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3-20『生命力』

 エイフィルが魔人だったこと、そしてエイフィルの謎の能力によって一瞬にして三人が殺されたことは衝撃が大きかった。

 周りで見ていた冒険者たちは簡単に手を出すことができなくなったし、自分の腕に自信が無い冒険者はこの場から脱兎のごとく逃げ出した。


 俺も困惑していた。

 間違いなく俺はエイフィルの殺し方がダメージの共有であることを確認した。だけど、それだけじゃ説明できない魔法と罠の冒険者、そして今朝発見された兵士の死に方。

 なにかを使ってから、エイフィルは二人が死ぬまでの間、何もしていなかった。俺はずっと警戒してエイフィルを見ていたけど、エイフィルはただただ三人のやり取りを不気味な笑みで見ているだけだった。


 迂闊だった。

 俺がもうちょっと情報を引き出せていれば、あの三人も死ぬことはなかったかもしれない。

 だが、今更後悔してももう遅い。死んでしまった人が蘇ることは決して無いのだから。せめて俺たちに出来る弔いはエイフィルを討伐することのみだ。


 俺も、それなりに頑張るしかなさそうだな。

 実力がバレるのを恐れてユイたちにまかせてばかりいたら、更にどんどんと犠牲者が増えていってしまうかもしれない。

 ならば、多少バレる可能性があるとしても、俺はみんなを守りたい。


「ユイ」


「な、なんですか?」


「俺も攻撃に参加するよ」


「え、えぇ!? でもハルト君はサポーターじゃ……?」


「魔法はあんまり得意じゃないけどさ。俺は元々ソロでやってたんだ。ソロで身体強化魔法を使ってなんとかやってた。だから、アタッカーとサポーターを兼任しているみたいな状態だったんだな。だから、前衛をやろうと思えば可能だ」


「そ、そうなんですね!」


 俺は咄嗟に考えついた言い訳を言ったが、ユイは素直に信じてくれた。

 まぁ、あながち嘘ではないけどな。俺の一番得意なのは身体強化だし、賢者やってたときも身体強化をしてぶん殴るっていう戦法を一番得意にしていた。

 つまり、この戦い方は俺本来の戦い方だ。


 ちょっとカルマオタクであるルリハの前でこの戦い方をしてしまうと、またカルマである疑いをかけられてしまう可能性が高いから本来はやりたくないが……背に腹は代えられない。

 今ここで自分可愛さに出し渋ってみんなを死なせてしまったときのほうが後悔してしまうだろうから。


 人生は後悔の連続だ。後悔しない人なんて世界のどこにも居ない。だって、正解の道なんて誰もしらないのだから。

 ならば、どっちの方が正解かよりも、どっちの方が後悔しないかを選べ。


「あれ? ハルトはもう戦ってくれないのかと思ったよ。君、結構強いから好きなんだよね。殺しちゃいたくなるほどに」


「あぁ、俺もあんたを殺したくなってきたよ。罠女」


 あいつは純粋に魔人として強いが、それよりも、本来の殺し方は不意打ち。絶対的な初見殺しだ。

 それが使えないあいつにとってはやりにくい戦場なことには違いない。だから、どんどんとあいつの苦手に追い込み、こっちの得意に持ち込めば、勝機はある。


「悪いんだけど、サポーターの仕事は出来ないかも。かなり相手が強いから」


「はい、大丈夫です。今まで前衛が私だけだったので、ハルト君も居るだけで心強いです!」


 なんだか嬉しいことを言ってくれるユイ。

 思い返してみれば、こうしてユイと横並びで共闘するのって初めてだよなぁ。今までちゃんとした仲間としてアタッカーで協力したことはなかった。

 ハルトの時はサポートに回っていたし、エシュドの時は敵だったし、カルマの時はちゃんとした共闘と呼べるものはしてなかったしな。


「なになに? 仲間同士の友情っていうやつ? そういうの面倒だから早くかかってきなよ」


「ユイ、あいつに囁かれたり、キスされたりは絶対にしないようにな」


「はい、分かってます!」


「あれ? 無視? おーい」


 ユイと目配せをして俺は大きく踏み込むと、地面がえぐれるほどの力で地面を蹴ると、一瞬でエイフィルの眼前に移動する。

 そのことにちょっとエイフィルは目を見開いたが、直ぐに反応して、俺の勢いに任せて振り抜いた拳をがっしりと受け止めてきた。

 その拳を思い切り引っ張ると、エイフィルは俺の耳元に口を寄せて来て――


「ど根性ヘッド!」


「あがぁっ!」


 技でもなんでもない。

 ただ身体強化を施した頭突きをお見舞いしただけだが、俺の耳元に顔を寄せていたエイフィルはその頭突きに反応することは出来ず、まともに受けてよろめく。

 そこにユイが走り込んできた。あれは恐らく『追い風』を使っているスピードだ。


「やっぱり君、ハルトよりも遅いね」


「確かに、ハルト君の身体強化の効果は凄まじいものがありますから、私のトップスピードでも敵わないかもしれません。しかし、私には私なりのやり方がありますっ!」


 ユイの接近に対して身体強化を施した拳を振り抜いて対抗するエイフィルだったが、その拳の間合いに入る直前、ユイは急激に減速した。

 そしてそのまま流れるような動きで剣を下に構えると、右下から左上にかけて風を巻き上げながら斬り上げた。


 その剣はエイフィルに当たることはなかった。

 しかし、その剣の軌道に沿うようにしてエイフィルの周囲には斬り上げるような斬撃の上昇気流が発生。エイフィルのその肉体を次々に斬り刻んでいく。


「『昇迅』です。確かにあなたの回復力は凄まじいですが、それだけの斬撃の嵐の中じゃあ、動きにくいですよね! そしてその状態なら、回避は難しいんじゃないですか!?」


「ユイ、しゃがんで。『紅蓮廻炎』」


「ボクも行きます! 『エクスプロージョン』」


 ユイの『昇迅』に続いてユイがしゃがんだ頭上を通ってルリハの放った『紅蓮廻炎』が炸裂。エイフィルの肉体を焼き尽くす。

 そこへ更にメルバードの『エクスプロージョン』が放たれる。

 この『エクスプロージョン』は『エクスプロード』とは違ってかなりの大爆発を引き起こしてしまうため、それを察した俺たちは急いで距離を取り、背に爆風を浴びた。


 正直、この狭い場所で爆発魔法を使うのは褒められたことじゃないのだが、どうやら俺たちの戦いの激しさのせいで、周囲に一般人らしき気配はしなくなった。

 建物の損害は酷いものだが、これなら一般人を巻き込まずに済みそうだ。


 ユイが拘束してルリハが燃やして、メルバードが木っ端微塵に吹き飛ばす。

 肉片の一つも残さないつもりだ。これならばもしかしたらどれだけ再生能力が高いと言えども、生き残ることは出来ないかもしれない。


 それにしても、メルバードがちゃんと魔法を使ってるのは初めて見たな。

 多分、『エクスプロード』が効かないって分かったから、もっと高威力の『エクスプロージョン』を使うために普通に魔法を使ったんだろうな。


 はてさて、その結果は――


「本当にめちゃくちゃしてくれたよね。もしかして、肉片一つも残さずに消し去ればなんとかなると思った感じ? 如何にも低俗な考え方だよね」


 ま、そうだよな。

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