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3-18『冒険者 参戦』

 突然の声。

 弾かれるように声の方へと視線を向けてみると、路地の入口に一人の男性が立っていた。

 確かあの男はいつもギルドのテーブルで仲間と共に酒を飲んでいる人だったはずだ。この一ヶ月の間、幾度となくその姿を見かけていた。

 そしてあの男がきたということは?


「なんだなんだ? なんでここら辺、すげぇ形で地面が凍ってるんだ?」


「激しい戦闘音が聞こえると思ってきてみたら、勇者パーティーが居るじゃねぇか。こりゃどういうことだ?」


 どうやら俺たちの戦闘音に引きつけられて来たようだ。

 考えてみれば当たり前だ。俺たちはこの街中でドンパチやっているのだ。これで他の冒険者たちが様子を確認しに来ないわけがない。

 それも、ただの喧嘩という激しさではなく、ガチの殺し合いなんだから、そりゃ来るよなと。


 そして、この人たちが来たということは、ここに集まろうとしてきている冒険者はこの人たちだけではないだろう。

 冒険者というのは兵士同様、街を守るために戦う者たちだ。兵士ほど義務というわけではないが、自分の拠点としているギルドが無くなると困るから、基本的には街を守るために行動する。

 そんな奴らが、このドンパチを聞きつけて来ないわけがないよな。


 これなら俺が本気を出さずともワンチャン勝てる。


「残念だったな、エイフィル。どうやら俺たちの戦いの音を聞きつけて他の冒険者も来たらしい。多分、他にもどんどん集まってくるだろうな。さぁ、どうする? この街は王都だ。主要都市だからAランク冒険者もわんさかいるぞ。お前の勝ち目はどんどんと少なくなっていくわけだが、降参する気はないか?」


「なんで?」


「は?」


「なんでその程度であたしに勝てるって思っているのかすごーく意味不明なんだけど……さっき戦っていたのはお兄さんなのに、まだあたしの力を把握出来ていなかったのかな?」


「どういう……ことだ」


 さっきのやり取りでエイフィルの力量はある程度把握できた。

 あの攻撃が本気の攻撃じゃなかったとしても、この街にはAランク冒険者は十数人と居るし、なんだったらSランクだって何人か居たはずだ。

 Sランクなんて賢者まであと一歩のやつとか、賢者に選ばれなかっただけのやつとかが居るんだから、そんな自信満々に勝てると言えるほどのものじゃないだろうに。

 そのレベルのやつが来る可能性があるっていうのになんなんだ、この自信は。


 嫌な予感がする。

 なんか、猛烈になにか可能性を見落としているような、最悪の事態が見えていないような。

 気持ち悪い。何かが胸の中でつっかえている。


「おいおいおい、こりゃどうなってるんだ?」


「建物がめちゃくちゃじゃねぇか」


「こりゃヒデェな」


 こうしている間にもどんどんと新しい冒険者たちは続々と集まってくる。

 その数は十や二十どころじゃない。こんな狭い場所には絶対に入り切らないほどの人数がこの路地の外側にもあふれかえるほどに待機していることだろう。

 王都であるからして、他の街のギルドに所属している冒険者の数よりも、ずっと人数が多い。だから、この王都を敵に回した時、この数十人規模の冒険者たちを相手にすることになる。

 だから、王都はなかなか陥落させることは出来ないんだ。


 それを、あのエイフィルは不敵な笑みを浮かべ、路地の外側に広がった冒険者たちの海を眺め、鼻で笑ってみせた。


「折角だから、改めて自己紹介を……あたしはエイフィル・メイバール。昔は――アイの魔人、そう呼ばれていたわ」


「なっ」


 俺は思わず驚愕の声を漏らしてしまった。

 その次の瞬間、冒険者の海の中に突如として地面から氷の剣山が出現し、多くの冒険者たちを串刺しにしてしまった。


「うああああああああああああ」


「いやあああああああああああ」


「きゅ、きゅうに、がああああああああああああああ」


 仲間が殺されて泣き叫ぶもの、恐怖のあまり足がすくんで動けなくなったところを刺されるもの、何も考える暇すら無く死にゆく者。

 路地の外は阿鼻叫喚の嵐だった。串刺しにされた冒険者たちの血の雨が降り注ぐ。

 一瞬にして地獄絵図を作り上げてしまったエイフィル。そのことには焦っても居るし、一瞬でこれだけの人数の冒険者を殺されてしまった。


 なんで俺は今の今までその可能性に気が付かなったんだろうか。

 そうだよ、本気一歩手前まで力を出している俺とあそこまで渡り合えるやつなんてSランクか賢者、それか魔人くらいなものだろ。

 考えてみれば分かるじゃねぇか。

 魔人なのだとしたら、本当にマズイ。ガルガのやつの時はあんまりあいつが力を理解していない魔人歴が浅いやつだったから良いけど、魔人の力を完全に理解しているようなやつだとしたら、それは賢者くらいじゃないと倒せないことになる。


 今の一撃で多くの冒険者が繊維を喪失した。

 だが、それでも諦めていない冒険者が存在する。その中の三人が路地の中に入り込んでメルバードへ攻撃を仕掛けた。


「らぁっ!」


「仲間の仇!」


「これ以上王都で好き勝手するんじゃねぇ!」


 一人の冒険者が斬りかかるものの、エイフィルはそれを最小限の動きで回避し、そこに別の冒険者の『ファイアボール』が飛んでくる。

 エイフィルはそれをバックステップで回避するが、そこには既に罠が仕掛けられており、エイフィルの足元が光り輝く。


「あたれぇぇぇぇぇぇぇえっ!」


「いいよ? ちょっと一方的すぎると面白くないし、かわいそ――」


 すると足元から針が勢いよく飛び出し、エイフィルの股下から脳天まで貫通。そのまま天高く持ち上げられ、そこで針が消滅。

 串刺しにされたエイフィルはそのまま力なく地面に落ちてくるが、俺たちはエイフィルがあの程度でやられるようなやつではないということを知っているため、警戒は解かない。


「やったか!?」


 そんな台詞を吐きながら『ファイアボール』を撃った冒険者とトラップを仕掛けた冒険者がその姿を表した。

 出てきちゃダメだ。その事実を伝えようとしたが、その前に既にエイフィルが動き出していた。

 エイフィルはよく見なければ通った場所に線が見えるようにしか見えないほどのスピードで冒険者たちに急接近をすると、その三人の耳元に口を近づけて囁き、キスをした。

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