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賢者のカルマ〜百合好き元賢者の究極百合理論〜  作者: ミズヤ
第一章『刺激を求める旅人』
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1-6『面接』

「俺はハルト・カインズ。ソロの冒険者をしている」


「今までパーティーに入った経験は?」


「……臨時パーティーなら何度か」


「へぇ、パーティー経験あり……と」


「いや、それ経験ないって言ってるのと同じだよね。臨時パーティーなんてパーティー経験の内には入らない」


「ち、バレたか」


 臨時パーティーとはパーティー届けを出さず、その場限りで共闘するパーティーのこと。パーティー同士でその場限りの共闘をする場合は同盟と言ったりもする。

 ちゃんとしたパーティーには入ったことないけど、魔物と戦う上で長く冒険者をしていると共闘する場面はいくらでもあるから臨時パーティー位は誰だって入ったことはある。

 そのため、パーティー経験の内には入らないと考える方が普通だ。


 ぼっちで悲しいヤツというレッテルを張られないが為に見栄を張ったが、ユイを騙すことは出来てもルリハを騙すことは出来なかった。いや、これで騙されるのもおかしな話なんだけどな。


「え、えっと……じゃあ得意なポジションは?」


「サポーターで」


 基本俺はだいたいなんでも出来るのだが、この勇者パーティーに居る間はあんまり手出しはしないようにしようと思う。

 賢者である俺が手出しすぎたら他の人が成長しなくなる。

 特にユイに関しては魔王であるマナを倒すことが出来る唯一の存在。彼女がマナに勝てるくらいに強くなってもらわねば困ってしまう。


「サポーター……なるほど。じゃあ、ストレージは使えるんですか!?」


「あぁ、こんな感じで……『ストレージ』」


 俺は目の前に手のひらをかざし、魔法を唱えると正面に空間の裂け目が出現する。これがストレージ。

 この中に生物は入れることは出来ないが、ものを入れて運ぶことが出来る。そのため、俺はバッグのような物を一つも持っていない。

 ちなみに今の俺の容量的にはこの街丸ごと入るくらいだ。

 このストレージの魔法は師匠に教えてもらったんだが、かなり難易度の高い魔法なため、使える人も少ない。


「容量は?」


「えっと、オーク二体分くらい?」


 ルリハに聞かれたため、とりあえず平均的な容量を伝えておいた。


「凄い! これなら即戦力――ぐえっ」


「まだ決めるのは総計」


「いったーい! 何も叩かなくたっていいじゃん!」


 速攻で俺の事を採用しようとしたからか、ユイはルリハからのツッコミと言う名の物理攻撃を受け、頭を押さえて涙目になっていた。


「ソロでサポーター……? ソロで?」


 痛いところを突いてくる。

 確かにおかしい。サポーターとソロは対義語みたいなものだ。ソロなのに何をサポートすることがあるんだと、ルリハはそう言いたいんだろう。

 自分で言ってて思ったよ! ユイは純粋そうだからこれで騙せるかなと思ったけど、ルリハはかなり冷静なようだ。


「ごめん、責めているわけじゃない。でも、サポーターがソロっていうのが珍しくて」


「い、いや、そうだよな。ソロでサポーターっていうのは怪しくて当然だからルリハは正しいよ」


「ストレージを使えるっていうならちゃんとサポーターが出来るし、そのほかにも身体強化魔法とかあれば言うことなし。能力的に言ったら断る理由はない。でも、私たちが目指しているのは普通の冒険者じゃない。それは多分知っていると思うけど」


「魔王討伐……だよな」


「そう、私たちは魔王討伐を目指している。ユイの持っているこの剣、神剣『リリウム』は魂を断ち切ることが出来ると言われている伝説の剣。そして私たちはユイが魔王と戦うサポートをする大事な役目。そこら辺は分かっている?」


「あぁ、問題ない」


 問題ないというのは覚悟が決まっているというわけじゃなくて、別にこの間見た魔王の力程度だったら俺は負けないという自信だった。

 あとは俺の持っているサポート系の魔法でサポートしたら問題ない。


「そっか、うん、おっけー。それが分かってるなら大丈夫だよ」


「え」


 ちょっとびっくりした。もっと色々と問い詰められたりするのかと少し覚悟していたのだが、意外とあっさりと許してくれた。


「何その反応……私、こう見えて人を見る目はあるつもりなんだけど」


「いや、その……何と言うか……」


「まぁ、良いけど。でも、それだけじゃダメ」


「あ、分かった! これからハルト君の実力をテストするんだね!」


「実力テストっていうほど厳しいものじゃないけど……うん、パーティーメンバーになる前に、どんなことが出来るか見せてほしい」


 確かにそうだな。ここの面接で俺は仲間になった気満々だったけど、お互いにできることが分からないとどういう立ち回りをしたらいいのか分からない。

 パーティーを組んだことが無いせいか、そこを失念してしまっていた。


「でも、どうやってテストするんだ?」


「この街の近くに、初心者用のEランクダンジョンがあるんです! そこならテストするのにもちょうどいいかなって思うんですが、ルリハちゃんはどう?」


「うん、私もあそこでいいと思う。ちなみに一応聞いておきたいんだけど、ハルトの冒険者ランクは何?」


「あ~」


 そう言えばこの街では許可証はカードタイプだから他の人にランクがバレることはないのか。

 正直言いたくはない。こんな感情を抱いたのは初めてだが、今この状況でこの二人に避けられるのは非常に嫌だ。

 DランクはEランクよりもましではあるものの、扱いはかなり悪い。この街ではランクがバレていないからいいものの、バレた瞬間にひどい扱いを受けることだろう。

 かといって、ここで言わないのも等と考えている内にルリハの方が先に口を開いた。


「そうだった。人に聞くなら自分から言うべきだよね。私のランクはB」


「あ、私もBランクです! 私たちは学園に在学中にBランクまで上げたんだよね!」


「うん、そう」


 在学中にも冒険者ランクというものが存在している。とはいえ、在学中は本当の冒険者ではなく、冒険者(仮)(かっこかり)というような感じで、ランクも仮ランクという感じなのだが、最後に到達したランクが冒険者になった時の自分の最初のランクになる。

 この仮ランクの最大ランクはBランクとなっており、Bランク以上は本当の冒険者になった時に試験を受けてランクアップするしかない。


 ちなみにBランクまではそのまま功績を上げればランクが上がるが、それ以上は昇格試験を受けないと上がることが出来ない。昇格試験で圧倒的な力を見せつければBからSに飛び級することもあり得る。

 Bランクっていうことは冒険者学園の中でもトップクラスの実力だったんだろうなということが予想できる。

 確かにそれくらいの実力が無ければいくら剣に選ばれたとしても魔王と戦うなんて荷が重すぎるもんな。


 ここまで来たらもう俺だけランクを言わないということはできない。

 今日ほど早くランクを上げておけばよかったと思ったことはないな。ランクは上げようと思えばいつでも上げられるんだけど、今の俺はランクを上げることなんか後回しにしていたからな。

 でも、こうなったからには覚悟を決め、俺は意を決してランクを告げた。


「D……だな」


 言ってから正面に居る二人の様子を恐る恐ると見てみる。

 だが、俺の心配とは裏腹に二人の表情は全く変わっておらず、ユイなんかはにこにことしていた。


「Dランクかぁ……じゃあ、私たちが色々とサポートしますね!」


「サポートはサポーターであるハルトの仕事だと思うけど……うん、一緒に頑張ろう」


 何が起こってる?

 普通に考えたらここで追い返されるものなのだが、追い返されるわけでも嫌悪を示される訳でも無く歓迎されただと?

 こんなの俺のデータには無いぞ! まぁ、俺はデータキャラじゃないけど。


「ん? どうしたんです? そんな呆けた顔をして」


「……安心して、私たちはランクで人を差別しない。確かに実力も必要だけど、私たちが信用出来るって言うのが大事だから。あと、王都でランクの差別をしていたら冒険者ギルドが成り立たないからね。だって王都って新人冒険者が一番多いんだから」


「それもそっか」


 今までランクで差別する相手しか出会ったことがなかったけど、彼女達みたいな差別せずに普通に接してくれる人も居るのか。

 俺があまり人と関わってこなかったって言うのもあるけど。


 そうか、今までどうして一目で冒険者ランクが分かるようにしている街とそうではない街があるのかって考えたことがなかったけど、この街って暫く冒険者をして冒険者になれたらほかの街に冒険者が行く可能性が高いというのもあって差別をしてすぐに別の街に行かれたら冒険者ギルドが成り立たないのか。

 冒険者の数が多いのもこの街に冒険者学園があり、卒業してそのまま冒険者になるっていう人が多いっていうのもあるし。

 そう考えると納得だな。


「そうそう! じゃあ、テストは明日でいいですか? ハルト君も準備があるでしょうし」


「いいよ」


「あぁ、大丈夫だ」


 正直、俺は今から直ぐに行っても良いんだけど、急ぐことでもあるまい。

 それに今、ユイが言ったようにユイ達にも準備があるかもしれないから、明日の方が都合がいいだろう。

 しばらく考えたいこともあるからな。


「じゃあ、明日の朝、正門前に集合!」


 その号令を最後に今日は解散となった。とはいえ、ユイとルリハは同じ宿に止まっているらしいので、二人は同じ宿へ帰って行った。

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