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2-17『お前も頭勇者パーティーだったか……』

 どうもあほ面で気を失ってしまったマナを咄嗟に支えることとなったカルマ・エルドライトです。


 え、本当にどうしよう。

 あ、でもマナが気を失ったおかげで変な門が消滅した。腕も消えたからこれでユイたちは大丈夫だろう。

 このままここに放置する訳にもいかないよなと考え、周囲を見るとヴァルモダが近くに居た。

 奴に預けるのは少々不安が残るが、仕方がないだろう。


「なぁ、そこの魔族」


「お前が、カルマ・エルドライトっ。魔王様に何をした! 魔王様を殺そうと言うなら容赦は――」


「こいつ預かっててくれ」


「は? ……なんのつもりだ」


 マナをヴァルモダに投げ渡した。

 まさか素直に俺がマナを渡すとは思っていなかったのか困惑していた様子。


 あ、勿論あほ面にはなっていなかった。どうやらあほ面になるのはマナだけで魔族全員があほ面になるわけじゃないようだ。

 ちなみに戦いながらでもヴァルモダがマナに変なことをしないか監視するくらいは出来るから大丈夫だ。


「カルマ・エルドライトォォォォッ!」


「おうおう、そんなに叫ばなくても聞こえてるっての」


 やっぱりこれの元凶はガルガだったか。

 そして、魔人にまでなった哀れなやつ。馬鹿もいいところだ。

 それにしてもこいつ、俺が姿を現した瞬間、殺気が強くなったぞ。なに? なんか俺に恨みでもあるんすか?


「カルマ・エルドライト、貴様のことを忘れた日は一日たりとも無い」


 あ、本当に恨みがありそう。

 え〜そんな恨みを買うようなことをした記憶は――意外とあったかもしれない。


「カルマ、貴様は俺の事を覚えていないかもしれないが、俺は忘れていない。常に俺の前を歩き続け、俺が得るはずだった栄光を根こそぎ掻っ攫っていったお前のことはな!!」


「……はいぃ?」


 なんかよく分からなくなってきた。話についていけないんだけど。


「俺とお前は同時期に冒険者となった。俺は才能に恵まれていたし、将来の賢者候補とまで言われていたほどだ! だが、蓋を開けてみたらどうだ。どいつもこいつも俺と貴様を比較し、俺は劣化版カルマとまで言われる始末! そんな状況で俺に正当な評価など下す奴が居るわけが無い! カルマよりも弱いやつという先入観が俺に付きまとうんだ!」


「は、はぁ……そりゃ〜すまん」


 いや、今俺は何を謝ったんだろう。

 今のって、お前が生きているのが悪いって言われているようなもんだよな?


「だから俺は貴様を倒す為だけに修行した。だが、貴様はこともあろうに姿を消した! 俺との戦いから逃げたんだ!」


 いや、お前と戦っていた事なんて一度もねぇよ。お前の思い違いだ。


「世間では死んだとまで噂されていた。しかし、貴様が魔物程度にやられるようなやつでは無いと俺は知っていた! だから俺は世界を破滅に追い込むことにした」


 いや、本当にどうしてそうなる!? こいつ、八つ当たりにも程がありすぎるだろ。


「世界を破滅に追い込めば、殺されそうな人々を見逃せないお前は必ず出てくるとわかっていた!」


 いや、本当になんで? なんでそんな考えに至るんだ。

 そもそも俺は誰彼構わず助けるようなお人好しじゃないし、たまたま俺がユイとマナを守りたい且つ、今この場に居たからこうして出てきただけで、見ず知らずの一般人なら出てくる理由は無いから動かねぇぞ?

 今の話を全て聞いて話を纏めると『世間が正しく評価されないのは俺のせいだからお前は消えろ、さもなくば世界を滅ぼすぞ』って事?


 えぇぇぇ〜。

 いや、マジで引いた。

 つまるところ、これってとんでもない八つ当たりじゃん。自分が評価されないことを俺のせいにしているだけだよな。


 なんという理不尽。


「お前、そんな考え方だからいつまで経ってもSランク止まりなんだよ」


「うるせぇ! とりあえずお前は俺に敗北しなければならないんだ!」


 めちゃくちゃだ。

 こんな奴に世界が滅ぼされかけているとか笑えねぇぞ。


 とりあえずまずボコしてからこいつをどうするか考えるか。

 ガルガが構えたのを見て俺も構える。魔人となったなら油断したら危ないかもしれないからな。

 何せあいつの攻撃は俺に有効打を与える。

 いいねぇ、このピリつく感じ。これが俺の求めていた戦いというものだ。


 そして俺とガルガは一歩踏み出し、戦闘を開始しようとしたその時だった。


「ファンです! サインください!」


 突如目の前に色紙が飛び出してきたことによって俺の足は止められてしまい、ガルガもガルガで困惑して足を止めていた。

 なんだなんだと見てみると、そのサイン色紙を持っていたのはルリハだった。ルリハ(・・・)だった!!

 大事な事だから二回言ったが、こいついったいどういうつもりだ?

 あとその色紙、どっから取りだした。そんなものさっきまで持ってなかった気がするんだけど。


「ファンです! サインください!」


「いや、二回言わなくても聞こえてるぞ。……どうして今?」


「サインが欲しかったからです!」


 今見てて俺とガルガの戦いが始まるってわかってたじゃん。空気読んでくれよ……。

 っていうか、こいつ俺のファンだったのかよ。しかも、このタイミングで来るって頭おかしいぞ。

 常識人だと思っていたのに結局こいつもヤベェやつだったか。そろそろ頭勇者パーティーっていう侮辱が生まれてしまいそうだ。

 まぁ、それはそれとして――


「ほら、貸してくれ。書くから」


「やったー!! ありがとうございます! 家宝にします!」


「いや、あなたもあなたで書くんですか……」


 俺がサインを書いてあげるとユイから小さくツッコミが聞こえてきた。

 仕方がないだろ? 思い立ったが吉日、俺も気持ちが分かるんだから。


「えっと、もういいのか?」


「あ、本当にすまん。気を使わせた」


「いや」


 なんか興が削がれ、気まずい雰囲気が流れてしまう。

 ガルガもなんか空気を読んでくれていたみたいだ。なんか、本当にすまない。

 でも、とりあえずお遊びはここまでだ。

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