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4-1『賢者集結?』

 ある街のある教会にて今、世界を揺るがしかねない大事な会議が開かれようとしていた。

 議題はもちろん、先日の一件。王都に魔人が出没したということだ。


 ガルガの時はカルマたちしかその場に居なかったため、口外しないことによってなんとか誤魔化すことに成功したのだが、エイフィルは大勢の冒険者にその姿が観測されてしまっている。

 故に、エイフィルのことを隠し通すことは不可能だった。

 魔人が出没してしまったということが周知の事実となってしまったのだ。


 魔人の対処は本来であれば賢者案件。だが、それをBランクの少女三人とDランクの少年一人の合計四人で討伐してしまったというのは大事件だ。

 その事態を重く受け止めた一人の男が今ここに、賢者を招集した。


 賢者を招集するというのはとんでもないこと。

 本来、賢者はまとまって行動することはなく、それぞれの担当区域を持ち、そこで仕事をしているため、一緒に戦うなんてことはそうそうあるものじゃない。

 そもそも、担当区域を離れている間に街が壊滅したとかになれば責任問題にもなりかねないため、このように集まるっていうことは簡単に出来ることじゃない。


 それが出来たということは、それだけの重大事件だということだ。


 そしてその賢者を招集した男こそ、現在賢者を統括している最年長賢者、エルダック・ヴォラキュリア。

 スキンヘッドで鋭い目つきで相手を怯ませる、背中には巨大なハンマーを携えている如何にも力自慢の男だ。

 現在、賢者の中で実力はNo.3。だが、1と2に統括など任せられるはずもなく、彼が仕方がなく賢者をまとめている。そのため、彼が賢者を招集したらよっぽどの理由がない限り集まってくることだろう。


「はっはっはー! 急な呼び出し、びっくりしたぞ。暫くみんなの顔を見てなかったから顔を忘れかけてたぞ! エル爺、今回はどうしたんだ?」


 エルダックの向かって右手側の席に座っている妙にテンションが高い赤髪メラメラ頭のこの男はサックド・レストランテ。

 本来であれば鬱陶しく感じてしまうのかもしれないが、彼のテンションの高さは振り切っており、逆に清々しいくらいのため、愛されている男である。


「あら、仲間の顔を忘れるというのはよくありませんね。私は片時も皆さんの顔と名前を忘れたことはありません」


「けどよ? フーズ。これだけ年数が経ってれば忘れても無理はねぇんじゃないか?」


「これだけといいますが、三年です。容易に忘れる年数ではありません」


「三年会わなきゃ充分忘れるわ!」


 全開招集されたというのも、カルマが賢者に任命されたため、その任命式で集合したということだ。

 その後、賢者が集まるという機会は無かった。


 そしてサックドに苦言を呈しているエルダックから向かって左側の席に座っている、この緑髪の女性はメルバード・ユーシェンの姉、フーズ・ユーシェン。

 ただ、妹とは違って魔道具制作の才能は無い。だが、その代わりに魔法センスは軍を抜いており、魔法の腕だけで言えばエルダックと肩を並べることが出来るほどの実力者である。


 サックドとフーズはいつものやり取りをしている。

 喧嘩のように聞こえるかもしれないが、二人にとってはいつものことのため、周りの人たちは暖かく見守っている。

 ただ、その周りの人というのは今日はエルダックしか居ないわけだが。


 二人に視線を向けたエルダックは次に開いている席へと目を向けた。

 残る席は後四つ。カルマが消息を絶ったからカルマは来ないと考えて後三席。だが、この三席が埋まるっていうことは天地がひっくり返ってもありえない事態のため、エルダックは頭を抱えてしまった。


「おい、フーズ。ケルドはどうした」


「ケルドさんはですね、今遺跡調査に行ってるから暫くは出てこれないそうです。何かまたお宝でも見つけたんでしょうか?」


「来れないなら手紙をよこせ、馬鹿者が」


 ケルドは来る時は来るが、時折今回のように遺跡調査に行っていると招集に応じずに遺跡に籠もってしまう場合がある。

 今回はタイミングが悪く、遺跡調査のタイミングとなってしまったため、ケルドは来ることが出来なかったらしい。


 ただ、これに関してはケルドの仕事のため、エルダックも口を出すつもりはない。むしろちゃんと仕事をしているのだから褒められるべきことなのだ。

 だから、エルダックはこれを容認している。しかし、手紙を返さないのはケルドの悪い癖だとエルダックは苦言を呈した。


 残りの二名に関しては特に何も言うまい。この二人はケルドのように正当な理由があるわけでもなく、一人は『面倒』、もう一人は『眠い』というのが理由のため、毎回毎回その台詞を聞いてうんざりしているため、エルダックも理由は聞かない。

 ただ、この二人も一度だけちゃんと招集に応じてきたことがある。


「そう言えば、ゼルドガル君とネムナちゃんもカルマ君の任命式の時は来てたのよね。あれってなんだったのかしら?」


「どうせあいつらの気まぐれだろう! 重要な会議をすっぽかして遊び歩き、睡眠を貪るとは許せん! 俺はあいつらのことが大嫌いだ!」


「ただ、私たちはあの二人にあまり強く出れないんですよね」


「非常に腹立たしいことだが、そうだ。あいつらは俺達よりも強い」


 問題児二人にして、六人いる賢者の中でNo.1とNo.2の二人。

 この二人が問題児故にエルダックがリーダーをすることになっているが、あまりにも問題児過ぎてエルダックが頭を抱える事態になっている。


「それは置いておく、話が進まん」


 そう、今回はゼルドガルとネムナの問題行動について協議を市に来たわけではない。そんなことよりも重要案件、魔人事件について話し合う必要がある。


「二人は先日起こった魔人の事件についてどこまで知っている」


「俺が知ってているのは、王都に魔人が出没し、勇者パーティーが討伐したというところまでだ!」


「えぇ、私も同じ感じです。私たちの担当区域からは遠いですから、噂程度にしか聞こえてこないんですよ。でも、勇者パーティーが居てよかったですね」


「どこがだ。確かに対処したのは勇者パーティーだ。しかし、彼女らはまだBランク。中にはDランクも居たと言う話ではないか。これでは魔人に殺されてしまったとしても何もおかしくはなかった。魔人の出没というのは恐ろしいものだ。我々賢者でも全力で対処に当たらなければ返り討ちにされてもおかしくはない。それをあの低ランクの冒険者四人でどうやって対処したのかはわからないが、次も同じことが起きて、被害がこれだけと言う保証もない」


「そうですね。ではどうします? 誰かが王都も担当する形にしますか?」


「いや、それでは人手が足りん。いくらわしらが賢者といえども、限界はある。だから、一つ考えた」


 エルダックの言葉にゴクリと生唾を飲み込むサックドとフーズ。

 確かに、今以上に担当区域を増やしたとしていい方に転がるとも思えない。区域が広がれば広がるほど、一つの街を守れる可能性というのは下がっていくものだ。

 賢者はそれぞれの区域に一人しか無い。元々、その一人で区域全部を守り通すというのは無理があるものだったのだが、今以上に増えるとなると厳しいものがある。


 だからそれ以外の案が必要だとサックドとフーズも理解してはいるが、なかなか思いつくものでもない。

 どうするべきなのか。

 エルダックの考えを聞き、二人は驚愕した。


「今回の魔人騒動、わしは魔王が関係しているのではないかと睨んでいる」


「つまり、魔王が魔人を生み出していると?」


「そうだ。魔王の力はまだ分かっていないことも多い。その力の中に魔人を生み出す力があったとしても何も不思議ではないだろう」


「なるほど……一理あるな! つまりあれか、勇者パーティーに早く魔王を討伐しろと言うわけか!」


「あぁ、あんまりモタモタしていると魔人の被害が広がってしまうかもしれないからな」


 賢者たちは魔王の討伐を急ぐ。

 全ては人類の平和のために。

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