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3-11『一か八かの作戦』

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 宿の一室にユイの叫び声が響き渡った。

 冒険者ギルドを後にした俺たちは会議をするためにユイの宿泊している部屋に集合していた。結構きれいな宿で、二階部分に宿泊エリアがあって、一階部分では飲食スペースが広がっていた。

 いつもみんなは一階部分で朝食を食べてから集まっているらしい。結構美味しいのだとか。


 そんな話は置いておいて、俺たちに指名で入った依頼の会議を堂々とギルドで行うわけにも行かないため、俺たちだけになれる場所という事で、ユイが自分の部屋を提供してくれたというわけだ。

 俺という男を入れるのには抵抗がないのかと思ったけど、特に気にしている様子はなかったからお言葉に甘えることにしたわけだ。


 そして俺はギルドで依頼をされた際に思いついた作戦を発表した所、ユイが叫び散らかしたというわけだ。


「は、ハルト君、正気ですか!?」


「あぁ、大真面目だ。実際これが一番手っ取り早いからな」


「ダメですよ、そんなのは! ハルト君が危険すぎます!」


 俺が提案した作戦、それは囮作戦だ。

 今日、教えてもらった被害者の特徴的に酔っ払っている男が狙われやすいという事で、俺が酒をたらふく飲んで酔っ払って路地裏へ行き、犯人を釣るというもの。

 怪しい人物が俺に近づいてきたら隠れてみていたユイたちが出て交戦する。


 問題は相手の攻撃方法なのだが、そこがかなりリスキーで、もし一切相手に触れることもなく攻撃ができる相手なのだとしたらワンチャン俺が死んでしまう。

 ユイが危惧しているのはそこだ。

 ユイたちも俺が死なないように直ぐに駆けつけてくれるだろうけど、駆けつける前に俺が死んでしまったらユイたちは必要以上に責任を感じてしまう。

 これを提案したのは俺なんだから、責任は全て折れにあると言っても絶対に聞かないだろうしな。


「ハルト、今回は私も賛同できない。自分の命を何だと思っているの?もう少し自分の命を大切にしたらどうなの?」


「だけどさ、今回の事件って正しく雲を掴もうとしているのと同義だぞ。全く犯人の容姿もわからない、能力もわからない。目撃者無し。この状態でどうやって探せって言うんだ? なら、俺が囮になっておびき寄せたほうが早い」


 ほとんどヒントが無い状態なんだ。

 これ以上の被害者は出さないためにも、ここは俺が囮になるのが一番いい。

 それに、俺はそもそも冒険者になった時点で死は覚悟している。常に死がつきまとっているような仕事なんだ。今更死んだからって「ついに死んだか……」くらいで特に何も思わない。

 そもそも俺は勇者パーティーと魔王軍を掛け持ちするというリスキーなことをしているんだ。また一つリスクを抱えたところで何も変わらない。


「そ、そんなことをしなくてもボクが絶対に犯人を見つける魔道具を作ってみせますから!」


「どうやって?」


「え?」


「どうやって見つけ出すんだ? どれくらいの期間がかかる? その間に何人が犠牲になる?」


「それは……」


「悪い……」


 焦っていた。

 そのせいで俺はメルバードが悪いわけじゃないのに無責任に魔道具で見つけると言ったメルバードを詰めてしまった。ちょっと罪悪感だ。

 ユイたちは絶対に認めはしないだろう。だけど、今回ばかりは俺も譲る気はない。


 そもそも、ユイたちは知らないだろうけど、俺はそうそう死なない。

 こんなところで死ぬくらいだったら俺はとっくの昔に十回くらいは死んでる気がする。


「あなたって意外と頑固なのね」


「さっきの醜態を見ただろ? 俺はわがままなんだよ」


「えぇ、見たわ。そして見てられなかったわ。二度とやらないでちょうだい。でも、そうね。ハルトは絶対に死なないって約束できる?」


「え、あぁ、死なない」


 絶対とは言えなかった。

 絶対って約束したら約束を破ってしまった時によりショックを受けさせてしまうだろうから。だから俺は死なないとだけ言ったのだが、そんな俺の考えはルリハには筒抜けだったのだろう。

 ルリハは俺にグイッと顔を近づけて圧のようなものをかけてきた。


 これは俺が絶対って言うまで諦めないパターンのやつだ。

 本当は俺は絶対という言葉は使いたくない。もちろん死なない自信しかないし、成功させるつもりだ。

 だが、もし相手がSランクの相手とかだったら俺に攻撃が効かないとも限らない。弱い相手の攻撃だったら俺には通用しないけど、その効果にもよる。

 でも、気持ち的には絶対に死なないつもりだ。だから、今回は言ってもいいか。


「絶対に死なない」


「うん、分かった。それでいいよ。どうせハルトは諦めないだろうしね〜」


「ちょ、ちょっとルリハちゃん! もっとちゃんとハルト君を説得してよ」


「無駄よ無駄。ハルトの意思は硬いようだし。それに、ハルトが絶対に死なないって言ったんだから、私はそれを信じてみたい。ハルトの言うことも一理あるし。早く解決しないとどんどん犠牲者が増えてしまう」


「でも……」


「だから、私たちで絶対にハルトは守ろう。ハルトは絶対に死なせない。私たちの仲間なんだから」


 ルリハが俺に向かって笑いかけてきた。

 全部理解しているんだ。今回、俺がちゃんと生き残れるかわからないということ。だけど、その上でルリハは俺のことを信じて送り出そうとしてくれているんだ。

 なら、俺はその期待に答える義務がある。


「本当に大丈夫なんですか?」


「あぁ、大丈夫! 大船に乗ったつもりで任せてくれ」


 仲間か……。

 賢者の奴らとは何度か組んで戦ったことがあるけど、あいつらは全員個として完成しているから、仲間っていう感じじゃなかったんだよな。

 それぞれがそれぞれで戦っているっていう感じ。


 だけど、今はすごく仲間というものを感じている。ルリハが俺を信じてくれて、そしてユイがなんとしてでも俺を守ろうとしてくれている。

 メルバードも俺の身を案じてくれている。

 これが仲間ということなのか。

 まだ繋がりとしては浅いけど、でも仲間というものを感じれて嬉しい。初めての感覚だ。


 俺もみんなの期待に答えたい。

 だから、絶対に死ぬわけにはいかなくなったな。


「それじゃ、作戦は今日の夜決行という事で」


「絶対に守りますからね!」


「ハルトは死なせない」


「ボクも、流石にハルトが死ぬのは淋しいですから!」


 仲間たちの温かいエールを聞き、より一層決意を固めるのだった。

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