろう。だけど、これは非常に好機と言える。
俺は今までマナが居たからこそ、本気を出すことは出来ずに居た。
本気を出したらマナは確実に俺のことが気になりすぎて戦いに集中できないだろうし、俺から逃げ出してしまうかもしれない。
戦いの上で、要らぬ心配はかけたくなかった。
でも、マナが何処かへ行ったというのならばもう何も気を使う必要がない。
今ここで俺は本気を解放する。
魔力の質を元に戻して、ブレスレットを取り外し、完全な状態。白髪の賢者、カルマ・エルドライトへと変化した。
魔人を本気を出さず勝てるような相手などと侮りはしない。本気を出せるなら本気を出して倒しに行く。
「さぁ、ハイド……第二ラウンドを始めようか」
次回よりそれぞれの場所で戦いが始まります。
一先ず、次回はハイド戦をやりますが、それぞれの戦いに定期的に視点を変更します。
ハイド戦はカルマ視点、ガラド戦はマナ視点、テライ戦は三人称視点でお送りします。




