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4-17『観光』

4-17『観光』

 ベータテッド家で朝食を済ませた後、俺はルリハが言ってくれた通り、この街を観光することにした。

 この街は森の中に位置するため、他の街とは色々と決定的に違う。

 まず、見た通り、そのほとんどの建物が木の上にツリーハウスとして建てられており、石造りの建物が多い王都の建物と違ってほとんどの建物が木造となっている。

 そして森の中で暮らしているということは、環境からも王都とは何もかも違っており、特産物となっている食べ物やよく食べられている料理なんかも違う。


 例えば、昨日俺もメルフィーさんに食べさせてもらったが、カレーだ。

 カレーはほとんどほかの街では食べられておらず、この特殊な環境の森では色々なスパイスの元となる植物があるため、カレーといった特殊な料理を作りやすいというのがある。

 あと、森の中だから土地というものが限られており、牧場を作るスペースが限られているため、そんなに牧場はこの街にない。その代わりに、山菜などが豊富なため、山菜を中心に食べている。


「お、これ美味いな」


 今俺が食べているのは道中で買った揚げ野菜の詰め合わせ。軽く塩を振っただけの代物だが、一口サイズになっているから、まるでお菓子の様にサクサクとしていて、軽く食べることが出来る。

 自分で揚げ物を作って食べようと思うことはないからなぁ。

 探索中も揚げ物みたいに時間がかかって面倒な物じゃなくて、さくっと作れてさくっと食べれるものが望ましいから、ユイが作ってくれることもなかったし、あんまり食べる機会は無いんだよなぁ。

 この間、エイフィルをおびき出すために晩酌をしたときは揚げ物があったっけ? そんなによく覚えてないわ。


 そんな感じで食べ歩きをしつつ、色々な店を見て回る。


 この街は森に囲まれているせいか、ほかの街とは隔絶されていて、かなり独自の文化を築いていたりする。

 そのため、アクセサリーショップなんかに入ると、ほかの街では決して見ることが出来ないような珍しいものが見つかったりするわけだ。魔道具なんかもいろいろ特殊なものが置いてある。


「お、これなんかはメルバードの奴がよだれを垂らして喜びそうだな」


 見つけたのは『憤怒の指輪』という魔道具で、身に着けると爆発系魔法の威力が底上げされるという、爆発魔法マニアであるメルバードには喉から手が出るほど欲しい代物だろう。

 前まではこんなのを見つけたとしても「また変な魔道具が売ってるな」というくらいで特に気にも留めなかっただろうけど、今となっちゃ勇者パーティーのみんながどんなものだったら喜ぶかという目で物品を見るようになっている。

 俺もだいぶ勇者パーティーに染まってきたということなのだろうか。


「ユイとかだったらこのアクセサリーか?」


 手に取ったのは小さな花がかたどられたヘアピン。これくらいなら小さいし、近接戦をするとしても、アクセサリーが邪魔になるということもないだろう。

 あと、ささやかだっていうのが丁度いい。何か土産で渡すとしても、俺の渡すものの主張は激しくない方が俺的には好ましい。たとえ俺のものだとしても男の影はあまり見たくないものだ。


「あー、メルはともかく、ユイは遠慮するかもしれないな」


 金額を見てみたら一般人の金銭感覚で言ったらかなり高額の部類だろう。

 賢者クラスなら簡単に出せる金額だけど、Dランクのはずの俺からもらったらビビる可能性がある金額だ。このささやかさでこの金額ということは、この街にしかない特別な素材でも使っているのだろうか。


 メルバードは気にせずに受け取ってくれそうだけど、ユイは絶対に恐縮してくると思うから金額のことは伏せて渡すとするか。賢者をやめてからあんまり金を使ってなかったから金だけは有り余ってるしな。


 そうしてヘアピンを手に取ろうとしたその時だった。

 隣からも手が伸びてきて、俺の手と伸びてきた手がぶつかり合ってしまった。


「あ、すみません」


「いえ、こちらこそ」


 誰か確認するために顔を向けてみると、そこにはフードを深くかぶったローブの人物がいた。声的には女の子と言った感じだ。身長的にもかなり低く、幼い部類なんじゃないかというほど。

 ただ、ちょっと聞いたことがある気がする声なんだよな。声が変えられているけど、なんか頭の中で引っかかる。


「なにか?」


「いや、何でもない。それより、それが欲しいんだったらどうぞ」


「え、いいんですか?」


「あぁ、俺は別の物でも探してみるからさ」


「ありがとうございます!」


 このヘアピンじゃなくても他にもまだ土産になりそうなものだったらいくらでもある。

 だったらこのヘアピンは本当に欲しい人に渡してしまっても問題はないだろう。


 ローブの女性は喜んでヘアピンを手に取ってカウンターへと持っていく。

 その時ちょっとローブが揺れて顔がちらっと見えた。その顔を見て俺は思わず思考が停止、その場に立ち尽くしてしまった。


「お兄さん、これお願いします」


「はいよ」


 そんな俺とは真逆で、ローブの女性はウキウキの様子でカウンターにヘアピンを置いた。


 なんで、なんでこんなところに居るんだよ。

 ここ、街中だぞ。しかも、オルターンっていう実力者ぞろいの街にどうして……どうしてっ!


 どうして、マナ・デストラーラがこんなところに居るんだよ!

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